まだまだ「スーパースター」林家木久扇さん 卒寿の先にある野望

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インタビューに答える落語家の林家木久扇さん=東京都世田谷区で2026年10月1日、小林努撮影 「スーパースターの林家木久扇です」。一言でどっと場を沸かせるのが木久扇さんだ。 ご存じ、超のつく有名落語家。数え90歳、今月19日で89歳。なのにすっごく元気でハチャメチャで、勇退した「笑点」(日本テレビ系)にたびたびゲスト出演し、「シン木久蔵ラーメン」の売り上げは絶好調。9月に刊行された、師匠の活躍をしのぶ「八代目林家正蔵昭和日記」(玉川大学出版部)の監修にも携わった。 聞けば、まだまだ野望を抱いているらしい。最後の「師匠孝行」 師匠への傾倒ぶりがつとに有名な木久扇さん。十八番の新作落語「彦六伝」は、晩年に彦六を名乗った八代目正蔵(1982年に86歳で死去)をまるごとネタにした異例の噺(はなし)だ。師匠が亡くなって間もなく、思い出を残そうと作った落語は、今聴いてもおかしい。 誕生日に孫弟子の春風亭小朝さんから贈られたアーモンドチョコをペッと吐き出して「このチョコレート、種へえってるじゃねえか」 「どうして餅にはカビが生えるんでしょうかねえ」と尋ねられれば「バカヤロー、早く食わねえからだ」 バスケットボールの中継を見ていたら「誰か教えてやりゃあいいじゃねえか」と独り言。「(ネットの)底が抜けてるのを誰も気がつかねえんだ」……。 冒頭で触れた「八代目林家正蔵昭和日記」は、そんな師匠が残した日記を集めた、500ページ超の学術書だ。今ではいなくなった、筋が通らないことは許せない気骨ある江戸っ子の師匠だから、学術書でもおもしろいのなんの。 それでいて、同じく昭和の名人と呼ばれた、古今亭志ん生、八代目桂文楽、六代目三遊亭円生、五代目柳家小さんとの人間関係も垣間見える。当時の東京の風景に懐かしさを覚える人もいるだろう。「彦六伝」ではわからない、師匠の律義な人柄が伝わってくる。長年の落語ファンとしては、映画やドラマとして見たくなる内容だ。 今回まとめたのは、日記のうち58年からの4年分だ。形見分けで、弟子の木久扇さんと林家正雀さんが受け取っていた。「一人で楽しんでたらもったいない、知りたい人がいっぱいいるんじゃないかと思って」 7、8年前、落語に詳しい放送作家で文筆家の和田尚久さんに「師匠の日記があって、入門した僕がほめられてるんです」と話したのがきっかけで、木久扇さんが企画・監修、和田さんが校訂を担当することになり、とうとう出版にこぎつけた。「出せてよかった。最後の『親孝行』ができました」そんなに長生きするとは 日記本の監修に追われるうちに、いつの間にか師匠の年齢を追い越した木久扇さん。元気そのものだけど、そもそも「そんなに長生きするとは思ってなかった」と打ち明ける。 東京・日本橋の生まれだ。「空襲を7歳で体験して『もうじき死んじゃうんじゃないか』って。…Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。関連記事