ともに・共生社会へ:廃プラ資源にして再生産 中東情勢で注目集める「循環経済」

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回収され集まった使用済みPP製バンドを原料にリサイクルするため、異物がないか確認する従業員=新潟県柏崎市のウッドプラスチックテクノロジーの工場で2024年1月(同社提供) 廃棄物を資源に再生し、循環的に活用する「サーキュラーエコノミー(循環経済)」。焼却処分の量を減らして二酸化炭素(CO2)排出量を削減するなど環境負荷を減らす目的に加え、輸入資源の効率的な利用につながるとして経済安全保障の観点からも注目を集める。 サーキュラーエコノミーに取り組む企業や政府の関係者らは「廃品を資源に再生するには、回収作業を含め多くの人の協力が必要。持続可能な社会を築くため、ぜひ循環経済に関心を持ってほしい」と呼び掛けている。Advertisement 「2月末に米国とイスラエルがイランを攻撃し中東情勢が緊迫化してから、問い合わせ件数が急増した」。使用済みとなった荷物の結束や固定に使うポリプロピレン(PP)製のバンドを回収し、原料にリサイクルして同様のバンドを製造する「ウッドプラスチックテクノロジー」(鳥取県倉吉市)の中山東太社長は、電話が鳴り続けた当時を思い出すように語る。 同社は東京大で開発された技術を用い、木質材料とプラスチックの複合素材を作ろうと2008年に創設された東大発のベンチャー企業。紙パックをリサイクルする際に廃棄されるポリエチレン製のフィルムを使い、工事現場などで利用するプラスチック製の敷板の製造なども手掛けてきた。バンド製造業者「原料安定的に調達」 PP製バンドの事業を始めたのは21年。大分県に工場を持つ会社をグループ化し、西日本エリアで古いバンドを回収し、それを原料にしたバンド作りに挑戦してきた。エリアを東日本にも広げようと、サステナブル(持続可能)な取り組みを支援する商工中金の融資を受け、24年には新潟県柏崎市に新工場を建設した。第1回SIMAグッドイノベーション賞の「創造賞」を受賞し、表彰を受けるウッドプラスチックテクノロジーの中山東太社長(右)=東京都千代田区で2026年2月3日、後藤由耶撮影 古いバンドの回収に協力しているのは製造業や物流倉庫の会社で、バンド以外の素材が交ざらないよう分別してもらい、古紙回収業者に回収を依頼。回収業者に圧縮して保管してもらい、トラック1台分までたまると受け取りに行く。 現在、全国で1万ほどの事業所が回収に協力し、同社の製造販売する月200トンのバンドのうち半分が再生品だ。価格も再利用ではない新しい素材で作る商品より1~2割安い。今年2月には「サーキュラーエコノミーの新たなモデルを生み出した」として、先進的な経営者を表彰する第1回「SIMAグッドイノベーション賞」の「創造賞」を受賞した。 中山社長は「中東情勢の悪化で原油の輸入が止まり、プラスチックの原料であるナフサの供給が不安視されたが、我が社はリサイクルで原料を安定的に調達できる。ここ数カ月で再生品の売り上げが大きく伸びた」と話し、「これを機にリサイクルに協力してくれる企業をもっと増やしたい」と意気込む。「品質統一など枠組みが必要」廃棄プラスチックを原料にして製造したトレーを手に循環経済について語る和光紙器の本橋志郎社長=埼玉県川口市で2026年4月24日、桐野耕一撮影 埼玉県川口市の「和光紙器」もプラスチック製品のサーキュラーエコノミーに取り組む。段ボールを製造する会社だったが、「段ボールのようにプラスチックも原料に戻して再利用できる製品を作りたい」と07年にプラスチック製梱包(こんぽう)材の生産に乗り出した。 自動車部品を運搬する際に使用するトレーを、部品の形や大きさに合わせて製造する。09年に三重県鈴鹿市に工場を建設。回収した廃棄プラスチックを原料に戻した上でトレーを生産している。 商品が売れ始めたのは14年ごろから。色の異なるものをリサイクルして原料に使うためトレーの色がまちまちで、以前は「色を統一してほしい」と顧客から苦情を言われた。 それが今では、そのまちまちの色が「環境に優しい証し」として受け入れられている。本橋志郎社長は「時代が変われば認められるのだと実感した。価格も再生材を使わない商品と同程度まで抑えることが可能となり、取り扱っていただける顧客の数は15年ほど前と比べ5倍以上に増えた」と話す。 こだわっているのは、廃プラを無償ではなく金銭を支払って回収すること。本橋社長は「回収する廃プラに油や鉄粉がついているとリサイクルできない。丁寧に分別してほしいとの思いから、お金を支払っている」と話し、「家庭から出る廃棄プラも、厳密に分別されればもっと再利用できる。資源を有効活用するため、行政や企業が連携し、再利用しやすいよう形や品質を統一するなど制度的な枠組みが必要だ」と訴える。衣類も再資源化でデニムに再生 環境保護を進める毎日新聞社のMOTTAINAIキャンペーンに賛同する企業もサーキュラーエコノミーを実践している。 キャンペーンの協賛企業で制服製造を手掛ける繊維商社「チクマ」(大阪市)は、1998年に使用済みの制服を回収して自動車の断熱材など内装材に再資源化する取り組みを開始。14年からは北九州市との官民協働事業として、一般の服も対象にした古着リサイクル事業に取り組んでいる。 北九州市の工場を中心とした14年からの事業で、自治体や他社の協力も得て回収した衣類は約2500万点。再資源化することで、約3万トンのCO2削減効果が生まれた。一部の綿100%の服は細かく裁断して原料に戻し、大手アパレルや流通会社によってデニムの服や靴下に再生された。今年中には、東海地方に工場を持つ企業とも連携し、再資源化の規模を拡大する予定だ。 チクマは服を通じて環境問題などを子どもたちに学んでもらう「服育」を提唱している。同社の担当者は「身近な衣服にかかわる環境への取り組みを知ってもらうことで、サーキュラーエコノミーの重要性を自分に関係することとして感じてもらえれば」と語る。経産省「循環経済市場の拡大目指す」 サーキュラーエコノミーを巡っては、欧州連合(EU)が自動車やバッテリーの生産で再生材の利用強化を推進するなど、世界レベルで取り組みが進む。日本政府も24年から関係閣僚会議を継続的に開催し、プラスチックの再生利用量や金属リサイクル原料の処理量の増加、家庭で廃棄される衣類の削減などに向けて施策を進める。 経済産業省資源循環経済課は「今年4月に改正資源有効利用促進法が施行され、再生材の利用を促進するため、事業者に対し再生資源の利用計画策定と定期報告が義務化された。再資源化に取り組む事業者への設備投資支援も行い、供給量も伸ばして循環経済市場を拡大させたい」と訴える。【桐野耕一】