「赤福」と深い縁? 西から東へじわじわ「おにぎりせんべい」

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マスヤの「おにぎりせんべい」。さまざまなデザインや大きさがある=梅田麻衣子撮影写真一覧 新米がおいしい季節だ。遠足や運動会など、おにぎりを食べる機会も多い。「おにぎり」と聞いて思い浮かぶお菓子といえば「おにぎりせんべい」だろう。三角形のせんべいで、「おにせん」の愛称で親しまれている。私が生まれ育った大阪では、駄菓子屋さんやスーパーの定番商品なのだけど、実は認知度は「西高東低」なんだそう。本当? これは調べてみなくては。サクサク三角、ええじゃないか 「おにぎりせんべい」を製造・販売しているのは「マスヤ」(三重県伊勢市)。営業本部の矢土悟さんと松井智咲さんに聞いた。Advertisement マスヤは1965年、お伊勢参りの名物「赤福餅」で知られる「赤福」(1707年創業!)の10代目・浜田益嗣さんが設立した。生菓子の「赤福餅」は販売地域が限られているため、「全国で販売できる、日持ちがする商品で勝負したい」との思いからだった。 三重県には、伊勢神宮の参拝者の道中食として多くの名物餅があり、参宮街道は、別名「餅街道」と呼ばれるほど。新しく作るお菓子も、米を材料にしたせんべいに決まった。 そうして、最初に発売したのが「おにぎりせんべい」だった。いきなり「おにせん」なんですね。「発売は1969年で、会社創立から4年かかったんです」と矢土さんが教えてくれた。 こだわったのが、当時主流だった硬いせんべいではなく、サクサク軽い食感に仕上げること。「三角のおせんべいがあってもええじゃないか」との意見が出て、米で三角形という連想から「おにぎりせんべい」と名付けた。きれいに型抜きできず、試行錯誤を重ねた。だしのうまみをきかせたしょうゆ味に、香りの良い刻み焼きのりをかけた。ちなみに、のりの付け方は「社外秘」なんだそう。「おにぎりせんべい しょうゆ」=梅田麻衣子撮影写真一覧「47都道府県×100人」調査の衝撃 パッケージは日本の伝統である歌舞伎のどんちょうをイメージした。「発売当初は袋も三角形なんですよ」と松井さん。凝っていますね。当時は、流通網が今ほど発達しておらず、まずは地元の量販店に置いてもらった。それまでになかった形と後を引く味が受けて、たちまち人気商品に。その量販店が各地に出店するに従って「おにぎりせんべい」も販売地域を拡大していった。 しかし、今から15年ほど前にマスヤが行った「47都道府県おにぎりせんべい認知度調査」で、衝撃的な結果が出る。各都道府県で100人ずつに「おにぎりせんべいを知っているか」と聞いたところ、中部地方より西は認知度が100%近い府県が多いのに対し、東日本では認知度が低くなっている。東北地方では10%台のところも。当時、営業担当として東日本を回り、認知度調査にもかかわった矢土さんは「20年ほど前は、東日本で全然売れなかったんです」と話す。 なぜこんなに地域差が? 「流通上の理由はもちろんなのですが、調味料は地域で好みの差が出やすいのかなと思います」と、矢土さんは分析する。甘辛い味を好む関西や九州地方に対し、しょうゆらしいしょっぱさを好む関東・東北地方との差が出たのではないかとのこと。しかし、調査から十数年を経たいま、営業担当の努力や人の行き来などで、認知度の地域差は縮まっていると感じているそうだ。「おにぎりせんべい」のしょうゆ(左)と銀しゃり=梅田麻衣子撮影写真一覧食感、限定版、大きさ…楽しさ多彩 2012年には「おにぎりせんべい 銀しゃり」を発売した。こちらは、絶妙な塩味のサクサクしたせんべいだ。「塩」ではなく、おにぎりだから「銀しゃり」というネーミングがしゃれている。 粒の大きさが異なる2種類の塩を使い、シンプルながら奥行きのある味が楽しめる。気になっていたのですが、「しょうゆ」と「銀しゃり」、せんべい自体の食感が違いませんか? 「バレましたか」と、矢土さんニヤリ。銀しゃりの方が少し分厚く、米らしさを味わえる。アレルギー物質が大豆のみで、保育園などのおやつにも採用されている。 期間限定や季節限定で、さまざまな味も販売してきた。「柚子(ゆず)こしょう」「クリームシチュー」といったユニークなものや、「梅しそ」「和風カレー」など何度も登場する人気の味も。福岡を中心とする九州地方では、お土産用に「明太バター味」も販売されている。 「しょうゆ」には、大、小、PONの3種類の大きさがある。PONは「プチおにぎり」の略なのだそう。定番のおいしさを守りつつ、多様化するニーズへの対応や「子どもでも食べやすいように」などの配慮も忘れない。「『みんなが幸せになれる会社をつくりましょう』というのが、我が社のミッション。おいしさはもちろん、楽しさやワクワクも提供していきたい」と松井さんは話す。矢土さんは「飽きのこない、愛され続ける『本物』をこれからも追求したい」と夢を語る。まさに「実るほどこうべを垂れる稲穂かな」ですね。「ピケ8」=マスヤ提供写真一覧何者? 「クリスティーヌ」 「おにぎりせんべい」の「しょうゆ」と「銀しゃり」のファミリーパックは、個包装に間違い探しやパズルなどが描かれている。しょうゆは25種類、銀しゃりは10種類もあり、遊び心がうれしい。「デザイン担当者が凝ってくれていて」と矢土さん、どこか誇らしげだ。 「しょうゆ」のパッケージなどで、活躍しているキャラクターが「おにぎり坊や」と「クリスティーヌ」。えっ、クリスティーヌ? ちなみに夢は「ハリウッド女優」なんだそう。さらに「銀しゃり」のキャラクターは「しおのすけ」と「シャルロット」……あれ? どうして女の子は洋風のお名前なんですか? 「当時の社長がピンときて、命名したそうです」と矢土さんは明かす。 実は「おにぎりせんべい」にも洋風の仲間がいる。「おにぎりせんべい」の3年後輩、1972年に発売の「ピケ8(エイト)」という、塩バター味のせんべいだ。現在も東海地方を中心に販売されており、欧風をイメージしたタータンチェックのパッケージが目印になっている。 なるほど、和と洋でコンビ、ええじゃないか!ですね。【水津聡子】