オンラインの森毎日新聞 2025/7/12 07:00(最終更新 7/12 07:00) 2486文字ポストみんなのポストを見るシェアブックマーク保存メールリンク印刷「ミセン 未生」ⓒCJ E&M Corporation,all rights reserved. 一番好きな韓国ドラマを挙げるとしたら、みなさんは何を選ぶだろうか。一つだけ、と言われると誰もが悩むはずだ。 私にとって韓ドラにハマるきっかけになった作品は「愛の不時着」で、ドラマの世界観にどっぷりと浸ったのは「ペントハウス」や「財閥家の末息子」。Advertisement 「おつかれさま」で号泣し、「マイ・ディア・ミスター」で生き方を反省し、「私の夫と結婚して」で爽快感を味わい、「プロデューサー」で腹を抱えた。どれも甲乙つけがたい傑作だ。商社で同期 ライバルの友情物語 そんなあまたの良作の中からイチオシを選ぶとしたら、「ミセン 未生」(2014年)を挙げる。囲碁のプロ棋士を目指していた若者が、家庭の事情で夢を諦め、総合商社のインターンになる物語だ。 Netflixで「イカゲーム2」が始まった頃にも話題になったが、「ミセン」の主人公チャン・グレを演じたイム・シワン、商社での同期チャン・ベッキ役のカン・ハヌルらが同作にも登場する。 私は「ミセン」での、この2人の友情物語が大好きだ。「イカゲーム3」の配信に合わせて、彼らのエピソードを紹介したい。囲碁棋士挫折、世間知らずのグレ 主役のチャン・グレは、幼少期から囲碁一筋で生きてきた。天才と称され、プロを目指すも、大黒柱の父親が亡くなったことで、働くことを余儀なくされる。 囲碁とアルバイトの二足の草鞋(わらじ)が限界となり、棋士の道を断念する。囲碁を通じて知り合った社長のコネで、総合商社「ワン・インターナショナル」のインターンとなる。 就職難の韓国で、誰もがうらやむ大企業の働き口を見つけたものの、試練の日々が待っていた。囲碁の世界しか知らないグレだ。学歴も仕事のスキルもない。ネクタイも結べなければ、コピーの取り方も知らない。 当然外国語も話せず、海外からの電話に対応できない。どうやらチャン・グレといヤツはコネ入社らしいと、インターンの間ですぐにうわさになる。「ミセン 未生」ⓒCJ E&M Corporation,all rights reserved.一目置かれるエリートのベッキ インターンの中でも、学歴、スキル、育ちが申し分なく、一目置かれていたのがチャン・ベッキだ。 パリッとしたシャツを着こなし、そつなく仕事をこなす姿はエリートそのもの。誰に対しても礼儀正しく、仲間外れのグレにも声をかける。 しかし、そんないんぎんな態度とは裏腹に、ベッキも内心では他のインターンと同様にグレを見下していた。 誰からも期待されていなかったグレだが、囲碁で培った洞察力や勝負勘、独特の着眼点から得る常識を覆す発想で、次第に周囲を驚かせるようになる。 明快なサクセスストーリーではない。失敗を繰り返し、相変わらず恥をかきながらも、少しずつ前進する描写がリアルだ。グレを軽んじていたベッキは次第に、グレをライバル視するようになる。“住む世界が違う”2人だが… グレは、ベッキとともに採用試験に合格する。ただし、ベッキらが正社員であるのに対し、大卒でないグレは2年間の契約社員。能力を認めても、簡単にはルールを変えられない大企業の現実を突きつけられる。 ベッキはグレの存在に気をもむ。自分は正社員になってから、思い描いていたほど活躍できないでいる。それなのに、自分よりはるかに劣っているはずのグレが評価されていることが我慢ならない。 ある時、ベッキの部でトラブルが発生し、グレの一言で解決したことがあった。ベッキの上司に感謝されたグレに、ベッキは「君は自分に足りないところを埋めるのが先だ」と言い放つ。 君と僕とでは住む世界が違う――。ベッキの負け惜しみと傲慢な本音が漏れる。パンツと靴下10万ウォン分を売りさばけ そんな2人が、ひょんなことから一緒に仕事をすることになる。10万ウォンで何かを仕入れ、それをその日のうちに売りさばいてくるという課題を、グレの上司・オ課長(イ・ソンミン)に与えられたのだった。ベッキは、そこでグレの過去を知ることになる。 2人は、グレが問屋で「安いから」というだけの理由で仕入れた大量のパンツと靴下を持って街に出た。ベッキの大学の先輩やグレの囲碁の恩師を頼ったり、電車でゲリラ販売を試みたりと、あの手この手を使って売ろうとする。しかし、誰も買ってくれない。 日が暮れ、あきらめかけた頃、グレは通りかかったサウナの看板を見てひらめく。ワン・インターナショナルで働くようになってから、残業の合間にサウナに行く上司たちを毎日のように見てきた。誰も替えの下着は持っていないはずだ。ここなら、新しいパンツと靴下を必要とする人たちがいる! グレの予想は見事に当たり、サウナに向かうサラリーマン相手に、2人は商品を完売した。帰社し、それぞれの部で報告書を仕上げて退勤する際、ベッキはグレにこう告げる。「今でも君と僕の時間が同じだとは思わない。それでも、また明日」「ミセン 未生」ⓒCJ E&M Corporation,all rights reserved.格差社会を自然に優しく 普通に暮らしていたら交差することがなかったであろう、生まれも育ちも異なるグレとベッキが初めて息を合わせたサウナ前。それでも急接近とまではいかない2人の間合いを表す絶妙なセリフ。グレと一日行動を共にする中で、グレに向けるベッキのまなざしの変化……。オーバーな表現はどこにもないのに、どれもとてつもないインパクトがある。 とりわけグレを拒んできたベッキが、グレのルーツを知り、文字通り「地べたをはいつくばる」ひたむきな仕事ぶりを目の当たりにし、グレを受け入れ始める様子に胸が熱くなる。 格差の問題は韓ドラの定番の一つだが、こんなにも自然で、厳しくて、優しい描写を見たことがない。何度見ても、あるいは何年も見ていなくても、ずっと心に残るエピソードだ。格差が拡大し、社会の分断が進む今こそ、見るべき作品だと思う。 グレ役のイム・シワンは、「イカゲーム3」の陰の主役。グレの純粋さは影をひそめ、計算高く、狡猾(こうかつ)な債務者を演じ、お茶の間の嫌われ者に転じた。 自信家で鼻持ちならないベッキを好演したカン・ハヌルは逆に、単純で明るいゲームの参加者として登場する。「ミセン 未生」はU-NEXT他で配信中。(大野友嘉子)【時系列で見る】【前の記事】<ネタバレあり>最多視聴更新「イカゲーム3」驚きのフィナーレ! 予想上回る意外さが最後まで関連記事あわせて読みたいAdvertisementこの記事の特集・連載この記事の筆者すべて見る現在昨日SNSスポニチのアクセスランキング現在昨日1カ月アクセスランキングトップ' + '' + '' + csvData[i][2] + '' + '' + '' + listDate + '' + '' + '' + '' + '' + '' } rankingUl.innerHTML = htmlList;}const elements = document.getElementsByClassName('siderankinglist02-tab-item');let dataValue = '1_hour';Array.from(elements).forEach(element => { element.addEventListener('click', handleTabItemClick);});fetchDataAndShowRanking();//]]>