「ヤバい、車線の真ん中で故障した!」←ドンッ…! 「早く動かさなきゃ」よりも大事な「きちっとした対応を」事故調が異例の警告

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2025.07.09中島みなみ(記者)tags: NEXCO東日本, 事故, 東北道, 道路高速道路上の故障車は、路肩に寄せて止めることが道路交通法で定められています。ハイスピードで迫る後続車を考えれば、とにかく道路の真ん中で停車し続けるなどありえない――そんな切迫した思いのなかで、痛ましい事故が起きました。 自動車事故調(事業用自動車事故調査委員会)が2025年6月27日に報告書をまとめた事故に基づき、委員長の酒井一博医学博士がこんな指摘を残しました。拡大画像追突された貸切バス。運転手と乗客2名は路外に出ていて死亡した(画像:事業用自動車事故調査委員会)。「今回は故障して止まっていたバスに後ろからトラックが追突する事故の報告をまとめましたが、最近少し気になっていることがあります。こういう事案は、今まだ調査中の事故にもいくつかあります」 そのうえで、故障して止まるというのはやむを得ない事情があるとしつつ、「そのあと“きちっとした対応”をしていない、というか、後ろからたくさんのクルマが来るのに、止まっているということの措置をしない」と指摘しました。 事故調が取り扱ったのは、2023年5月16日20時11分頃、宮城県栗原市内の東北道下り線406.6キロポスト付近で起きた大型貸切バスと大型トラックの追突事故です。貸切バスは本線上で止まっていました。《本事故は車両故障のため停車することがやむを得ない場合とはいえ、高速道路で、第一車両通行帯に停車中の衝突事故であるため、事故発生の危険性は極めて高い状況であったと考えられ、車両が路肩に停車できていれば、本件事故は発生していなかった可能性が考えられる》(報告書「第一車両通行帯に停車したこと及び停車後の影響」) 第一通行帯は緊急車両が通行する路肩のすぐ右側の車線です。当時、大型トラックの前には箱型のトラックが走っていました。箱型トラックは停車中の貸切バスを避けるため追越車線に変更しましたが、視界を遮られていた大型トラックは5700kgの冷蔵冷凍食品を積んだまま、貸切バスに追突しました。付近の制限速度は大型車80km/hのところ、92km/hで走行していました。 この事故で追突された側のバス運転者と乗客2人が死亡しましたが、犠牲者は、いずれも高速道路上に出ていて亡くなりました。報告書にはこう記されています。《乗客2人(2人以外の乗客は退避)と車両後部のエンジンルーム付近でラジエターに水を補給することを優先したことで被害が拡大したものと推定できる》(前同・報告書) なぜかは後述します。この事故の教訓、その第一は、高速道路であっても、路肩に止められない状況が生じることだとを報告書は解説します。《エンジン回転数が2370rpmから急激に下降していることから、この時点でエンジンが停止し、これに伴い速度も急激に減速していることがわかる。このような状態にあっては(略)容易に車両の方向を変更することは困難状態となる》(同) 路肩に寄せて止めていれば、事故は回避できるはずでした。報告書は警察庁の集計を元に、車両相互の追突事故は「車線停止車の件数が路肩停止車の件数の約103倍」と危険性を強調します。【次ページ】停止措置後は、すみやかに路外へ退避する【凄まじい衝撃…】これが92キロで追突して大破した「大型トラック」です(写真)