ため息や舌打ち、飲み会強制…職場のグレーゾーンハラスメントの実態

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職場で、ため息や舌打ちといった「グレーゾーンハラスメント」を経験した人は少なくない(写真はイメージ)=ゲッティ写真一覧 「俺の若い頃は」「今時の若者はね……」と説教じみた語りを始めたり、「あなたのためを思って」と一方通行のアドバイスをしたり。そんな光景を、職場で見聞きしたことはないだろうか。 ハラスメントとまでは言えないけれど、相手が不快感や戸惑いを覚える言動「グレーゾーンハラスメント」。東京都内の民間企業がこのほど実施した調査で、快適な労働環境をじわりと侵食している実態が明らかになった。Advertisement4割強が「退職検討」 調査は、社内規定DX(デジタルトランスフォーメーション)サービスなどを手がける東京都港区の「KiteRa」が6月中旬に行った。全国のビジネスパーソンを対象にインターネットアンケート形式で行われ、18~65歳の1196人が回答した。 業務上や日常の職場で上司や部下、同僚による「不快な言動」の経験者は、5割を占めた。主な項目は、以下の通り(複数回答)。グレーゾーンハラスメントにあたる「不快な言動」を経験した人は半数に上る=KiteRa提供写真一覧 ▽ため息や舌打ち、あいさつを返さないなど不機嫌な態度 26・2% ▽社内の飲み会や接待への参加強制 16・2% ▽過去の慣習や個人的な価値観・先入観に基づいた発言 14・5% ▽プライベートな質問に回答を強要 12・0%グレーゾーンハラスメントにあたる言動を受けた経験について聞いた調査結果=KiteRa提供写真一覧 さらに、こうした不快な言動を受けたことが原因で「退職を検討したか」との問いに対しては、45・8%が「はい」を選んだ。不快な言動の経験者のうち、4割強は退職を検討=KiteRa提供写真一覧 それぞれの不快な言動は、どれほど退職検討につながったのか。調査は、その因果関係にも踏み込んだ。 最も割合が高かったのは全体の9・5%が選んだ「無視、仲間外れ」で、退職検討は経験者の7割に達した。 全体の9・4%が選んだ「社外の飲み会や接待への参加強制」も、7割近くが退職を検討していた。「グレーゾーン」抑制の社内規定を こうしたグレーゾーンハラスメントにあたる言動については、全体の6割が「行ったことがない」と答えた。 一方、交際相手の有無や休日の予定といったプライベートな質問をした経験がある人は全体の15・3%。不機嫌な態度で接した経験がある人は11・4%だった。 さらに、グレーゾーンハラスメントに該当する何らかの言動をした経験がある人の6割が、良かれと思っての行動だったという認識を持っていた。 調査ではグレーゾーンハラスメントにあたる言動を抑制する社内規定の有無を尋ねる項目もあり、特に中小企業で規定の整備が遅れている実情も明らかになった。成蹊大学の原昌登教授=KiteRa提供写真一覧 ハラスメントの法律問題に詳しい成蹊大の原昌登教授(労働法)は、調査結果に寄せたコメントで「誰が見てもパワハラやセクハラに該当するのであれば、企業として対応すべきことは法律上明らか。しかし、グレーゾーン事案は対応が難しく、それゆえに注意が必要だ」と指摘。 立場を利用した言動により心理的負担を生じさせることを禁止するなど、的確で分かりやすい社内規定を整備することも有効だといい、「(規定によって)言動に注意するようになれば、お互いに不快感を与えない、世代間のコミュニケーションが可能になるだろう。それはまさに企業の財産だ」と述べた。【千脇康平】