有料記事米田怜央 赤田康和2025年6月30日 9時00分 その椀(わん)は奥深い輝きを放ち、肌に亀裂のような線状の模様が走る。塗り重ねられた黒と銀パールの漆に隠れた和紙のしわが生み出した表情だ。 手がけたのは輪島塗の塗師、小路貴穂(しょうじたかほ)さん(54)。「絶望としか言いようのない風景。それを表現した」傷ついた輪島塗の器を修復する小路貴穂さん=2025年6月11日、石川県輪島市、米田怜央撮影 昨年1月、能登半島を最大震度7の地震が襲った。石川県輪島市にあった自宅は傾き、中で立っていられないほど。周囲の道路は裂け、地中がのぞいていた。 避難所には多い時で約600人が身を寄せ、食料は足りず、感染症も流行した。体調を崩す人が相次ぎ、「地獄絵図」の状態。ほかの住民と運営を担ったが、心身は限界まで追い詰められた。 地震から2カ月後、避難所から工房に通い、少しずつ仕事を再開した。ある日、工房の代表、桐本泰一さん(63)から、こんな相談を持ちかけられた。 被災した元漆器店が、製作途中の漆器を処分する。譲り受けて活用できるか、一緒に見てもらえないか――。輪島塗工房の代表を務める桐本泰一さん=2025年6月11日、石川県輪島市、米田怜央撮影 現場を訪ねると、大量の漆器が残されていた。下地塗りまで終わっており、職人たちの丁寧な仕事ぶりが伝わってくる。すべて運び出すのに、軽トラックで3往復した。 どんなデザインにするか、桐本さんと意見を交わした。ただ、工房も被災し、できる作業は限られている。小路さんには「こんな状況で何を作れと言うんや」という気持ちもあった。絶望の中の希望、器に施した工夫は 半ば開き直って考えたのが…【はじめるなら今】記事読み放題のスタンダードコース1カ月間無料+さらに5カ月間月額200円!詳しくはこちらこの記事を書いた人赤田康和大阪社会部|災害担当専門・関心分野著作権法などの表現規制法制とコンテンツ流通、表現の自由能登半島地震2024年1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。地震をめぐる最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る]こんな特集も注目ニュースが1分でわかるニュースの要点へ6月30日 (月)最後のH2Aロケット、成功イランと交戦中もガザへ攻撃万博の来場者、過去最多に6月29日 (日)教育の場で相次ぐ性暴力混沌とする米関税交渉の行方EU、ウナギの取引規制を提案6月28日 (土)座間9人殺害 死刑執行生活保護引き下げ「違法」和歌山のパンダ4頭、中国返還6月27日 (金)定期預金金利の競争激化メタの著作権侵害認めず触ると危険な植物 大学で自生トップニューストップページへくら寿司社長、値上げをどう考えるか 「外食は旅行の代わりの面も」6:00ハーレーダビッドソン日本、自腹強要で課徴金2億円を命令へ 公取委2:00イヌもSFTS、茨城でネコに続き2例目 40℃超の熱に白血球減少6:30深刻な女性のやせすぎ、肥満学会が対策本腰「新たな疾患概念に」7:00姉の大好きな服を目の前で燃やした父 夫婦で向き合った戦争トラウマ9:00刑務所出ても巨額の賠償請求 終わらない「迫害」、心折れ街を離れた8:00