観測機器を建物に運び込む「富士山測候所を活用する会」の研究者やスタッフら。右手前は早稲田大の大河内博教授=富士山頂で2024年7月23日、手塚耕一郎撮影写真一覧 富士山頂に建つ気象庁の旧富士山測候所を利用し、さまざまな研究活動を行うために設立された認定NPO法人「富士山測候所を活用する会」が、設立20周年を迎えた。近年は高層での「マイクロプラスチック」の研究などで国際的にも注目されている。 独立峰の富士山頂は、地表の影響を受けず自由に空気が流れる高度にある「自由対流圏」の大気を直接調べられる貴重な場所だ。大陸から飛来する大気汚染物質なども直接観測でき、大気化学など多くの研究者が注目する。Advertisement富士山頂剣ケ峰に建つ旧富士山測候所。夏山登山の最盛期には山頂で記念撮影するため大勢の登山者が行列する=2024年8月10日、本社ヘリから手塚耕一郎撮影写真一覧 富士山測候所は富士山頂の剣ケ峰(標高3776メートル)に建ち、かつては「台風のとりで」とも呼ばれた気象レーダーが設置されていた。レーダーの運用が1999年に終了し、有人気象観測も2004年に終了した。現在は富士山特別地域気象観測所として自動での気象観測のみが行われている。 活用する会は、この日本最高所に建つ施設を気象庁から借り受け、研究活動に生かそうと設立された。会にはさまざまな大学や研究機関の研究者、企業などが携わり、06年にNPO法人の認定を受けた。富士山測候所の建物脇で、大気を集める装置を準備する早稲田大の大河内博教授(左)と研究メンバー=富士山頂で2024年7月23日、手塚耕一郎撮影写真一覧 23年には、早稲田大の大河内博教授(61)のグループが世界で初めて、雲粒中のマイクロプラスチックを検出・分析して論文を発表した。10月末に開催された20周年記念講演会で、大河内教授は「富士山頂での大気観測によって、マイクロプラスチックが国境を越えて地球の大気を循環していることが明らかになってきた。また各地での観測から、東南アジアがマイクロプラスチックの地球規模の発生源になっている可能性がある」と研究について語った。「富士山測候所を活用する会」の設立20周年記念講演会でマイクロプラスチックの研究について語る早稲田大の大河内博教授=東京都千代田区で2026年10月31日、手塚耕一郎撮影写真一覧 この20年で、測候所の利用者は延べ7500人近くに上る。大気化学や気象学以外にも、永久凍土や生態学、火山監視、高所医学、雷や放射線の研究、通信技術試験などさまざまな分野での利用が進められている。分野の異なる研究者同士のコミュニケーションから、新たな研究のテーマが生まれることもある。「富士山測候所を活用する会」の設立に奔走した土器屋由紀子理事(江戸川大名誉教授)=東京都千代田区で2026年10月31日、手塚耕一郎撮影写真一覧 会の設立に尽力した江戸川大の土器屋由紀子名誉教授(87)は「最初は5年続けばと言っていたのが20年も続いた。これからはもっと若い人にも加わってほしい」と活動の未来を語る。 研究活動が広がる一方で、建設から60年を超える施設は、老朽化との闘いにもなっている。建物には雨漏りが生じ、山麓(さんろく)から延びる埋設された高圧送電線は、更新に莫大(ばくだい)な費用がかかる。 活用する会の三浦和彦理事長は「現在は施設の維持を研究費や寄付に頼っている状態。財政が厳しいNPOでは限界があり、将来的には官民一緒になって維持していくのが望ましい」と話した。【手塚耕一郎】Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。