全国高校軟式野球選手権で史上初の5連覇を達成した中京の平中亮太総監督=兵庫県明石市の明石トーカロ球場で2026年8月29日午前9時45分、皆川真仁撮影 気候変動や少子化など社会の変化とともに、高校野球も大きな転換点を迎えている。 諸課題の解決策として、日本高校野球連盟は7イニング制の導入を検討する。 国民的行事である夏の甲子園を中心に議論が進むが、今夏の全国高校軟式野球選手権で史上初の5連覇を達成した岐阜・中京高の平中亮太総監督(45)は「軟式も置き去りにはしないでほしい」と訴える。 軟式野球ならではの特徴や2014年の全国選手権で「延長五十回」を戦った経験も踏まえ、高校野球改革はどうあるべきかを聞いた。【聞き手・皆川真仁】Advertisement「長打が出づらい」軟式は… 07~25年の19年間、監督として全国高校軟式野球選手権で10回優勝した。軟式のボールは長打が出づらいため得点が入りにくく、1点を争ってせめぎ合う競技。7イニング制によってその面白さが減ってしまうので大反対だ。 昨秋の国民スポーツ大会で初めて7イニング制で指揮を執ったが、本当にあっという間だった。先手を取らないといけないので、序盤から下位打線に代打を出し、投手も早めの継投を考えた。作戦が成功して優勝できたが、7イニング制によってギャンブル的な要素が増え、1年間積み上げてきた力を出し切ることが難しくなると感じた。八、九回に打順が回ってくるはずの子に回せないのも残念だった。 一発逆転が難しい軟式だからこそ、七、八、九回にチームの本当の力が出ると思ってやってきた。序盤中盤と駆け引きをして、体力的にも精神的にも苦しい状態になった終盤に取り組みの差が出て、勝敗が決まる。7イニング制ではタイブレークありきになり、無死走者なしから3アウトを取って攻守交代という野球の本質からも外れる。心技体全てにおいて、9イニング制が野球として成立していると思う。4日目を迎え、スタンドが埋まった中京と崇徳の準決勝。延長五十回の熱戦が繰り広げられた=兵庫県明石市の明石トーカロ球場で2014年8月31日、久保玲撮影軟式は1時間で試合が終わってしまうことも… 現監督の後藤敦也が主将だった14年の全国選手権準決勝では崇徳(広島)と4日間で延長五十回を戦い、世間から「残酷ショー」「虐待だ」などと大きな批判を浴びた。 美談にしてはいけないのかもしれないが、全員が一つの目標に向かってやり切った最終形態があそこだった。連戦を勝ちきるために体のケアの仕方を学んだりメンタル面の準備をしたりして、苦しくてもやり抜いて成し遂げた日本一だった。人生でもいろんな難しい問題があるが、問題に対してコツコツ取り組んだ延長として、結果的に試合が長くなっただけだと思う。 この試合を契機に15年からタイブレークが導入され、いま(その延長で)7イニング制の議論が進んでいる。軟式の場合、7イニング制では1時間程度で試合が終わってしまうこともある。3年間頑張ってきて最後の夏が1時間で終わるのは寂しいなと思う。生徒たちも「9回以外は考えたくない」と言っている。 試合時間が30分短くなれば暑さ対策になるというのは分からなくはないが、1イニングにかける出力は上げることになるし、それほど体の負担は変わらないのではないか。 朝1試合、午後3試合の「2部制」を導入している夏の甲子園では、7イニング制で試合が短くなれば大会運営はしやすいだろう。注目度が高い甲子園ありきで議論されているが、全国の舞台を夢見て頑張っているのは軟式も同じ。置き去りにしてほしくはない。 7イニング制なら少人数のチームが安心して大会に出場でき、高校野球に取り組みやすくなるという意見もある。だが、野球離れは少年野球段階からの厳しい指導や親の負担の大きさなど、構造的な問題が大きい。高校サッカーのように控え部員にもリーグ戦で出場機会を確保するなど、イニングを減らすことよりも議論すべきことがあると思う。平中亮太(ひらなか・りょうた)氏 1981年生まれ。岐阜県出身。中京(当時は中京商)高3年時に主将として全国高校軟式野球選手権で優勝。大学卒業後に母校へ戻り、部長、コーチを経て、2007年に監督に就任。25年10月の校長就任に伴って26年4月に監督を退き、現在は総監督を務める。Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。【前の記事】7回制で地方大会安全に 酷暑で「絶滅」危惧 三重高野連理事長関連記事