映画の推し事毎日新聞 2025/6/1 22:00(最終更新 6/1 22:00) 2464文字ポストみんなのポストを見るシェアブックマーク保存メールリンク印刷「父と僕の終わらない歌」Ⓒ2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会原田真人監督のハンバーガー 原田真人監督公認で、彼の監督論を書いている。正確には監督論というより、その人生全般に及ぶ、伝記に近い。 「父と僕の終わらない歌」(小泉徳宏監督)を見て、その取材の中で最も印象的で共感を覚えたエピソードが思い浮かんだ。ロンドンを経てロサンゼルスに到着した若き原田監督が、真の意味でカリフォルニアという土地を感じた瞬間。Advertisement マリブビーチを散歩していた彼は、あるバーガー店の屋外テーブルに座った。そこで絵のように美しい風景を眺めながら食べたバーガーと冷たいコーラ。初めて食べたわけでもなかったが、以前とは違う味。 普段も相当なロマンチストだが、その時はヘミングウェイの小説「老人と海」のサンティアゴが、ジョー・ディマジオの試合の話をした場面のような郷愁にあふれた表情で、1970年のある日の午後の一時を、遠くから聞こえてきた波音と海の香りまで思い出そうとしていた。「父と僕の終わらない歌」Ⓒ2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会オリジナルを超えるアレンジ力 その瞬間、筆者も自分の人生一のバーガーを思い出した。意外かもしれないが、神奈川県横須賀市本町の店だった。在日米軍として派遣され、15年ぶりに再会したアメリカ人の親友と一緒に。 東部と西部、中西部と南部まで合わせて10年以上、アメリカのかなり多くの地方を経験した筆者であるが、あれほどおいしいハンバーガーは食べたことがなかった。68年に開業したあの老舗店に同行した親友さえ、いまだに筆者と同じことを言っている。 19世紀から急激に欧米文化を幅広く受け入れ始めた日本には、「まね」から生まれた「サムシング」を、究極的には「オリジナル」さえ超えた「サムシングモア」にしてしまう「アレンジ力」がある(カレーのような食べ物やジャズ喫茶のように外から入ってきて日本文化と融合し、生まれ変わったものを思い出してみよう)。 愉快な気分で古いターンテーブルに大事にしていたレコードを乗せるように始まる「父と僕の終わらない歌」は英国の実話が原案となっているが、オールドポップスとクラシックカー、50年代のアメリカの風景をふと連想させる横須賀の町並みなどがうまく混ざり合い、極めつきの「アレンジ力」を見せる。「父と僕の終わらない歌」Ⓒ2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会「さまよう刃」に見た底力 観客を導入部から映画に集中させる「プラスアルファ」の要素が、寺尾聰の16年ぶりの主演作ということ。清明なボイス、黒澤明と山田洋次という日本映画の神話的な監督と仕事をした彼の経歴は「華やか」そのもの。 筆者が彼の底力を肌感覚で確認したのは、韓国映画産業化の起点となる1999年以降に公開された、日本映画の韓国版リメーク10本のうちの1本「さまよう刃」での、娘を亡くした父の激烈な怒りを表現する彼の姿を通じてだった。 韓国版の主人公に、高校時代に全国青少年演劇祭で最優秀演技賞を受賞し、大学でも演技を専攻した実力派の鄭在詠(チョン・ジェヨン)がキャスティングされたにもかかわらず、「原作の、過剰な感情表出のない演技に比べて散漫だった」と評されるのを見て(「オーマイニュース」、2014年3月29日)、筆者は「大俳優・寺尾聰」のアジア映画でのポジションを改めて実感した。「父と僕の終わらない歌」Ⓒ2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会松坂桃李との相乗効果 「父と僕の終わらない歌」の寺尾聰は、その演技力で時には別の人格を持った人のように見える認知症患者を演じるほか、芸能界に入ったきっかけでもあった音楽的才能を遺憾なく発揮し、「そして今は(What Now My Love)」から「ザッツ・ライフ(That's Life)」まで珠玉のレパートリーを歌う。 さらに注目すべきは、世界の名曲が流れ、物語の内容と直結するミュージックビデオスタイルのシークエンスが、SNS中継のフォーマットを借用していること。「オールディーズ バット グッディーズ」を21世紀のサブカルチャーと調和させた、新鮮な試みといえる。 その素晴らしい成果として、主人公の父子の一生の思い出になるドライブに参加しているような映画体験が提供される。さらに、小泉堯史監督の「雪の花 ともに在りて」で俳優としていちだんと成長した松坂桃李の演技力が加わり、「幻のケミストリー」を見せていることも見逃せない。「父と僕の終わらない歌」Ⓒ2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会「スマイル」に込めた楽観主義 「父と僕の終わらない歌」は、超高齢化がグローバルイシューとなった時代に国境を越えた観客にアピールできるという点では、香港国際映画祭やモスクワ国際映画祭などで注目を集めた中野量太監督の「長いお別れ」と軌を一にする作品といえるが、劇中に流れる世界中の人々に愛された名曲「スマイル」の楽観主義的情緒が込められていることで、より大きな響きを残すことを指摘しておきたい。「スマイル、サン。ジャストスマイル」というラストシーンのセリフに声を出して泣き、感情の浄化を経験できるかもしれない。 映画を見た後、海辺の散歩ができる劇場のチケットを予約すればさらによさそうな、5月の新作である。韓国でリメークの日本映画10本 ちなみに先述した、韓国映画にリメーク、あるいは同じ原作から韓国で再映画化された日本映画10本は次の通り。前が日本語版、後が韓国版の、作品名と製作年である。 「フライ、ダディ、フライ」(05年)=「フライ・ダディ」(06年)▽「遊びの時間は終らない」(91年)=「正しく生きよう」(07年)▽「シャ乱Qの演歌の花道」(97年)=「覆面ダルホ 演歌の花道」(07年)▽「容疑者Xの献身」(08年)=「容疑者X 天才数学者のアリバイ」(12年)▽「さまよう刃」(09年)=同名リメーク(13年)▽「鍵泥棒のメソッド」(12年)=「LUCK-KEY ラッキー」(15年)▽「いま、会いにゆきます」(04年)=「Be With You いま、会いにゆきます」(17年)▽「ジョゼと虎と魚たち」(03年)=「ジョゼ」(20年)▽「ゴールデンスランバー」(09年)=同名リメーク(17年)▽「スマホを落としただけなのに」(18年)=同名リメーク(22年)(洪相鉉)【時系列で見る】関連記事元社会部記者が感じた「金子差入店」のリアル “あちら”と“こちら”を隔てるもの1/1 09:00「生意気ですみませーん」 天才・草彅剛の謙虚さが生み出す名演4/27 11:00あわせて読みたいAdvertisementこの記事の特集・連載現在昨日SNSスポニチのアクセスランキング現在昨日1カ月アクセスランキングトップ' + '' + '' + csvData[i][2] + '' + '' + '' + listDate + '' + '' + '' + '' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList;}const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item');let dataValue = '1_hour';Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick);});fetchDataAndShowRanking();//]]>