全日本選手権アイスダンスのリズムダンス(RD)で演技する紀平梨花選手、西山真瑚選手組=東京・代々木第1体育館で2025年12月20日、猪飼健史撮影 続々と新カップルが誕生し、注目が集まるフィギュアスケートのアイスダンス。昨年結成した「りかしん」こと紀平梨花選手(早大)、西山真瑚(しんご)選手(オリエンタルバイオ)組も、いよいよ始まる2026~27年シーズンへと気持ちを高めている。 フランス・アルプス地域で開かれる30年冬季オリンピックを目指す2人には、絆を深めるきっかけとなった言葉がある。【玉井滉大】Advertisement新たな挑戦、失われた自信 「りかしん」が拠点のカナダ・モントリオールから一時帰国していた6月中旬。現在の練習状況について尋ねると、紀平選手は笑顔を見せた。 「昨年は学びきれず、練習しきれずという段階での試合でした。今も練習や学ぶことはたくさんありますが、それを『やりきれている』と言えるくらい、とても充実した練習ができています」 自信と希望に満ちあふれていた。グランプリファイナルで優勝し、帰国して笑顔でメダルを手にする紀平梨花選手=成田空港で2018年12月11日、手塚耕一郎撮影 「りかしん」は昨年9月に結成を発表した。紀平選手はシングルでグランプリ(GP)ファイナルの優勝、4大陸選手権、全日本選手権の2連覇など華々しい実績を持つ。しかし、右足のけがの影響で競技会から遠ざかっていた。アイスダンスの経験が豊富でパートナーを探していた西山選手とのコラボレーションは大きな話題を呼んだ。 結成発表から初戦の全日本選手権予選会(昨年11月)までは約1カ月しかなかった。道のりは険しかった。 紀平選手はアイスダンス初挑戦だ。多くの選手が「シングルとアイスダンスは別競技」と評する。 息を合わせ、2人で並んで滑ることに紀平選手は相当な難しさを感じた。別のけがもあり、練習できるエレメンツ(要素)が限られた時期もあった。 ルールなどの基礎的な部分から競技を学ばなければならず、振り付けを覚える作業もあった。紀平選手は「頭までフル回転でした」と苦笑いする。 できないことが続く日々に、自信を失った時もあった。予選会の直前には、久々の試合への不安も重なり、心にしまっていたネガティブな気持ちが思わず口をついた。 悩み、苦しんでいた紀平選手に、西山選手は寄り添い、伝えた。 「紀平梨花を、忘れないでほしい」全日本選手権アイスダンスのフリーで演技する紀平梨花選手、西山真瑚選手組=東京・代々木第1体育館で2025年12月21日、猪飼健史撮影 その言葉に込めた思いを、西山選手が明かす。 「梨花ちゃんは超超トップスケーター。アイスダンスに転向したからといって、積み上げてきたものがなくなるわけではありません。『できないな』とか『他の選手は上手だから……』とは思わず、梨花ちゃん自身のすごさを忘れないでほしい」 事実、紀平選手の成長の速さは周囲も目を見張るほどだった。 西山選手も「ものすごい勢いで(技術や知識を)吸収していったことが、短期間で試合に出ることを可能にしたと思う」と語る。準備期間は短くても「りかしんはすごいんだぜ、という部分を十分に見せられる」との思いから出た言葉だった。 紀平選手は、そうした言葉に救われたという。 「アイスダンスには自信が持てない状況でしたが、私は私。自信を持って滑っていいんだなと思えました。真瑚くんの頑張る姿も励みになりました。アイスダンスは2人で作り上げていくもの。2人で考え、2人で乗り越えていく。これこそがチームなんだなと感じました」 氷上では一人で戦い続けてきた紀平選手にとって、パートナーの存在の大きさに気付いた瞬間でもあった。全日本選手権アイスダンス予選会のフリーで演技する紀平梨花選手、西山真瑚選手組=大津市の木下カンセーアイスアリーナで2025年11月2日、吉田航太撮影 昨年11月の全日本選手権予選会は「りかしん」としての公式戦デビューであり、紀平選手にとっては約3年ぶりの競技会だった。 「緊張や不安もありましたが、試合になったら集中して一つ一つのエレメンツをこなすことができました。練習してきたことは出せたので、自信にもつながりました」 予選会は136・74点で3位。12月の全日本選手権は4位だったが、144・41点と得点を伸ばした。 一方の西山選手も「梨花ちゃんから学ぶことばかりでした」と話す。 リンク外では競技のことをあまり考えないようにしていたというが、紀平選手は食事や睡眠、空き時間の過ごし方に至るまで、全てスケートのために行動していた。 「常に競技のことを考えて生活していて。自分もそうしないといけない、それが頂点への近道なのかなと思いました」「りかしん、今年が1年目」 日本でつかの間のオフを過ごした2人は6月下旬、拠点のモントリオールに戻った。既に新プログラムも固まっており、今後はシーズンに向けての準備を本格的に進めていく。 次の五輪までの4年間を占う重要な26~27年シーズン、2人は4大陸選手権などの国際大会への出場を大きな目標に据えた。「りかしん」こと紀平梨花選手(左)、西山真瑚選手組=ボーディングブリッジ提供 紀平選手は「昨季からとても上達しており、自分たちの演技を見せられると思う。楽しみな気持ちと、しっかりと成績を残したい気持ちがある」。西山選手も「成長した部分をお見せしたい。しっかりと練習を積んで演技を披露するのは今年が初めてなので、『りかしん、今年が1年目』くらいの気持ちで、チャレンジャー精神で戦いたい」と意気込む。 ここが2人のスタートライン。支え合い、高め合いながら、夢の舞台へ駆け上がっていく。関連記事【最新記事】