立ち止まり、疑って、「ゆっくり急げ」 ヤマザキマリさんの格言

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ヤマザキマリさん=ノザワヒロミチ撮影 Festina Lente――。 直訳すると「ゆっくり急げ」。ラテン語の格言だ。物事を進める時は、焦らず慎重に。日本語なら「急がば回れ」。 ヤマザキマリさんは、古今東西、大切にされてきたこの教えを、最新刊のタイトルに選んだ。 移り変わりの激しい現代社会。少しでも変化に乗り遅れると、人々はたちまち「浦島太郎」になってしまう。 「でもね」とヤマザキさんは言う。 「私は、急に自分がおじいさんになって『あら、おしまい』ではなく、『なぜおじいさんに?』『この間に何があった』と知りたい」 『ゆっくり急げ』(中公新書ラクレ)は、そんなヤマザキさんが今、思うことをつづったエッセー集。新型コロナウイルス禍、最愛の人との別れ、長年の海外生活で得た知見……。漫画家生活30年、平たんな道を通ってはこなかったヤマザキさんだからこその言葉が紡がれる。前さえ向いていれば、と言われても 2019年1月~25年11月に「婦人公論」で連載したエッセー66編を収めた。 冒頭でヤマザキさんは書く。 <決して時代の移り変わりに腹を立てているわけではない> <前さえ向いて進んでいればいい、と言われても、どうしても立ち止まって後ろも確認したくなる> タイトルについては、「目的地に向かってそれなりの歩調で進んではいるけれど、見るべき所は見て止まりたい。考えたい。そして後ろも振り返りたい。過去に起きたことも知りたい。そこは省略できないよ、という意味を含んでいます」と説明する。 立ち止まって考えたいことの一つが、現代社会の寛容性のなさだという。 コロナ禍で発生した「自粛警察」や「正義中毒」という言葉。「寛容性を持たない、ある種の一つの正義にすがりつく生き方がある」と危機感を語る。 急速に普及する人工知能(AI)との向き合い方にも、警鐘を鳴らす。 尋ねれば瞬時に回答が返ってくる便利な存在だが、試行錯誤を繰り返し、自分で考察するという過程を飛ばせば、想像力は枯渇する。 「考えることを放棄し、他の何かに神様のようにすがることを良しとするような世の中を、私は一番の恐怖と感じます。脳を鍛えないと人間は何の意味も持たない生き物になるような気がしてしまう。あらゆるものに懐疑心を稼働させなくてはいけない」 ヤマザキさんは、『テルマエ・ロマエ』連載終了から11年後の24年、『続テルマエ・ロマエ』の連載を開始。本書では、その背景に<殺伐とした現代の社会情勢>があったと明かす。予定調和の人生はつまらない 17年から約7年間、毎日新聞で「人生相談」の回答者を務めた。180通を超える相談と向き合う中で見えてきたものについても、本書にはつづられている。 母親と似ているのが嫌。孤独死したらどうしよう。幸せな人を見るとつらい……。 投稿者の悩みの根幹には、思い通りにならない現状への不満や不安が渦巻いていた。 「予定調和にしがみつきすぎているのと、世間が推す一つの定義や理想型というものを信じ込みすぎている。人間というのは100通りの生き方があるのに、…Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。関連記事