相棒は双眼鏡:競馬界に求められる「パドック周回時間の劇的な短縮」=井内利彰さん

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パドック周回時間の劇的な短縮こそが最大の暑熱対策になる。写真は京都競馬場のパドック=川平愛撮影 今週、家族で大阪・関西万博に行ってきた。 午前9時の入場チケットだったことや入場して真っ先にヨルダン館へ行くことを筆頭にルートをあらかじめ決めていたこともあり、思っていた以上にパビリオンを回り、満足して午後4時すぎには万博を出ることができた。 ただ、日差しの強さは尋常ではなかった。 帽子はキャップを被った上からバケツハット。時には日傘を差していたが、それでも痛いくらいの暑さ。 パビリオンでの待ち時間が長かったり、スムーズに昼食をとることができなかったりすれば、熱中症で倒れていたのではないかと思うほどだ。Advertisement 私が万博に滞在した時間帯に多くの競馬場では1Rから12Rが行われる。 1頭がレースに出走する時間は、パドックからレース終了まで30分から40分ほど。 「そんなに長い時間じゃないよね」というのは観客サイドからの視点。実際はパドックに出る前には「装鞍所(そうあんじょ)」という場所に集合して、発走に対する点検作業のようなものがある。夏競馬のパドック。暑さ対策は馬にとってもファンにとっても大切だ=北九州市の小倉競馬場で2012年7月28日午前9時38分、加古信志撮影 通常時(レースの種類によって少し違う)はレース発走の50分前に装鞍所へ集合という決まりになっているが、この時期は40分前に装鞍所へ集合すればよい。 レース前の負担は少し軽減されるのだが、問題はパドックの周回。時間帯によっては直射日光を全身に浴びて、下からは照り返しのあるところを何度も何度も歩かないといけない。 他の季節に競馬をご覧になったことがあるファンだと「今の時期はパドックの周回時間が短くなっているじゃないか。それでパドック映像の提供の時間も短い」と不満に思われているかもしれない。 ただ、理解していただきたいのは、パドックで調子の良さをアピールしても、時間があまりに長いと調子が下降してしまうということだ。 それゆえに関係者の間でも「この時期のパドックは2、3周にしてもらえると本当に助かる」という声が多い。 トレーニングセンターでの調教においても、馬に負担をかけないため、現在は朝の5時から調教している。そうした工夫も、パドックの周回時間が長いとすべてが台無しになってしまうかもしれない。 「パドック周回時間の劇的な短縮」こそが最大の暑熱対策になると思うので、ファンにもそのことを理解してもらった上で、JRA(日本中央競馬会)には制度改革を検討してもらいたい。(競馬ライター)いうち・としあき競馬ライターの井内利彰さん=本人提供 1976年生まれ。東大阪市出身。高校の同級生の影響で競馬に興味を持った。92年の菊花賞(GⅠ)を自身と同じように小柄なライスシャワーが制し、その魅力に取りつかれた。大阪経大卒業後、競馬予想サイトの運営会社勤務を経て、フリーライターに。【前の記事】雨の宝塚記念なら ボルドグフーシュに期待するワケ=井内利彰さん関連記事