親族に信託された野村悟被告の自宅。高い塀で囲まれ、複数の防犯カメラがある=北九州市小倉北区で2025年5月29日午後4時10分 特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)のトップ、野村悟被告が自分の持っていた土地を家族に信託していたことが分かりました。信託制度を使うと、その土地は差し押さえの対象にならず、被害者への賠償金の支払いを逃れることができる可能性があるそうです。警察は、同じようなことが広がらないように、国に法律の改正を求めています。1分で読めて役に立つ「サクッとニュース」、今回は「暴力団トップの土地信託問題」を解説します。 Q 工藤会って聞いたよ。どんな団体なんだっけ。 A 工藤会は、北九州市に本部がある暴力団です。市民や企業を襲撃したことがあり、全国で唯一「特定危険指定暴力団」に指定されています。Advertisement Q 野村悟告ってどんな人なの? A 野村被告は工藤会のトップで「総裁」と呼ばれています。今は、4つの事件で殺人罪などに問われて裁判中です。 Q 信託って何かな。 A 信託は、自分の財産を信頼できる人に管理してもらう制度です。たとえば、老後のために家族に土地やお金を預けて管理してもらうことができます。 Q どうして信託にすると差し押さえできないの? A そうです。信託法という法律で、信託された財産は「強制競売」や「仮差し押さえ」ができないと決まっています。だから、信託した土地は簡単に取り上げられません。「北九州市民の台所」として親しまれる「旦過市場」付近で野村悟被告が経営していたコインパーキングの土地も親族に信託された=北九州市小倉北区で2025年5月29日午前11時51分 Q 被害者は賠償金をもらえないの? A 心配になりますよね。もし野村被告に他に売れる財産がなければ、信託した土地からは賠償金を回収できなくなります。そのため、被害者が泣き寝入りする可能性もあるとされています。 Q 警察はどう思っているの? A 警察は「賠償金の支払いを逃れるために信託を使っている」と批判しています。そして、同じようなことが他でも起きないように、法律を変えてほしいと国に要望しています。 Q 野村被告の家族はどう言っているの? A 家族の代理人弁護士は「新しい訴訟が予想されていたわけではなく、家族に財産を託す正当な理由があった」と話しています。賠償逃れのためではないと否定しています。 Q 今後どうなるのかな。 A 今後、国が信託法などを改正するかどうかが注目されています。また、野村被告の裁判や、被害者への賠償金の支払いがどうなるかも、引き続き見守る必要があります。