お母さん>お父さん? 「父の日」の存在感を高めるには

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2025年の父の日は6月15日=ゲッティ写真一覧 5月11日の母の日から遅れること35日。お父さんが主役となる6月15日がやってくる。今年の「父の日」だ。感謝の気持ちの大きさに父も母もないと思いたいが、記念日としての存在感は母の日に水をあけられている印象がぬぐえない。 <毎度だけど母の日に比べ注目度無いのが父として悲しい> <母の日より存在感が薄い気はしますが、世のお父さんたちは頑張ってます> X(ツイッター)の投稿には、父親らの悲哀がつづられている。 <父の日に何あげるのか思いつかない> <父は贈り物しても喜ばないので父の日は中止> 父親との距離感に戸惑っているかのような子の投稿も散見される。父の日「お金かけない」 情報サイト「父の日.jp」は今年2~3月、インターネットによるアンケート調査を実施し、全国の10~60代の665人から回答を得た。Advertisement1969年の父の日。お父さんのために小学校のプールで魚釣り大会を開催=大阪市東淀川区の大桐小で1969(昭和44)年6月15日写真一覧 「父の日」にプレゼントを贈る頻度を聞いたところ、半数近い49・5%が「毎年贈っている」と回答したものの、「とくに何もしない」との回答が26・2%に上った。 「母の日」に関する同様の調査(回答者1063人)では、「毎年贈っている」は半数以上の56・1%、「とくに何もしない」は19・6%で、いずれも母の日に軍配が上がった。 昨年、それぞれの記念日をどのように過ごしたかを尋ねた項目では、「お母さんと一緒に過ごした」は3分の1(32・6%)だったが、「お父さんと一緒に過ごした」は4分の1(25・4%)だった。 「父母へのギフトにかけられる予算」に対しても、父の日、母の日ともに「2000~3000円未満」が1位だったが、2位を見ると母の日が「4000~5000円未満」だったのに対し、父の日は「お金をかけない」となり、予算でも明暗が分かれた。歴史の差 お父さんだって頑張っているのになぜなのか。 サイトを運営する河元智行さんは、6月に祝日がないことを一因に挙げる。 母の日の直前にはゴールデンウイークなど比較的休日が多く、食事をしたり、実家に帰省して実際に母親と顔を合わせたりする機会も多い。うっかり忘れを防ぐ効果もある。「父の日」にギフトを贈る頻度をアンケート調査で尋ねたところ、「毎年贈っている」は半数だった一方、「とくに何もしない」「2、3年に一度の頻度で贈っている」は合わせて4割以上を占めた。父の日は「気が向いたときに祝う」と捉えている人が少なくない傾向が見て取れる=「父の日.jp」から写真一覧 半面、6月は12月とともに祝日がない月だ。そして、年末年始もない6月はさらに父子の交流が少なくなりがちだ。 そもそも父の日が6月に設定された起源は米国だ。 男手一つで育ててくれた父へ感謝として、娘が父の誕生日の6月に礼拝してもらったことがきっかけとされる。 そして、1914年に制定された「母の日」のように「父に感謝する日を」と呼びかけられ、「母」から遅れること約60年後の72年に父の日が制定されたのだ。 日本で現在のようなギフトを贈る習慣が普及し始めたのは80年代に入ってからだ。母の日が戦後の占領期にアメリカによって普及が進み、49年に制定されたのと比べると、父の日は歴史的にもまだ浅い。 ちなみに、日本や米国など多くは6月第3日曜日に設定されているが、それ以外の日もある。スペインやポルトガルなどは3月、台湾は8月、タイは12月だ。 また、韓国ではかつて5月に「母の日」が定められていたが、性別に関係なく親を敬う日として「両親の日」に名称変更になった経緯があるという。海の向こうでも 「父の日」の存在感が薄いのは、日本だけではないようだ。 日本と同じ6月に「父の日」を迎える英国の公共放送BBCは2017年、「なぜ父の日のプレゼントは母の日よりもお金をかけないのか」と題した記事をウェブサイトで配信している。 父の日が軽視される理由について「母親が自分を犠牲にし、家庭生活のために大きく貢献していることが要因」と分析している。「母の日」にギフトを贈る頻度を尋ねたアンケート調査では、「毎年贈っている」は6割以上に上った一方、「とくに何もしない」「2、3年に一度の頻度で贈っている」は合わせて3割程度にとどまった。「父の日」よりも重視している人が多い傾向が見て取れる=「母の日.me」から写真一覧 ただ、近年は父親が家事や育児にも関わるようになってきていることに触れ、「父の日がより重視されるようになっている」と紹介している。 日本でも、家事や育児はいまだに女性が中心になって担うことが多い。 河元さんは家庭で食事など日常的に子供と触れ合うことが多い母親に対しては、身近な存在で感謝の気持ちを抱きやすいとみる。 一方、父親は仕事など経済面で支えることが多いため、家族との触れ合いが少なくなりがちだ。コロナ禍で変化? ただ河元さんによると、近年は感謝の気持ちを形にする日としての「父の日」への意識が日本でも根付きつつあるという。 父の日のギフトを「毎年贈っている」と回答した人は、21年には約37%だったが、年々増加し、25年には約半数に到達した。 今年26・2%だった父の日に「とくに何もしない」との回答が、21年には約40%だったことを思うと、かなり「改善」されてはいる。 コロナ禍で父親と触れ合う時間が増えたことが一因とみられる。 父親が家族と過ごす時間を増やすなど、家族との関わり方を変えることが、軽視されがちだった「父に日」のイメージアップには欠かせないようだ。   ◇1970年の父の日。プレゼントを選ぶ人でにぎわう百貨店のネクタイ売り場=大阪市南区(現・中央区)の高島屋百貨店で1970(昭和45)年6月21日写真一覧 河元さんによると、近年じわじわ伸びている父の日のギフトは、メッセージとともにギフトも送れるソーシャルギフト(eギフト)のサービスだという。 「プレゼントを渡したり、食事を一緒にするのもいいですが、従来のメッセージカードや手紙に加えて、メッセージアプリで気持ちを伝えるだけでもお父さんはうれしい。感謝の気持ちをしっかりと伝えることで、父の日も笑顔の多い日になっていくと思います」【稲垣衆史】