2025.06.07関 賢太郎(航空軍事評論家)tags: F-16「ファイティングファルコン」, F-35「ライトニングII」, アメリカ軍, ミサイル・砲, ミリタリー, ロッキード・マーチン, 戦闘機, 航空, 軍用機アメリカ空軍の次期戦闘機がF-47と名付けられ、その主契約企業にボーイングが選定されました。その一方でライバルのロッキード・マーチンはF-35のアップデートでF-47に匹敵する戦闘機が造れると明言しています。本当でしょうか。 2025年春、アメリカの国防産業界に静かな、しかし決定的な地殻変動が生じました。長らく「NGAD(Next Generation Air Dominance)」の仮称で呼ばれてきたアメリカ空軍の次期制空戦闘機計画が、ついに「F-47」の正式名称を冠し、その開発契約がボーイング社と締結されたのです。これは、F-22「ラプター」、そしてF-35「ライトニングII」と、戦闘機開発においてロッキード・マーチン社が独走を続けてきた時代に、ボーイングが再びその存在感を示した瞬間と言えるでしょう。拡大画像アメリカ空軍の主力戦闘機となりつつあるF-35A「ライトニングII」現在の最新型はブロック4仕様であり、すでに性能向上型が実現している。(画像:アメリカ空軍)。 しかし、ロッキード・マーチン社がこの状況を黙って見過ごすはずはありませんでした。彼らは、すでに1000機以上の生産実績を誇り、事実上アメリカ空軍の主力機といっても過言ではないF-35を「第6世代戦闘機相当」にアップグレードする性能向上案を提示したのです。 一部からは「スーパーチャージャー付きF-35」などと形容されるこのプランですが、本当にF-47に対抗可能なほどの能力向上をF-35にもたらす内容なのでしょうか。 そもそも、F-47の登場と前後して「第6世代戦闘機」という言葉が頻繁に用いられるようになりましたが、一方でその実体は依然として明確な定義を欠いています。一般に言われる特徴としては、飛躍的に向上したステルス性能、AIと人間の協調による戦闘、指向性エネルギー兵器の搭載、そして無人機との連携(「協調戦闘機:CCA」構想)などが挙げられます。 加えて、これら要素を個別に検討すると、その多くは必ずしも「革新的な能力」とは言い切れません。例えば、AIの適用や無人機との連携などは、搭載されるアビオニクスの更新によって、F-16やF-15といった第4世代戦闘機ですら対応可能なものであり、第5世代戦闘機であるF-35がこれを実現できない理由は何もありません。F-35は、その設計思想の根幹に情報融合とネットワーク中心の戦闘を据えており、これらの要素は元来、その潜在能力の一部として内在していたと解釈することもできます。【次ページ】F-35の改良ならF-47の80%の性能を50%のコストで実現可能」ってホント?【画像】これが最新の第6世代戦闘機「F-47」です