英労働党大会で演説中に笑顔を見せるバーナム首相=英中部リバプールで2026年9月29日、ロイター 象徴的な演説だった。「父が望んだ英国を築き上げるために全力で闘う」。9月29日の英労働党大会。バーナム首相は、2週間前に亡くなった父親への思いを涙声で語りながら、そう誓った。前日まで着けていたネクタイは外していた。文字通り胸襟を開いた訴えは聴衆の心をつかんだと見え、スタンディングオベーションがなかなか収まらなかった。 7月に発足した新政権は、順調な滑り出しを見せている。バス運賃の上限設定などの生活支援策が有権者に好評なだけでなく、バーナム氏自身の好感度の高さも要因だ。Advertisement 調査会社サーベーションによる各政党党首の好感度調査(9月25日発表)では、「かなり好き」「ある程度好き」と答えた人の合計はバーナム氏が45%で1位だった。スターマー前首相が退任直前の調査(7月17日発表)で4位の22%だったのと対照をなす。 「人々との距離を縮めるのがうまい。いい意味で普通の人に見える」。労働党大会に来ていたシャーロット・ブリスさん(31)は、バーナム氏をそう評す。ブラッドリー・スタンパーさん(38)も「今の政治家は人柄が重視される。バーナム氏は情熱を表現するのにたけているのでは」と話した。英労働党大会の視聴会場で、バーナム首相の演説に総立ちで拍手を送る支持者ら=英中部リバプールで2026年9月29日、福永方人撮影 スターマー氏は2024年の下院総選挙で労働党を大勝に導き、政権交代を果たしたが、方針転換や政策のぶれが相次ぎ、国民から急速に嫌われていった。「誠実な人だと思うが、考え方や政策選択の理由がうまく伝わってこなかった」(ブリスさん)といった声をよく聞く。 バーナム氏は前任者の失敗を教訓にしているようだ。SNSを駆使して好きなスナック菓子やファストフード店のメニューを紹介するなど、親しみやすさのアピールに力を入れる。ただ、そうした試みは財政難の中、一部の人々が不利益を被る予算のやり繰りを余儀なくされるため、首相への信頼感を得る必要があることの裏返しとも言えるだろう。 人柄だけでは国の指導者は務まらない。だが人望がなければ、痛みを伴う改革に国民はついてこない。わずか4年で5人目の首相となったバーナム氏。好感度を生かして今度こそ長期政権を築き、経済や市民生活を改善してほしい。【ロンドン福永方人】Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。【前の記事】AIは利下げ材料? FRB議長の「私見」にちらつく影=浅川大樹