宮田製菓の「ヤングドーナツ」=梅田麻衣子撮影写真一覧 駄菓子屋さんで定番のドーナツといえば「ヤングドーナツ」。直径4センチほどの小さいドーナツが、4個並んでパッケージに入っている。商品としては1個でも十分なのに、4個も入っているのはどうして? 製造する宮田製菓(岐阜県各務原市)に聞いてみた。新工場を造るたびに何かが… 改めて「ヤングドーナツ」を食べた。ソフトな生地に、砂糖のジャリッとした食感が楽しい。脂っこくないので、4個ペロッと食べられる。Advertisement「ヤングドーナツ」の表面には砂糖がまぶされており、ジャリッとした食感が楽しめる=梅田麻衣子撮影写真一覧 宮田製菓は1950年、菓子メーカーや問屋が集まる名古屋市中村区で、宮田正直さんが創業。最初はキャラメルを作っていた。「今もキャラメルを製造していますよね」と尋ねると、営業開発部長の池田和陽さんが「そうなんです。でも、今では売り上げの75%はドーナツなんですよ」と教えてくれた。 ドーナツの製造を始めたのは71年で、ちょうど日本にドーナツチェーン店ができ始めたころ。その2年前の69年、愛知県大口町に新工場を構えたこともあり、事業拡大の一環で「あんドーナツ」の製造を始めた。73年には「ヤングドーナツ」の原形とされる、大袋に入ったファミリー向けの「ハニードーナツ」を売り出す。 さらに89年、岐阜県各務原市に新工場が完成。そこで、主流だったファミリー向けではなく、「小さい子でも、お小遣いで買えるような商品を作ろう」ということになった。「新工場を造るたびに、何かが起きるんです」と、同席してくれた業務統括部次長・大堀義貴さんが笑う。当時はナウかった「ヤング」 商品化にあたり、小さなドーナツを個包装にせず、トレーに並べることで価格を抑えることにした。何で4個も入れてくれたんですか? 「それがね、正直分からないんですよ」と池田さん、申し訳なさそう。でも味の良さと、30円(当時)で4個入りというお得感が、子どものハートを捉えた。宮田製菓の「ヤングドーナツ」。箱やパッケージに描かれているのが「ヤングくん」=梅田麻衣子撮影写真一覧 ところで「ヤング」という言葉、今も使いますが、ちょっとした懐かしさを感じます。「『小さい』『子どもでも食べやすい』というニュアンスを込めて、当時盛んに使われていた『ヤング』とつけたんです」と池田さん。なるほど、当時のナウい言葉だったんですね。 小麦粉や牛乳、はちみつなどシンプルな材料を使用し、周囲にまぶした砂糖の「ジャリッと感」も大切にしている。こだわっているのが鮮度。製造してから問屋を経由し、小売店に届くまで1週間程度かかる。賞味期限は製造から80日後に設定しているが、時間がたつと風味や食感が変わってしまう恐れがある。「鮮度の良いものをお客さんに届けたい」(大堀さん)と、最低限の在庫しか持たないのもこだわりだ。「一日一日が勝負なんです」と大堀さんは話す。出荷量倍増のわけ 出荷量は2021年時点で年間2000万袋。その数字に驚いていたら、25年には何と4300万袋と2倍以上に。その要因の一つが、アミューズメント施設の景品としての需要が増えたこと。「袋だけでなく、20袋入りの箱ごとでもクレーンゲームなどに使っていただいています」と池田さんが説明してくれた。アミューズメント施設の景品としても人気の「ヤングドーナツ」=大阪府門真市の「namcoららぽーと門真店」で、水津聡子撮影写真一覧 実際にアミューズメント施設で、積み上げた「ヤングドーナツ」の山を崩すゲームに挑戦してみたが、うまく落とせなかった。うーん、大量ゲットしてみたい。これは意地になりそう……。 もちろん、地道にファンも開拓している。地元の祭りや学生のイベントなどに協賛して「ヤングドーナツ」を提供している。「子どもさんに食べてもらうことで、次世代のファンを増やしたい」と池田さん。以前、ゴミ拾いのイベントに参加した学生を対象にアンケートをとったところ、90%が「ヤングドーナツを食べたことがある」と回答した。「これを100%にしたいんです」と意気込む。分け合えば笑顔の輪 原料費や包装資材の高騰で値上げせざるを得なかったが、それでも現在1袋58円(税抜き)。同じ価格帯で売っているドーナツ、あまり見かけませんね。機械化による人件費節減など、さまざまな努力を重ねて、子どもでも買える価格を維持しているのだ。 同社の信条は「おいしい!が原点です」。池田さんは「『ヤングドーナツ』の知名度と宮田製菓の名前がもっと結びつくとうれしいです。そして、宮田製菓が作っているから大丈夫、安心と思ってもらえるお菓子作りを、これからも続けていきたい」と語る。4個入っていれば、1人のおやつはもちろん、友達と分け合って食べることができる。「ヤングドーナツ」が4個入りなのは、笑顔の輪を広げるためなのかもしれない。(左から)「クルーラードーナツ」「ごろりんぐドーナツ」「牛乳ドーナツ」=梅田麻衣子撮影写真一覧意外にアダルト?「ヤングくん」 「ヤングドーナツ」のキャラクター「ヤングくん」は、くりくりした目とちょろっと出した舌がかわいい。宮田製菓の通販サイトでは、ストラップやタオルも販売されている。「ヤングくん」の誕生時期や経緯について、会社に正式な記録は残っていないが、今やさまざまなコラボ商品もある人気者だ。1989年生まれで今年で37歳。ん、思っていたよりアダルト……。 同社の袋入りドーナツには、10月からヤングくんの「仲間」が登場している。「牛乳ドーナツ」の「ビッグくん」、「クルーラードーナツ」の「クルーラーくん」は、ドーナツのような見た目。温めて食べてもおいしい、新発売の「ごろりんぐドーナツ」には、「りんぐる」というキャラクターが描かれている。動物のように見えますが……。「ドーナツ好きの謎の生命体なんです」と池田さん。友達の輪も広がりましたね。【水津聡子】Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。関連記事