母屋の屋根から滑り落ちてきた雪の重みで潰れた物置=青森市内で2025年1月(青森市の男性会社員提供)写真一覧 北海道や本州の日本海側を中心に記録的な大雪が続き、除排雪が追いつかない地域では市民生活に大きな混乱が生じている。 専門家によると、こうした「ドカ雪」は今後も当たり前のように発生し、場合によっては首都圏にも被害をもたらす可能性がある。原因として地球温暖化が考えられるという。Advertisement雪下ろし業者の予約がいっぱいに 「うわ、なんだこれは。倉庫がひしゃげている」 青森市の30代男性会社員は1月6日夜、帰宅した際に自宅の物置が雪の重みで押し潰されているのを目の当たりにして衝撃を受けた。 仕事の関係で引っ越してきてから初めて迎える本格的な冬で、男性会社員は屋根の雪下ろしの経験がなかった。そこで、昨年12月から雪下ろしの業者を探していたが、どこも予約で埋まり、「1月にならないと引き受けられない」と言われて諦めていたという。 そうこうしているうちに雪がどんどん降り積もり、母屋の屋根から滑り落ちた雪が物置の上にのしかかって潰れてしまった。 これ以上放置することはできず、10カ所以上の業者を当たってようやく1月中旬に雪下ろしに来てもらった。 それからは自分でも雪下ろしをしているが、庭には雪がうずたかく積まれ、今度は捨て場所に困っている。「大雪が続くという予報を聞くと不安になる。地元の人もここまでの雪は初めてだと驚いていました」 地元のある雪下ろし業者のもとには、自分で作業できない高齢者だけでなく、遠方にいる空き家の所有者らからも年末年始はひっきりなしに依頼があったという。この業者は「東京にいて青森の様子が分からず、空き家の近隣住民や行政から危ないと知らされて仕事を依頼してくる人もいました」と振り返る。 青森県によると、県内では2月21日現在、大雪関連で9人の死者を出している。うち6人が屋根の雪下ろしによって亡くなったという。また、住家の被害も107件に上っている。除雪車255台フル稼働でも間に合わず雪に埋もれたバス停=青森市で2025年1月4日、足立旬子撮影写真一覧 大雪の影響は民家だけでなく、道路にも及ぶ。 気象庁によると、青森市では昨年12月29日に平年の3倍となる1メートルを超える積雪を観測し、その後も断続的に雪が降り続いた。年末年始は一部の生活道路の除雪が間に合わず、市によると、除雪に関する苦情や相談は2月19日までに1万7443件に上った。 男性会社員の軽乗用車もタイヤが雪にはまって動けなくなる「スタック」を繰り返し、最終的に廃車となった。 妊娠中の妻が産院に通う手段がなくなり、バスも雪の影響で遅れたり経路変更したりして振り回されている。 男性会社員は「ひどいときはバス停そのものが埋まっていました」と苦笑する。 深刻なのは、他の地域も同じだ。 2月7日に観測史上最深となる121センチの積雪を記録した福島県会津若松市では、道路脇の排雪が追いつかず、市街地を走るバスの一部に運休が続いた。 北海道帯広市も大雪となった2月4日は、午前0時から除雪車255台をフル稼働させたものの、12時間降雪量が国内観測史上最大の120センチとなり、作業が追いつかなかった。ゲリラ豪雨と同じように深刻 「こうした大雪は今冬だけの現象ではなく、今後は風向きによって首都圏などでも発生する可能性があります」 気象学が専門の立花義裕・三重大大学院教授はそう語り、来季以降も日本各地で大雪が降る可能性が高いと警鐘を鳴らす。 背景には、地球温暖化があるとみられる。 まず、温暖化の影響で海面水温が上昇し、冬でも海からの水蒸気が大量に発生するようになった。さらに、かつては北極にとどまっていた寒気が分裂して日本付近まで南下するようになり、この寒気が海からの水蒸気を冷やして雪雲を発達させていると、立花教授は分析する。人も歩けないほどの雪が積もった2月4日の北海道帯広市内=「かず@北海道移住」のX投稿より写真一覧 「今冬は数回の大雪がありましたが、全てこのパターンです。寒気が日本付近に来なければ全く降らない一方で、来たら短時間にドカッと降る。太平洋側に近い帯広市に激しい降雪があったように、低気圧の動きなどで風向きが変われば、東京でも大雪は十分起こり得ます」 そのうえで立花教授は「雪国にいないと危機感は薄れがちですが、ゲリラ豪雨と同じように深刻な問題です。除排雪が追いつかない量の降雪は今後も予想されるので、一般の人も公的機関もそのことを認識しておいたほうがいいでしょう」と注意を呼び掛ける。【平塚雄太】