朝日新聞連載子どもへの性暴力記事編集委員・大久保真紀2025年6月11日 12時00分 「子どもへの性暴力」第11部は、性教育について考えます。 私たちは、性暴力が被害者のトラウマとなり、その後の人生に大きな影響を与えることを、この5年半さまざまな角度から考えてきました。 幼いときに性暴力を受けた被害者はほぼ「自分に何が起こっているのかわからなかった」と語っています。その後に自分の身に起こったことの意味がわかると、自分を「被害者」ではなく、悪いことをした「共犯者」だとさえとらえる人も少なくありません。 被害を被害と認識できなければ、被害を訴えることができず、繰り返し被害を受けてしまうことにもなりかねません。そして、ケアを受けることができず、人生の困難を抱えていくことにつながります。被害をなくすためには教育が必要であることを、私たちは連載当初から感じてきました。 日本ではこれまで「性教育をすると、子どもたちによる性交が増える」といった声も根強くあり、性教育を性に関する知識やスキルだけを教えるものとして嫌悪する意見も一部にあります。また、性に関することになると、どうしても忌避感をもってしまう大人も少なくありません。 しかし、現在、インターネットなどには正しくない、不適切な情報があふれ、子どもたちは日々その情報に触れています。子どもたちへの早い段階からの教育は不可避です。 2023年度からは、被害者にも加害者にもならないためにという視点で、「生命(いのち)の安全教育」が全国の学校で実施されるようになりました。 ただ、世界に目を転ずると、人間関係や多様性、価値観、幸福、ジェンダー平等など幅広いテーマで人権を育む「包括的性教育」が推奨されています。性教育は、子どもたちが人生を幸せに送るための人権教育につながります。 私たち大人も十分な教育は受けてこなかったと言えるでしょう。子どもたちと一緒に学んでいくことが必要です。 今回の連載では、教育現場に残る忌避感の背景、各地の自治体の取り組み、就学前の子どもたちへの教育、家庭での教育、学校現場で奮闘する養護教諭たち、私立高校での取り組み、ユースクリニック、障害のある子どもたちへの教育、加害をしてしまった子どもたち、LGBTQ教育、子どもたちはどのように受け止めているのか、などさまざまなテーマでお伝えしていきます。識者のインタビューなども含めて関連配信は全16回の予定です。 子どもたちが幸せになるために、加害も被害もなくすために、性教育について、みなさんと考えたいと思います。 ◇ 2019年12月から新聞とデジタルで展開している「子どもへの性暴力」シリーズの第1部から10部までを収め、その後の法律や制度の変化なども加筆した書籍『ルポ 子どもへの性暴力』(朝日新聞出版)が発売中です。104人の当事者の声が収められています。480ページ、税込み2200円。お買い求めは書店や朝日新聞出版のサイトで。発売中の「ルポ 子どもへの性暴力」この記事を書いた人大久保真紀編集委員専門・関心分野子ども虐待、性暴力、戦争と平和など関連ニュースこんな特集も教育情報(PR)注目ニュースが1分でわかるニュースの要点へ6月11日 (水)自公 物価高対策の給付で合意梅雨の夜「蒸発現象」に注意備蓄米、20万トン追加放出へ6月10日 (火)移民摘発抗議に州兵を派遣元横綱白鵬が退職会見「仮装身分捜査」で初摘発6月9日 (月)ドーピング容認大会に賛否減り続ける町の銭湯沖縄「最早」タイの梅雨明け6月8日 (日)新米価格 高止まりの可能性も一般人のカニ大量捕獲 問題に原子核はアーモンド形 新理論トップニューストップページへ拡散する選挙動画、「年収2倍」の配信者も 戸惑い拭えぬ現職陣営7:00森友文書、開示始まる 元職員遺族のもとに9千ページ 改ざん経緯は11:11ロスの一部に夜間外出禁止令 抗議デモにトランプ氏「外国の敵」10:46馬券購入の2人、2.6億円脱税容疑 香港の指示役は数十億円を得た11:35専務だった父の労災、残業100時間超でも一蹴 壁を越えた娘の闘い5:00旧優生保護法の被害者がNYで証言 聴衆から拍手「心動かされた」12:00