「世界に書道文化を」 難局乗り越えてきた熊野筆、地元の願い

Wait 5 sec.

書道に興味を持つ若者が増えることを願う熊野筆の伝統工芸士、香川緑さん=広島県熊野町の「仿古堂」で2026年10月19日午後2時15分、山本尚美撮影 筆の生産で国内シェア8割を誇る広島県熊野町でも、関係者が登録勧告を歓迎した。細部にまでこだわった熊野筆は日本の書道文化を支えている。 熊野筆事業協同組合の城本健司理事(65)は「登録されれば国内外に熊野筆をアピールする絶好のチャンスになる。官民一体となって世界に書道文化を伝えていけたら」と期待に声を弾ませた。12月4~17日に東京都内で熊野筆の展示販売イベントを開催することにしている。Advertisement 熊野町と筆の関わりは、江戸時代末期の農閑期に農家が奈良で仕入れた筆を西日本各地で行商したのが始まりとされ、次第に生産も盛んになった。昭和初期には一大産地に発展し、1975年に国の伝統工芸品に認定された。 同組合によると、町内には「筆司」と呼ばれる筆職人が約1500人、国の伝統工芸士も11人いる。毎年9月に開催する「筆まつり」には、筆の販売や書家の揮毫(きごう)を目当てに多くの人が訪れる。化粧筆が事業の柱に熊野筆を手にする伝統工芸士の香川緑さん=広島県熊野町で2026年10月18日、山本尚美撮影 一方で難局もあった。戦後、学校で毛筆教育が減って筆の需要が激減。変革に迫られ、高い技術を生かして化粧筆の生産に乗り出した。繊細な筆先と肌当たりの良さが評判となり、世界のハイブランドなどが商品に採用するように。今では化粧筆は毛筆に代わる事業の柱に育った。 近年は筆司の高齢化と後継者不足による技術の継承が課題だ。町内にある1900年創業の「仿古堂(ほうこどう)」で働く伝統工芸士の香川緑さん(82)は「登録をきっかけに書道に興味を持つ若い人が増えたらいい」と期待。同社の丹羽宏会長(86)は「熊野を筆の生産地として残したい」と決意を新たにした。【山本尚美】Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。関連記事