「お召列車」なぜ廃止? 老朽化だけではない、日本と異なる英国王室の事情 150年以上の歴史に幕

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2025.07.07赤川薫(アーティスト・鉄道ジャーナリスト)tags: お召列車, 海外, 鉄道英国王室が王室専用列車、いわゆる「お召列車」を廃止する意向を示しました。150年以上の歴史を持つ王室専用車両は、どのように生まれ、そしてどのような経緯と背景で消えていくのでしょうか。 英国のチャールズ国王は、150年以上の歴史を持つ王室専用列車、いわゆる「お召列車」の伝統を2027年までに廃止する考えであることを、王室の年次会計報告書を通じて公表しました。拡大画像現在のお召列車(画像:Steve Jones) お召列車の廃止にはいくつかの理由があります。 まずは、老朽化によるコスト問題です。 現在使われているお召列車の車両は、2022年に崩御されたチャールズ国王の母、エリザベス2世の即位25周年を記念して1977年に造られたものです(デイリー・ミラーによる)。老朽化が進み、2013年にはその維持費用が問題視され、廃止案が国会で議論された過去があります。 ところが、当時の英国君主であったエリザベス女王が、「どんな移動手段よりも鉄道の旅が好き」という意向を示したことにより、急転直下、「よく調べたら、お召列車はまだまだ使えました」と、なんとも間が抜けた発表がされたというドタバタ劇がありました(テレグラフによる)。 このように延命されたお召列車ですが、ここにきて、やはり老朽化があまりにも著しく、年間維持費は120万ポンド(約2億3700万円)にもなると再び取り沙汰されているわけです。 利用頻度の低下も問題になっています。鉄道愛好家であることを公言していたエリザベス女王とは異なり、現国王のチャールズ3世が2024年度にお召列車を利用したのは2回。2023年度にはたった1回だといいます。【次ページ】「国民の反感」も廃止を後押し?【こ、これが王室クオリティ…】豪華絢爛「ヴィクトリア女王車両」を見る(写真)