深層サイエンス:ヤンバルクイナの人工授精に初成功 希少野鳥の保護に新たな道

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道路上に姿を見せたヤンバルクイナ=沖縄県国頭村で2026年4月21日、喜屋武真之介撮影 「飛べない鳥」として知られる国の天然記念物、ヤンバルクイナの精子凍結保存と人工授精に初めて成功したと、大阪公立大やNPO法人「どうぶつたちの病院 沖縄」などの研究チームが15日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。ひなが卵の中から殻を突っつく「はし打ち」に失敗し、ふ化直前で死んだが、野生動物の保護に新たな道を開く成果として注目される。 ヤンバルクイナは体長約30センチで、1981年に新種として沖縄本島北部で発見された。天敵マングースの捕獲や国の保護増殖事業などによって、現在の個体数は最悪時に比べて2倍の1500羽程度まで回復した。だが依然として絶滅の恐れが最も高い「絶滅危惧ⅠA類」に分類されている。Advertisementヤンバルクイナから精子を採取する様子=NPO法人「どうぶつたちの病院 沖縄」提供 絶滅回避には生息地保全だけでなく、人工繁殖も重要になる。しかし家畜とは異なり、交尾する機会が繁殖期のみで精子を採取できる機会は限られている。たとえ採取できても、これまでは凍結保存すると運動能力が大幅に悪化するなど課題は多く、絶滅が懸念される野鳥での成功例はほとんど報告がないという。 チームは、凍結しても精子の機能が損なわれない特殊な保存液を10年以上かけて開発。2025年4月、飼育下のヤンバルクイナから採取した精子を凍結保存した後、タイミングを見計らって3回の人工授精を実施した。採取された精子の入った容器=金子武人・大阪公立大教授提供 その結果、2回目だけが有精卵となり、ふ化直前の21日後まで育った。はし打ちの失敗は野生下の鳥でも起きるため、人工授精の影響は考えにくいとみている。凍結精子で受精したことは遺伝子解析で確認した。 チームは、遺伝的多様性を高めて絶滅リスクを軽減する観点から、他のヤンバルクイナでも精子凍結と人工授精を実施する予定だ。大阪公立大の金子武人教授(実験動物学)は「失敗の連続だったが、待望の有精卵が得られた。国内外で絶滅が懸念される他の野鳥に活用できるよう、各国の関係者と連携していきたい」と話している。【田中泰義】Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。【前の記事】今年のノーベル賞はどんな研究が受賞? 自然科学3賞を振り返る