社会から過去と未来が消える 少子高齢化が奪う想像力 東畑開人さん

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有料記事2025年6月18日 15時00分藤田直哉さんのコメント臨床心理士の東畑開人さん東畑開人さんの「社会季評」 2024年、日本の出生数は68万人あまりで過去最少、合計特殊出生率は1.15で過去最低、高齢化率は29.3%(9月15日現在)で過去最高。少子高齢化の進行を示す硬い数字たちが、ときどきスマホに飛び込んでくる。そういうとき、「これから社会はどうなってしまうのだろう」と一瞬不安になる。だけど、何をどこから考えればいいのかわからないので、目の前の生活に没頭することにして、結局忘れてしまうのがいつもの繰り返しだった。 しかし、「縮む韓国 苦悩のゆくえ」(朝日新書)という本を読み、戦慄(せんりつ)した。出生率が0.72(23年)と、日本を超える速度で超少子高齢化が進む韓国社会で、世代間の分断が急速に強まっている現実が描かれていたからだ。 たとえば、子どもお断りの「ノーキッズゾーン」を掲げるカフェができ、子育て中の女性に対して「マム虫」と悪口が言われる。同じように、「ノーシニアゾーン」のお店があり、高齢者が「年金虫」と呼ばれる。子ども(子育て世代)や高齢者という周囲のケアが必要な存在に対する排除が目に見えるほどになっているというのだ。 その背景には若者たちの「剝奪(はくだつ)感」があると本書は指摘する。大卒者の就職率は69.6%(22年度)という硬い数字で、日本の98.0%(24年度)に比べてきわめて厳しい。人生を支えるような雇用から多くの若者が排除されている中で、弱者に対する排除が生み出されているということだ。 もちろん、韓国社会全体がそのような排除の悪循環に覆われているわけではないにせよ、ここにある憎しみのメカニズムは普遍的だ。排除されるならば、排除したくなる。憎まれていると感じるとき、憎まざるをえなくなる。人口が減る。縮む社会は多くの人からなにがしかを奪うから、人々は他の誰かのものを奪いたくなる。憎しみがあふれる。これに戦慄したのだ。                   * 世代間の分断。そのとき、真に失われているのは時間をめぐる想像力だ。というのも、若者にとって子どもや高齢者は同時代人でもあるけれど、同時に過去と未来からやってきた人たちでもあるからだ(逆もまた真なり)。つまり、高齢者は過去を作った他者であり、子どもは未来をつくる他者だ。そして、それは若者自身の過去や未来の姿でもある。想像できる時間が縮むとき、人々には「現在」しか存在しなくなる。すると、現時点での弱者との重なりや連続性が見えなくなってしまう。 唐突ではあるのだが、思い出…こんな特集も注目ニュースが1分でわかるニュースの要点へ6月18日 (水)日米関税交渉「合意至らず」フリーランス法違反で初勧告大谷翔平が二刀流復帰6月17日 (火)国民民主、野党首位明け渡す2万円給付案の根拠を説明コメ不足でも大量に廃棄6月16日 (月)米首都で異例の軍事パレードイラン国防軍需省にも攻撃地域の文化か ルール違反か6月15日 (日)日鉄のUSスチール買収を承認イラン攻撃 軍とモサド連携か「OTC類似薬」保険適用外に?トップニューストップページへ斎藤知事へ「県民のために間違い認めて」 第三者委委員長の重い決断13:0080代の認知症の入所者2人に性的暴行か 介護職員逮捕、容疑を否認15:00東北新幹線トラブル、新型「E8系」で同日に不具合4件 JR東日本15:00予算30億円「東京宝島」の効果は 評価と疑問視「測定これから」12:00社会から過去と未来が消える 少子高齢化が奪う想像力 東畑開人さん15:00「お互いさま」で給与増 育休中の職員の業務担うと評価、市が新制度11:11