総合地球環境学研究所所長の山極寿一さん=京都市北区で2026年10月1日、梅田麻衣子撮影 「久しぶり。もう引退しようと思うんだ」。10月初めに総合地球環境学研究所(京都市)の所長室を訪ねると、山極寿一さん(74)が低い声を響かせた。 ゴリラの生態から人類の起源を探ってきた。日本の霊長類学の泰斗である。2021年から務める所長職は来春で交代らしい。先例にならえば、あと2年は続けられる。次の要職に移るのかと思ったら引退とは……。 ロングインタビュー企画「この国はどこへ行こうとしているのか」。これまでの記事はこちらで読めます。社交を学ばぬ子どもたち 不意を突かれて気になるが、まずは本題から。論じてもらうのは「人工知能(AI)と学び」である。長いお付き合いだが、こうしてテーマを提案されるのは初めて。最近の講演や対談はAIに関する発言が目立つ。頼まれるから話す場合が多い、というだけではなさそうだ。 「強い危機感があります。人間が機械になりつつあるから」 山極さんが切り出した。AIの暴走や悪用を危ぶむ人は少なくないが、人間が機械に? すると、専門である霊長類の進化を例に話を続けた。 「サルはね、向かい合うと互いの強弱を決めます。強い方が優先権を持って、あつれきを防ぐ。対面の時間は長く続きません。類人猿のゴリラやチンパンジーは向かい合って相手の意図を探り合います。対面の時間が長い。人類も対面して会話や表情、仕草などで感情のやり取りをします。白目があるのも人類の特徴で、目の細かな動きから相手の気持ちを推察できます」 ところが、現代の子どもたちは画面に向かう時間が長くなっている。こども家庭庁の昨年の調査によると、高校生のインターネット利用時間は平日平均で6時間44分と過去最長に。半数弱が生成AIを使っているという。反比例するように、人に向き合う「社交」を学ぶ機会が減っていく。「これが一番まずい」と山極さんは強調する。 「人間の社会的認知能力は25歳ごろまでに完成します。我々が映画や劇を見て楽しめるのは、登場人物の…Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。【前の記事】ミスター岩波が憂う台湾有事 対話が途絶えたとき戦争は始まる関連記事