黒田早織2025年6月6日 11時04分(2025年6月6日 12時15分更新)不当判決の紙を掲げる横で、判決に対して話す原告側弁護団の河合弘之弁護士(中央)=2025年6月6日午前11時43分、東京都千代田区の東京高裁前、小林正明撮影 2011年の東京電力福島第一原発事故をめぐり、東電の株主42人が旧経営陣らに対し、「津波対策を怠り会社に損害を与えた」として23兆円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が6日、東京高裁であった。木納敏和裁判長は、旧経営陣に13兆3210億円の賠償を命じた一審判決を取り消し、株主側の請求を棄却する判決を言い渡した。 22年の一審・東京地裁判決は、旧経営陣は巨大津波を予見でき、対策を指示すれば事故は防げた可能性があったと判断していた。しかし高裁は、巨大津波の襲来に「切迫感や現実感はなかった」として、そもそも津波を予見できなかったと判断。一転して旧経営陣の賠償責任を認めなかった。 提訴された旧経営陣は5人で、勝俣恒久元会長(24年に死去)、清水正孝元社長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長、小森明生元常務。死去した勝俣氏の訴訟は相続人が承継した。 訴訟の大きな争点は、旧経営陣が巨大津波の発生を予見できたか(予見可能性)と、津波対策を指示していれば事故を回避できたか(結果回避可能性)だった。 国は02年、福島県沖でも大津波を伴う巨大地震が起きる可能性があるとの地震予測「長期評価」を公表していた。一審判決は、この長期評価は「日本のトップレベルの研究者によって作られたものだ」などとして、科学的な信頼性があったと指摘。長期評価の見解を踏まえれば、旧経営陣は巨大津波を予見できたと認定した。 その上で、原子炉建屋などの浸水対策として水密化の工事を指示すれば事故を防げた可能性があったと判断。実際に発生した廃炉や除染費用、避難者への賠償額などから「旧経営陣が東電に13兆円超の損害を与えた」と算定し、賠償を命じていた。 控訴審で、旧経営陣側は一審に続いて「長期評価には地震学者らの批判があるなど、信頼性は乏しかった」などと主張。株主側は、賠償命令の維持を求めていた。 判決言い渡し後、原告団の木村結・事務局長は東京高裁前で「不当判決」と書かれた紙を掲げ、厳しい表情をみせた。「信じられないし、許せない。すばらしい判決を福島の方々に届けることができなかった」と声を詰まらせた。弁護団の河合弘之弁護士は「非常に不当で論理的に矛盾した判決。原発事故の再発を許すもので、最高裁でこの判決の欠陥を追及する」と語った。この記事を書いた人黒田早織東京社会部|裁判担当専門・関心分野司法、在日外国人、ジェンダー、精神医療・ケアこんな特集も注目ニュースが1分でわかるニュースの要点へ6月6日 (金)郵便トラック許可取り消しへ死者の8割「生活圏内」で発見任天堂がSwitch2発売6月5日 (木)李在明氏、韓国大統領に就任出生数、初めて70万人割れ朝食抜くとおなかぽっこり?6月4日 (水)長嶋茂雄さん死去 89歳ロシア、事実上の降伏を要求台風1号、まだ発生なし6月3日 (火)内閣不信任案なら解散検討元横綱白鵬が退職届閉山した金鉱山 外資が狙うトップニューストップページへトランプ氏とマスク氏、急速に決裂 「失望」「恩知らず」と応酬激化12:30東電旧経営陣の責任、高裁は認めず 原発事故「13兆円賠償」ゼロに12:15斎藤知事「自らの身処す」給与カット条例案を提出、議会から批判の声10:35iPhoneへのマイナカード搭載、6月24日から アプリに追加で11:13Switch2発売日、転売ヤーを直撃すると…「利益は出ていない」11:00プールがまるで「お風呂」に? 猛暑の夏に水温上昇、早まる水泳授業10:00