好天に恵まれて理想的に成長し、たわわに実って収穫を待つ稲穂=滋賀県東近江市で2026年8月18日午後4時15分、奥村隆撮影 収穫の秋。農家が最も幸福を感じる季節だ。今年の米は全国的に豊作傾向だが、国際情勢の影響もあって農業資材の価格高騰が続く。一方、米価は記録的に値下がり中。そんな中、滋賀県で営農する私の父(86)は、近年にない収量を記録した。そして、ファーマー生活70年で初めての「大冒険」に出ようとしている――。 記者が実家の米作りを手伝いながら、これからの農業について考えます。 <関連記事> ・実家の田んぼ、40年ぶり手伝い 老父と探る持続可能性 ・米の増産どこへやら 故郷で田植え、記者が感じる「祭り」のあと好天に恵まれ「ええ感じ」 「台風にさえ直撃されんかったら大豊作になるで」。田園一帯が黄金色に輝き始めた8月、田んぼを見回る父は、かなり手応えを感じていた。「これはもう1等米やな」 春の田植え以降、好天に恵まれ、かといって日照りの時は涙を流すほどは長く続かず、おろおろ歩くしかない寒さの夏とも無縁だった。昨年のような猛暑に見舞われず、高温障害が起きなかったため、稲穂は粒が多く、一粒一粒が大きく実っていた。 「ええ感じですなあ」。あぜ道を通りかかった年配の男性が軽トラックを止め、話しかけてきた。農機メーカーの地域担当者だ。 父が使っているトラクターや田植え機は他社製品。なのに巡回中に立ち寄って機械を調整してくれたり、有益な助言をしてくれたり。父は養鶏小屋から卵を持ってきて手渡す。通貨無用、財とサービスの物々交換である。ささやかな持続可能性を感じる。 8月15日、中学校の同窓会があった。ホテルの大広間に男女約40人が集合。卒業以来初めて出席した私にとっては45年ぶりに再会する人ばかりだ。隣席に少年野球のエースみたいな還暦男性。川西正範君だ。こんがり日焼けして、高気圧と太陽のにおいがする。 「会社辞めて農業と造園を始めたんや。せっかく農地があったし。外で体を動かすのは気分ええで」。正範君は、小学生だった頃とまったく同じ笑顔で楽しそうに話す。仲間と一緒に試行錯誤して仕事中らしい。うなずきながら耳を傾けている級友たちは、彼の再スタートをことほいでいる様子。なんと気持ちのいい連中だろう。大規模化でいいのか 定年後のUターン就農は、一定規模以上でないと収支が合わないとされる。とはいえ、零細農家をどんどん離農させ、大規模に耕作する「担い手」に集中させるだけでいいのか。大地主が独占していた土地を小作農に分け与えた戦後の農地解放の逆コースとなってしまわないか。「農の寡占」「食料安全保障の一極集中」の問題はないか。 「日本人は農耕民族ですよ。でも米…Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。関連記事