正義のヒーローに関係? 札幌の「アンパン道路」、地元で「論争」も

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平岸小学校(左)前から月寒に向かって延びるアンパン道路(右端の路地)=札幌市豊平区で2025年5月20日、宮間俊樹撮影写真一覧 札幌中心部から大和ハウスプレミストドームに向かって国道36号を車で走っていると、地下鉄東豊線の月寒中央駅前(札幌市豊平区)で赤信号につかまった。ふと右手の小さな通りの入り口を見ると、「アンパン道路」の標識に目が留まる。カーナビ代わりのスマホアプリの地図にも同様の表示があった。 やなせたかしさんが描いた正義のヒーロー「アンパンマン」に関係があるのだろうか。それともアンパンの店がたくさん建ち並んでいるのだろうか。あれこれ頭に浮かぶ。Advertisement月寒でアンパン道路建設当時から残る唯一のアンパン製造業者「ほんま」が復刻した「月寒あんぱん」。建設に従事した兵隊にアンパンを配ったことが道路名の由来となっている=札幌市豊平区で2025年5月20日、宮間俊樹撮影写真一覧 気になったので、後で豊平区のホームページで確認すると、1911(明治44)年完成の歴史ある道路らしい。月寒中央駅前から地下鉄南北線南平岸駅前を抜けて平岸小学校までの約2・6キロの道路をつないでいる。 後日、同小学校前から歩いてみた。隣接する南平岸まちづくりセンター前にあった説明板に、由来が載っていた。月寒に移転した豊平町役場へ平岸から直接行くために造られた道路で、工事の際に「従事した兵士の労をねぎらうため毎日5つのアンパンが配られた」とある。当時、月寒にあった陸軍第7師団歩兵第25連隊の応援を受けての軍民一体の工事だった。 由来は分かった。しかし、肝心の道路がどこから始まるのか分からない。同センターで聞くと、対応してくれた事務局の女性が「どっちが起点なのか平岸と月寒の人たちの間で昔から論争があるんです」と教えてくれた。 全国津々浦々繰り広げられているご当地論争。「アンパン道路」を巡る論争もあるとは。平岸と月寒はライバル関係なのだろうか。道路名も相まってアンパンマンと宿敵・ばいきんまんの関係が頭をよぎる。 「アンパン道路」は、目の前を通る「平岸通」をはさんで反対側の小さな路地がそれらしい。歩き始めると、すぐに交通量の多い白石藻岩通に出た。南平岸駅前の高架をくぐり、広々とした羊ケ丘通を渡る。この辺りの地形は起伏が多い。かつて平岸は日本随一のリンゴの産地だったらしく、こうした斜面にはリンゴ畑が広がっていたのだろう。今は閑静な住宅街が広がる。 所々に設置された「アンパン道路」の案内表示に沿って坂を登りきると平たん直線道に。道路沿いの月寒児童会館前には「豊平町役場跡」とあった。平岸の住民がこの場所に来るために起伏の多い原野を切り開いて4カ月で完成させたのが「アンパン道路」だ。 突き当たりには国道36号に面した月寒中央駅付近の建物が見える。同駅近くには、1906(明治39)年創業で、道路建設以前から月寒でアンパンを製造販売してきた「ほんま」が経営する「月寒あんぱん本舗」がある。道路建設当時に配ったアンパンを復刻した「月寒あんぱん」を買った。うすめの皮にぎっしり餡(あん)が詰まったアンパンを食べると疲れも癒やされた。「元気100倍」の気分だ。【宮間俊樹】