記者会見を開き、ヘレン・ヘインズ議員が両脚を切断したことを明らかにする夫=オーストラリア南東部メルボルンで2026年10月21日、AAP・ロイター オーストラリアで今週、女性政治家を巡る暴力や脅迫事件が相次いだ。連邦下院議員が車で故意にはねられたとみられる事件が発生。別の地方議員の事務所に武器を持って現れた男が脅迫の疑いで訴追された。一連の事件を受け、女性政治家が直面する暴力や性的な嫌がらせを懸念する声が上がっている。 地元メディアによると、南東部ビクトリア州で19日、連邦下院議員のヘレン・ヘインズ氏(65)が事務所近くで車にはねられた。車はいったん同氏に衝突した後、後退して再びぶつかったという。同氏は両脚の切断を余儀なくされ、重体となっている。Advertisement 警察は運転していた男(43)を逮捕し、車内から刃物を発見した。ヘインズ氏を意図的に狙ったとみられるが、詳しい動機は明らかになっていない。ヘレン・ヘインズ議員の事務所に花を置く支援者=オーストラリア南東部ビクトリア州で2026年10月20日、AAP・AP 21日には西オーストラリア州で州議員の事務所にヌンチャクを所持した男(56)が現れた。議員は当時不在で、けが人はいなかった。男はその後、脅迫や武器所持の疑いなどで訴追された。 アルバニージー首相は21日、豪公共放送ABCのラジオ番組で、事件に衝撃を受け、多くの議員が動揺していると述べた。政治姿勢の違いから相手に攻撃的になる傾向が強まっているとし、「政治的な対立の熱を冷ます責任は、私たち全員にある」と訴えた。 こうした中、女性政治家が直面する脅威に関心が集まっている。モスティン連邦総督は22日、ABCで「女性が社会の指導的立場に立つと、性別に基づく特有の悪質な攻撃にさらされる」と指摘。自身もオンライン上で中傷が続いていると明かし、「全国の女性は、女性にだけ向けられる特有の攻撃があることを知っている」と語った。 豪人権委員会のアンナ・コーディ性差別担当委員も21日、「オンライン上の攻撃が現実になり始めている」と警告した上で、「豪州で公職に就く女性で、脅迫を受けたことがない人はいないと思う」と語った。女性は男性に比べ、性的な嫌がらせを含む脅迫や攻撃を受けやすいとし、女性の政治参加の妨げにもなっていると訴えた。 豪民間団体が今年8月に公表した調査によると、女性の議員や立候補経験者らの約9割が、政治活動に関連しオンライン上で嫌がらせや脅迫を受けた。さらに半数がこれらを理由に、政治活動の継続などに疑問を持っていたという。 一方、ヘインズ氏への共感の輪が広がる。夫が事件後、ヘインズ氏が長年関心を持っていた国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」への寄付を呼びかけたところ、24時間で40万豪ドル(約4400万円)を超える寄付が集まった。NGOの代表者は「一人の人物をきっかけに、これほどの寄付が集まるのは見たことがない」と驚きを示した。【バンコク国本愛】Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。