河村和徳・拓殖大教授=本人提供 「大阪都構想」の制度を取りまとめる大阪府・市による法定協議会(法定協)では、大阪市廃止後に設置される四つの特別区の議員定数も議論のテーマだ。 法定協に唯一参加している大阪維新の会は党内で、来春の統一地方選で適用される大阪市議会の定数を踏襲し、4区で計70とする方針を確認した。Advertisement 特別区ごとの人口約52万~88万人に対し定数が13~22になる計算で、人口規模が同じ他の自治体に比べて議員が極端に少なくなる可能性がある。 自治体にふさわしい議員数について、どう考えればいいのか。 地方議会や選挙に詳しい河村和徳・拓殖大教授(政治学)に聞いた。【聞き手・加藤明子】 ――維新は特別区の議員定数について、来春の統一選で適用される定数を踏襲して計70とする方針です。24行政区の定数を特別区ごとに割り振った形が考えられます。 ◆まずは特別区の位置づけを考える必要があります。大阪市議会の議場=大阪市北区で2026年5月27日午後3時23分、長沼辰哉撮影 大阪府がほとんどの決定権を持ち、特別区の意思決定に口を挟めるようにするのか、それとも基礎自治体として独立性を持たせるのか。特別区の理念や制度設計によって、ふさわしい議会の形は変わるからです。 それにもかかわらず、議員定数だけ単純計算で事実上決めてしまうのは順番が逆です。 都構想で新たにできる大阪の特別区は、東京23区のような基礎自治体と言えるのでしょうか。机上の空論と言わざるを得ません。 ――本来はどうあるべきでしょうか。 ◆都構想が東京都をモデルとするなら、特別区の議員定数は東京23区にならうべきです。 例えば、大阪の特別区の「第4区(仮称)」は人口約88万人。世田谷区(約92万人)とほぼ同じです。 世田谷区議会は定数が50です。企画総務▽区民生活▽福祉保健▽都市整備▽文教――の五つの常任委員会(各10人)と議会運営委員会(15人)があります。 大阪の特別区より小規模な人口約35万人の新宿区の区議会でも4常任委員会(各9~10人)と議運(12人)があり、定数は38です。大阪都構想の制度案が議論されている法定協議会=大阪市北区で2026年6月12日午後1時12分、西村剛撮影 定数の多い議会は本会議に先立ち、少人数で集中的に議論する委員会制を敷いています。多様な民意を反映するために委員会の数が多くなり、おのずと議員も増えます。 都構想が実現すれば大阪市は特別区に分割されますが、その特別区の人口規模は政令市並みの平均約70万人です。各区の多様な民意を拾うには、大阪市単体の時よりも議員の合計は大幅に増えるはずなのです。 維新は「身を切る改革」を掲げてきた以上、定数を増やすとは言えず、自縄自縛に陥っているようにみえます。 ――維新はなぜ定数にこだわるのでしょうか。 ◆維新は自民党をはじめとした既存政党や、自治体と労働組合の癒着をたたくことで集票してきました。その象徴が議員定数削減です。 国政政党・日本維新の会が主導する衆院議員定数の1割削減も同じ発想です。「議員の数を減らすことを住民は望んでいる。反対するのは守旧派だ」というレッテルを貼り、議論を単純化しすぎています。 ちょうど大阪府・大阪市は最先端技術を積極的に活用するスーパーシティ型国家戦略特区に指定されています。 それに絡めれば、都構想における定数の議論は、人工知能(AI)やデジタル技術をどこまで利用できるのか、将来の議会のあり方を探る機会にもなりえます。 それは維新にとっても「身を切る改革」に即した議会を一から作るチャンスとも言えるのです。 その分、議会のあるべき姿についての議論や丁寧な説明が必要なのですが、それが欠けているのではないでしょうか。