「輪島市櫛比の庄 禅の里交流館」を訪問し、スタッフから花壇の説明を受けられる秋篠宮妃紀子さま=石川県輪島市で2026年7月23日午前10時52分(代表撮影) 秋篠宮妃紀子さまは60歳の誕生日に合わせ、宮内記者会の質問に文書で回答されました。質問と回答の全文を三つに分けて紹介します。㊥では、この1年で印象に残ったこと、今後の抱負などについての回答を紹介します。<この1年で印象に残った出来事> この1年の間、印象に残った出来事が幾つもありました。各地で出会った若い人たちの活躍する姿、東京国際ろう芸術祭と東京2025デフリンピック、地域の暮らしを支える方々や、生命と健康を守る方々との出会い、日本人移住90周年にあたり訪問したパラグアイと日本との絆。これらのほか、ふりかえって心に残った出来事をお伝えしたいと思います。Advertisement ~若い人たちの活躍~ 今年も中学生・高校生や大学生など、若い人たちのみずみずしい発想や熱意にふれる機会が度々ありました。積極的に新しいことを学び、問題意識をもって課題に取り組み、芸術やスポーツで活躍し、伝統芸能をしっかり受け継ぐなど、さまざまな形で活躍する若い人たちに出会うたびにエールを送り、私に何かできることがあったらと思いました。 昨年11月に訪れた東京都清瀬市では、「清瀬結核アンバサダー」として活動する中高生たちが、自分たちの暮らす地域に多くの結核療養所があった歴史を学んで考えたことを発表し、清瀬で感染症対策を学ぶ海外からの研修生とも積極的に英語で意見交換する姿に、結核予防会の仕事に携わる一人としてうれしさを覚えました。また、7月に鳥取県で開催された「第62回献血運動推進全国大会」では、献血の広報活動をおこなう高校生と大学生が、献血を分かりやすく紹介する4コマ漫画で協力を呼びかけており、心強く思いました。全国から高校生が参加する「高校生ボランティア・アワード」では、ごみ対策や自然保護、手話でのコミュニケーションづくり、高齢者の見守りや特殊詐欺被害防止、防災活動など、想像を超えた広範囲にわたる内容についてグループや個人のボランティアが発表をおこない、若い人たちの発想力と行動力を感じました。 今年の夏に秋田県で開催された「第50回全国高等学校総合文化祭」と近畿地方の6府県と北海道、福島県で開催された「令和8年度全国高等学校総合体育大会」では、高校生たちが豊かに表現する世界や、集中力を高めて競技に挑戦する様子に直接ふれることができました。大会の運営などにあたる高校生たちの言葉や、きびきびした動きも印象に残っています。 伝統芸能を継承する取り組みとして、鳥取県では、高校生が先輩の指導の下で練習する荒神神楽「八重垣能」の舞やおはやし、そして秋田県では「竿燈まつり」に向けて高校生たちが稽古(けいこ)する演技を見聞きする機会がありました。少子化が進む中で、地域で大切に守られてきた伝統芸能を次世代につなげようと努力を続ける人々の思いと、その文化に関心を持ち習得に励む若い世代の存在に励まされる思いでした。 ~東京国際ろう芸術祭と東京2025デフリンピック~ 昨年の11月には、ろうの方々が表現する豊かな芸術にふれ、世界からデフアスリートが参加したスポーツの大会を間近で観戦することができました。このように芸術とスポーツという二つの分野でろう者の活躍にふれることができたことも印象深い出来事でした。 具体的には、11月上旬、ろう者が中心の企画・運営による「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」が開催され、想像をかきたてる演劇に時間を忘れ、飲食物や小物などを販売する「手話の市」では、手話での会話と買い物を共に楽しみました。若いろう者がスタッフとして活躍し、今後も3年に1度の開催を予定しているとのことで、次回を心待ちにしています。 また、11月中旬から開催された「第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025(東京2025デフリンピック)」では、77の国と地域からデフアスリートと支えるスタッフが日本に集まりました。水泳、バレーボールとオリエンテーリング競技を観戦し、若い選手たちやボランティアとして参加した筑波技術大学のろうの学生たちの活躍を頼もしく思いました。この大会をきっかけに、ろうの子どもたちがスポーツを楽しむ機会がさらに広がっていきましたらと思います。 ~地域の暮らしを支える方々、生命(いのち)と健康を守る方々にお会いして~ 結核予防会や母子愛育会での仕事などを通して、各地で地域の人々の健康と暮らしを支える医療関係者、行政関係者、さらにボランティア活動を続けている方々にお会いする機会が数多くあります。日ごろの業務や活動に加えて、地震や豪雨などの被災地へいち早く赴き、支援活動を始めるお話や、自らも被災しながら支援者としての仕事を続けているお話を伺い、視野の広さや行動力、人々の心と身体を気遣う姿に感じ入ることも多くありました。 昨年の9月下旬、結核・呼吸器感染症予防週間の初日に札幌市を訪れ、北海道結核予防会が協力しておこなう住民健診の会場を見学しました。その折に、医師や看護師、診療放射線技師、事務スタッフがチームとなり、大型の検診車と共に広い道内の会場を巡回するための工夫をしていることや、冬の低温から検査機器を守るための管理の方法を考えていること、地域の気候や生活などを考慮しながら健診の時期や時間を決めていることをお聞きし、医療や保健の仕事に携わる方々の努力の一端にふれることができました。 また、一昨年に引き続き、結核予防会が協力しておこなっている地域住民の特定健診の機会に能登半島を訪ねました。昨年11月には震災後半年以上避難所として利用されていた七尾市矢田郷地区のコミュニティーセンターを、今年の7月には震災後およそ1年間地元の高校の校舎として利用されていた輪島市の門前公民館を訪れて、それぞれ健診会場の設営のお手伝いをしたあと、健診に従事する関係者と懇談し、地域の人々の健康づくりに向けた思いについてお聞きしました。 被災から時がたちましたが、人々の生活を再建することの難しさや心と身体の健康を保つ難しさに直面しながら、高齢者や子どもたちなど配慮の必要な人々の孤立をふせぎ、お互いに助け合うことのできるコミュニティーづくりに励んでいる方にもお会いし、そうした活動の大切さを、訪ねるたびに感じています。 輪島市では、こうした課題に若い世代の人たちが取り組んでいます。その一つ、地元の小児科医たちの活動にふれる機会がありました。乳幼児やその母親が参加する集いで一緒にお食事をしたり、絵本を読んだりした後、小学生から高校生までがすごせる子どもの居場所を訪ねて、楽しく遊び、勉強する様子を見学しました。また、福岡市で始まった「一人一花運動」が能登半島にも広がっており、その一つ、輪島市門前地区の資料館前の花壇では、高齢者にとって花の世話をすることが家から出るきっかけになり、新しい出会いの場にもなっていると町おこしの若いリーダーから聞きました。地震で大きな被害を受けてから2年半以上がたったいま、若い世代の積極的な活動により、地域のコミュニティーづくりや復興の取り組みが進められている様子をとてもうれしく思いました。 地域や時間をこえて災害の経験と記憶を共有し、防災・減災を目指して熱心に活動する方々に出会う機会もありました。 昨年11月には、悠仁と一緒に伊豆大島を訪れ、平成25(2013)年の台風26号による土砂災害について語り部のお話を伺い、慰霊碑に供花をしました。島内の伊豆大島ミュージアム ジオノスでは、昭和61(1986)年の三原山の噴火を中心に、防災対策や防災教育のための展示も見学し、日本に数多くある火山と共に生活するために必要な知識や行動について考えさせられました。 今年4月に出席した、地域の子育て支援などをする愛育班員と保健師が東京に集う「愛育班員全国大会」では、愛育班員であり防災士でもある方から、赤ちゃんや子どものいる家族のための防災マニュアルや、家庭内での事故防止のパンフレットを作成し、配布する活動について発表を聞きました。また、奥能登を訪ねた際に、石川県助産師会の活動について伺ったときには、防災士の視点から、妊産婦に配慮した避難所の運営や地元のニーズにあった防災グッズの備えなどを工夫できることについてもお聞きしました。 別の訪問先で、津波避難タワーなど防災のための施設や、被災の記憶を伝える施設などを見学することもありました。こうしたこともあって、以前から関心を持っていた防災について理解を深めたい気持ちが強くなり、一緒に仕事をしている人たちと共に、防災の講習に参加しました。また、宮邸の防災用品をおさめている備品庫の中を宮さまとご一緒に点検し、古くなり入れ替えが必要な品目などについて職員と相談しました。 先週9月1日の防災の日には、私たちが暮らす赤坂の地域を所管する赤坂消防署と皇宮警察赤坂護衛署による赤坂御用地内の防災訓練がおこなわれました。職員と共に講習や消火訓練、AEDの使い方の訓練に参加し、起震車で地震の揺れを体験しました。この防災訓練には子どもたちが幼い頃に一緒に参加したこともありましたが、今回いらした消防署の方がそのことを覚えていて、懐かしそうに話してくださいました。今後も日ごろから、家庭でも職場でも防災について話し合い、理解を深め、できることから行動に移していくことができればと考えております。 ~日本人移住90周年にあたり訪問したパラグアイと日本の絆~秋篠宮ご夫妻は2026年8月26日、政府専用機で羽田空港に到着し、公式訪問先のパラグアイから帰国された=代表撮影 日本人移住90周年の機会に宮さまとご一緒にパラグアイを訪れました。私が訪れるのは初めてのことで、皆さまにあたたかく迎えていただきましたことを大変ありがたくうれしく思います。 現地では、日本とゆかりのある方々、日本人移住者や日系人の皆さまのさまざまなお話を伺いました。最初に日本人が移住したラコルメナを訪れ、90年の間に亡くなられた方々へ慰霊のお花をささげた際には、この地になじんでいかれるまでのご苦労に思いをはせ、互いに助け合いながら日系人社会を家族のように築いてこられたことに敬意を抱きました。日本人移住者と日系人がパラグアイで暮らす中でも、日本の文化を誇りに思い、日本との間に心の懸け橋をかけ続けてくださったことも伝わってきました。 パラグアイ日本人移住90周年記念祝賀会では、アスンシオンの四つの学校の子どもたちが90周年の記念の曲「90年目の春」と唱歌「ふるさと」の合唱を披露してくださいました。パラグアイの子どもたちの中には合唱をするのが初めての人もいて、練習を繰り返しながら、声を合わせたと聞きました。当日はすばらしい歌声で、心が震えたことを思い出します。 また、移住地では、日本語学校の先生方が日本の文化や言葉を子どもたちに伝えようと努力をされていることを知り、胸が熱くなりました。日本語学校は、移住してからすぐにつくられ、言葉と日本のことを学ぶ学校として活動を続けてきました。ラコルメナの学校に通う子どもたちからはお手紙をいただき、イグアスの学校で学ぶ子どもたちとは、宮さまはラパーチョ、私は桜を一緒に植樹しました。お会いした3人の校長先生が子どもたちに温かいまなざしを送りつつ、運動会やお祭りを催し、日本の心、感謝やおもてなしなどについても伝えていきたいとの熱い思いを語っていらしたことも、心動かされる出来事でした。 パラグアイの滞在中、伝統工芸であるニャンドゥティ、アオポイや陶芸、銀細工の制作の実演を見学し、伝統的な音楽のひとつであるグアラニアの演奏を鑑賞するなど、パラグアイの豊かな文化にふれ、活躍する職人や演奏家にお会いして貴重なお話を伺いました。訪問前にはじめた伝統のレース編み「ニャンドゥティ」をこれからも作り、パラグアイと日本で築かれてきた友情を一緒に紡いでいくことができればと思いました。 このほかにも、4月には国立看護大学校25周年記念式典に出席するため、創立時の式典でことばを述べて以来、久しぶりに大学校を訪ねました。その折に看護の歴史や教育について学び、看護師を志す方々とお話しする機会がありました。この25年間、専門的な知識と技術を学んだ数多くの卒業生が看護師、保健師として国内外の研究や実践の場で大きな役割を果たしていると聞いています。これからも看護師や保健師の活躍を期待しています。 また、4月に「がん患者さんが歌う 第九 チャリティーコンサート2026」を佳子と一緒に鑑賞し、7月には国指定難病である視神経脊髄(せきずい)炎の患者とそのご家族を支援するチャリティーコンサートを鑑賞し、それぞれ皆さまの歌声に感銘を受けました。このような催しを通して、疾病の当事者どうしのピアサポートのもつ力や、患者とその家族の日々の生活を支援すること、また疾病の治療の研究を進める医師や研究者を支援することの重要性が、多くの人々に伝わることを願っています。 最後になりますが、8月末にノルウェー前国王ハラルド5世陛下が崩御され、この度、ご葬儀に参列いたしました。今年の6月にホーコン皇太子殿下(当時)を宮邸にお迎えしたばかりでした。宮さまが英国にご滞在中にノルウェーを訪ねられた折、当時は皇太子でいらしたハラルド前国王陛下ご一家にあたたかく迎えていただいたお話を伺っており、とても残念に思っています。宮さまとともにおしのび申し上げております。 このように、さまざまな出来事があり、印象に残る1年でした。<自分のことや家族の健康について、どのように気を配っているか> 自分や家族の健康についてお尋ねいただき、還暦を迎えてのこれからのことを改めて考える機会になりました。 私たち、そして子どもたちの年齢と成長に合わせて、生活のよいリズムや体調を整えられるように心がけができればと思いながら、すごしてきました。家族でお互いの健康を気遣うことも、自分自身の健康を心がけることも大事だと思っています。 子どもたちが小さかったときは、こちらが世話をする方でしたが、子どもたちが成長した今は、佳子や悠仁が私たちの体調を気にかけてくれます。この前のパラグアイの訪問のときも、出発前や帰国してからの体調を気遣ってくれました。 昨年、還暦を迎えた宮さまとご一緒に、食生活や体力作りに心を配るようになりました。薬膳のことを教えてくれる友人がいて食材を工夫したり、ラジオ体操を毎日すると体調が分かるという知人の話も参考にしてみようかしらと考えたりしています。2人で健康に気遣いながらすごせたらと思い、散策したり、障害者スポーツ大会の折にいただいた手作りのストレッチ用の棒を使って体操したりして、体を整える時間をもつように意識しています。 引き続き家族とすごす時間を大事にしながら、健康面にも気をつけていきたいと思っております。<今後の抱負> 宮さまが還暦をお迎えになったときに、それまでの日々との連続性についてお話しになりました。この度、大きな節目の日を迎えましたが、これまでの積み重ねのもと、天皇、皇后両陛下をお支えしながら、一つ一つのお役目を大切に果たしていく努力を続けることができましたら、と思っております。 令和5(2023)年の誕生日のときにお伝えしましたように、今後も、子どもから高齢者までの健やかな暮らしを願い、生命(いのち)の尊さについて考える時間を大切にし、未来を創る子どもたちに思いをはせ、希望へとつながるような活動にも、関係者と一緒に携わっていきたいと考えております。 自然災害からの暮らしと心の復興に取り組み、妊産婦や子どもたちの居場所づくりなどに励まれる方々、さまざまな心のケアに携わる方々、これまでに知り合った方々とのつながりを大切に育んでいきたいと思っています。また、この数年、還暦を迎える年齢ということもあるからでしょうか、これからの世の中を担っていく、若い人たちの活躍にエールを送ることにも努めていきたい、という思いを強く持つようになりました。 自分自身もまだ知らないこと、新しく学ぶことが多くあるように思います。今年7月、滋賀県で扇子作りの工房を訪れた際に、扇子が完成するまで想像以上のたくさんの工程があり、各段階に関わる職人の思いが込められていることをはじめて知りました。 これからも新しく学ぶこと、学びを深めること、またクリエーティブな活動にも取り組むことができましたら、そして小さなことでも今できることをおこなえたらと思っております。