映画の推し事毎日新聞 2025/7/10 22:00(最終更新 7/10 22:00) 2393文字ポストみんなのポストを見るシェアブックマーク保存メールリンク印刷「逆火」©2025「逆火」製作委員会 「待望のゲストトーク! 泣きそうになりました。内田英治監督の前作『獣道』が大好きで、質問したいこともいっぱいでしたが、『大勢の前で手を挙げて聞いてもいいかな』と思っていました。それでもやり遂げた!」 「私の質問はこれでした。『内田監督の作品には、マイナーな職業や背景(DVを受けた人物、AV俳優など)を持つキャラクターが多いですが、その理由は何でしょうか』」Advertisement 「そして監督の答え!(涙) 『表向きは幸せそうな人々が、本当に幸せか』という疑問を抱くことが多く、陰で苦しんでいる人々の話を作りたいという思いがあった、というのです。うわ! 本当にファンの心が爆発しますね」「逆火」©2025「逆火」製作委員会短編から受けた衝撃 観客は最も正確な評論家である。 2023年、プチョン国際映画祭(BIFAN)での「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」の内田監督のゲストトークの後で、「伝説の女ヨーコ」という韓国の映画ファンの、ドキドキする興奮が直接伝わってくるような感想を読みながらそう思った。 7月11日公開の新作「逆火」の脚本と演出を担当した内田英治の作品世界と本格的に遭遇したのは、BIFANにプログラムアドバイザーとして合流してからだ。文字通り「衝撃の連続」だった。 初めて接した作品は、忍者映画の撮影現場に本物の忍者が現れるという奇抜な設定で、「短編ってこんなに面白いんだ」と実感した「荒野の忍 Return of Ninja」(18年)であり、翌年、定年退職後の計画に問題が生じた「マニュアル課」のサラリーマンの姿を通じて家族の意味を問う「家族マニュアル」を見た時は、短編を映画館で見る機会があまりない韓国の環境が不幸だという気さえした。 彼の作品と出合った喜びを細かく書いているのは、「伝説の女ヨーコ」の感情ともつながっているためだ。「逆火」©2025「逆火」製作委員会良い物語がメッセージを運ぶ 円滑なストーリーテリングは聞き手を気持ちよくさせる。語り手が何を言っているのかはっきりと理解できるから。筆者は、子供の頃に祖母から聞いた昔話を今でも覚えている。桃太郎や鬼、時にはタヌキなど動物が登場する物語。何度聞いても飽きなかった。 今思えば面白さを感じた理由は、明瞭なストーリーを骨子とし、勧善懲悪などの明確なメッセージを反映して適切に肉付けする、ストーリーテリングの技術にあった。結局、よくできたストーリーこそ、テーマを伝える最も効果的な方法である。 そして断言するが、「獣道」でシッチェス・カタルーニャ国際映画祭をはじめ、世界30カ国余りの国際映画祭で好評を博して世界舞台に監督デビューし、小説まで出版している内田英治は、日本映画界を代表するストーリーテラーだ。「逆火」©2025「逆火」製作委員会俳優の才能引き出し新たなステージへ それだけではなく、忍成修吾(「ガチャポン!」)、瀧内公美(「グレイトフルデッド」)、斎藤工(「家族ごっこ」)、渋川清彦(「神と人との間」「下衆の愛」)、松本まりか(「雨に叫べば」)、伊藤沙莉(「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」「獣道」)ら、立体的なキャラクターを演じられる俳優の才能を際立たせ、演技人生の新しいステージに立たせるのも彼の得意技である。 映画祭をよく訪れ、多くの日本の映像コンテンツに接する観客たち(24年のBIFANの来場者だけで14万人近くになり、決して無視できない)にとって、日本人俳優の名前とフィルモグラフィーは内田監督の作品と重なる場合が多い。「逆火」©2025「逆火」製作委員会北村有起哉のメソッド演技 「逆火」で、主人公野島を演じた北村有起哉は、長年積み上げてきた演技のキャリアが花を咲かせるように、「逆火」で究極のメソッド演技を見せている。 彼は毎瞬間、野島の人生を生き、野島の内面と北村自身の個人的感情が一致しているように見える。撮影現場の彼が、役と類似した感情を探すために自身の過去の経験を探索する、メソッド演技のいわゆる「情緒回想(emotional recall)」のアプローチを採用していたのかは分からないが、少なくとも画面を見れば、彼が達成した成果は明白だ。 そして円井わんがふんしたARISAが、「逆火」の性格を決定づけている。 「逆火」は「作られた英雄」の物語。誰もが予想するように、それに当たる登場人物が嫌われざるを得ないし、序盤のARISAはその典型だ。 しかし物語が進むにつれて、ARISAが真実を曲げ、真の自分を隠すしかなかった状況が明らかになると、野島とARISAの間に共感と連帯感が生まれ、強くなってゆく。「逆火」©2025「逆火」製作委員会見えているものの裏にある真実 2人の間には、決して明らかにしてはならない秘密がありそれが葛藤になるが、状況と視点が変わり彼らなりの真実を共有するようになると、全ての境界は一気に消滅し、親しい関係になる。 全く異質で敵対的でもあった2人の関係がある瞬間に激変する展開は、「クライング・ゲーム」(ニール・ジョーダン監督)のファーガス(スティーブン・レイ)とディル(ジェイ・デビッドソン)を見るようだ。 人物のケミストリーで観客の感情を揺るがすドラマツルギーの力を見せつけた内田監督の演出力は、抜群と言うしかない。そして、記憶に残るセリフの数々。 「逆火」はまさに、「伝説の女ヨーコ」が引き出した内田監督が描く「見えているものの裏にある真実」で観客を引き付けるのだ。まるで書店で数ページを立ち読みして簡潔で節制された短文の迫力に魅了され、衝動買いしたくなる小説のように。 映画祭で会う度に話の尽きない内田英治とその映画は、抑えきれないエネルギーにあふれている。主人公の苦悩を描きながら、ナラティブそのものに没頭させられて満足感を得る、神秘的な映画体験。ストーリーテリングの魅力を日本映画の一つの個性として定着させた「J―ストーリーテラー」。ブロックバスターが攻めてくる夏シーズンにも、その前進は続く。(洪相鉉)【時系列で見る】【前の記事】“予測不能”高石あかりが、俳優の力を改めて認識させた「夏の砂の上」関連記事あわせて読みたいAdvertisementこの記事の特集・連載現在昨日SNSスポニチのアクセスランキング現在昨日1カ月アクセスランキングトップ' + '' + '' + csvData[i][2] + '' + '' + '' + listDate + '' + '' + '' + '' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList;}const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item');let dataValue = '1_hour';Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick);});fetchDataAndShowRanking();//]]>