2025.06.07稲葉義泰(軍事ライター)tags: DSEI Japan, ミリタリー, メカ, 砲・ミサイル, 自衛隊, 陸上自衛隊千葉県の幕張メッセで開催された日本最大の防衛装備品展示会「DSEI Japan」。その会場で、シンガポールの大手防衛関連企業であるSTエンジニアリングが新型の迫撃砲を展示。じつは、これが日本とも無関係ではないのです。 千葉県の幕張メッセで、2025年5月21日から23日にかけて開催された大規模な防衛・安全保障の展示会「DSEI Japan 2025」において、今回が初出展となるシンガポールの大手防衛関連企業STエンジニアリングが、興味深い模型を展示していました。陸上自衛隊が運用する120mm迫撃砲(画像:陸上自衛隊)。 一見するとただのトラックのようですが、後部には迫撃砲が取り付けられています。これは、同社が開発した車載型迫撃砲の「地上配備型先進迫撃砲システム(GDAMS)」です。従来、迫撃砲といえば車両に砲と弾薬を積載し、あるいは車両により砲をけん引した状態で陣地に進入し、そこで砲を設置して射撃体勢をとるという形式が一般的でした。実際に、陸上自衛隊が現在保有している81mm迫撃砲や、より大口径の120mm迫撃砲は、そのように運用されています。 一方で、このGDAMSは車両と一体化されており、陣地に進入すると15秒で砲の展開が完了、迅速に射撃を開始することができます。さらに、デジタル化された最新の射撃管制システムを搭載しており、データを入力することで正確に目標を捉えます。 また、GDAMSは従来の迫撃砲と比べて運用人数も大幅に少なくできます。たとえば、陸上自衛隊では81mm迫撃砲を運用する場合には3~4名、120mm迫撃砲の場合には約5名の人員が必要とされてきました。これに対しGDAMSは砲の展開などが自動化されているため、車両の操縦手を含め2名で運用することが可能となります。 さらに、既存の車両への統合が容易なこともメリットの一つになりそうです。STエンジニアリングの担当者は、筆者(稲葉義泰:軍事ライター)の取材に対して「GDAMSを陸上自衛隊の高機動車に搭載することも可能」であると説明しました。加えて、陸上自衛隊が現在運用している81mmおよび120mm迫撃砲の両方に対応しているとのこと。となると日本でも速やかに導入することが可能です。 ウクライナ戦争でもわかる通り、戦場の趨勢を決する大きな要因の一つが砲兵火力です。一方で、ウクライナのような広大な内地ではなく、比較的小さな離島での戦闘を主眼に置く現在の陸上自衛隊においては、迫撃砲の重要性が高まってきていると考えられます。 GDAMSは迅速・正確な射撃と省人化を両立でき、かつ敵のドローンや砲による反撃にあう前に速やかな陣地変換を行える可能性があります。現在の日本が置かれた安全保障環境にも合う装備の一つと言えそうです。【次ページ】【動画】本当に2人で運用しとる…! GDAMSを運用する様子を動画で【トラックの後ろにこう付けるか!】STエンジニアリングが展示したGDAMSの模型を写真で(画像)