届かない政策目線 元官僚が地方起業で気付いたバイアスと本音のずれ

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朝日新聞連載8がけ社会記事インタビュー2026年10月9日 11時00分有料記事聞き手・川西めいこ大学生に講演する小林味愛さん=2026年9月29日、東京都新宿区、榧場勇太撮影インタビュー連載「8がけ社会」を読み解く 官僚や政策コンサルタントから転じて、捨てられていた柿の皮などを活用した地域商社を福島で起業、経営する小林味愛さんは、現役世代が急減する「8がけ社会」の最先端を行く地方の現場に足場を作り、内と外をつなぐ鍵は「対話」にあると言います。人口減少を乗り越えていく力をどう生み出していくか。実践から見えた手がかりを聞きました。 ――福島でどんな活動をしていますか? 福島県北部の国見町で、規格外の果物を生産者から買い取って都市の青果店などへ流通させたり、捨てられていた柿の皮を使った化粧品を開発したりしています。産地と消費地のつながりを作り、生産者の所得向上を目指しています。 私自身は東京との2拠点生活をしていて、人口減少問題に向き合う「未来を選択する会議」の共同代表をしています。東京に身を置くことで、圧倒的に社会の動きの情報が入ってきます。それを踏まえて、地域で意思決定できるのが強みです。地域の人に最新の動きを分かりやすく伝えることもできます。朝日地球会議2026で「8がけ社会」セッション(参加申込はこちらから)「8がけ社会」を乗り越えるためのオンラインセッションに小林さんが登壇します。コミュニティデザイナーの山崎亮さんを交え、対話を通じて熱量や共感を高める方策について語り合います。(11月2日から配信)。高校生・大学生と記者が語り合うワークショップも開催します。 ――経済産業省への出向や日本総合研究所での勤務を経て、福島で起業したのはなぜですか。 当時は、福島で何か役に立てないかと純粋に思っていました。 前職の日本総研では、自治体や国からの莫大(ばくだい)な予算で年度限りの計画をつくったり、表面的な課題解決策を横展開したりしていました。大きな組織ならお金も人も動かせます。でも、社会人1年目に起きた東日本大震災でボランティアに参加し、子どもや親を亡くした人たちと向き合った記憶から、表面的な仕事のやり方が許容できなくなりました。 現場に飛び込んで、たった1人でも「ありがとう」と言ってくれる仕事がしたい。一人ひとりが「何に困って、何に悩んでいて、どうしたらもっと喜んでくれるんだろう」と考えて、起業しました。対話を重ねてわかるのは、その人が「大切にしていること」 ――何から始めましたか。 ただ話を聞かせてもらいました。でも、縁もゆかりもない土地では、いきなり入っていっても話してくれません。「経産省」「日本総研」といった分かりやすい肩書があれば、ヒアリングに応じてくれる人はたくさんいました。でも、ヒアリングで聞ける話は、肩書に対する要望や主張でした。本当の意味で、その人が何に悩み、困っているのか、どうありたいのかを聞けていなかったと、その時に実感しました。 ――本音をどう聞いたのですか? ただ、日常を一緒に過ごしました。草刈りをしたり桃の作業をしたり。そうした中で徐々に信頼関係ができ、いろんな話を聞かせてもらえるようになりました。人手不足や人口減少は、どの地域も共通の課題です。話を聞かせてもらえるようになると、どこにでもある表面上の課題の下に眠っている、地域やその人固有の「暗黙知」にたどり着きます。 ――暗黙知とは、例えば? もともと役人やコンサルだったので、解決策を出すことが正義であり、それで喜んでもらえると思っていました。「規格外の果物の価値を高めて都市に売れればいいのでは」とコンサル目線で言っても、地域の人は「人手不足で集荷できない」「東京まで宅配便で運んだら物流費の方が高い」といった暗黙知があり、「できねえ」の一言で終わります。 話を深掘りしていくと、農家にはそれぞれ事情があることが分かります。「孫との関係が一番大事で、その関係がもっとうまくいけば、もっと農業を頑張れる」人であれば、孫との時間をつくるために効率的なオペレーションを組み、農家の負荷を下げて孫との時間を作る。対話を重ねることで、農業とは全然違う、その人にとって大事なことが分かります。その課題をクリアできる具体策や仕組みを作れば、事業にできます。 ――暗黙知を探る経験から気付いたことは? それまで私は「稼げれば稼げるほど良い」という無意識のバイアスがありました。「手取りが増えるから生産者も喜ぶだろう」と思い込んでいましたが、実際はそうではありませんでした。彼らにとっては、適正な価格で作物が売れて、無理のない負担であることが一番大事でした。作業を手伝いながら対話を続ける中で、規格外の桃や柿をビジネスにすることを見つけました。「いい気持ちがしない」をどう変えるか ――高齢者が多い地方に飛び込むのは、女性だとなおさら勇気が要ります。 私も当初は、地方の課題であ…【この記事の続きが読める】有料記事が読み放題のスタンダードコースが初回1カ月無料!詳しくはこちら宅配紙面の購読者なら、ダブルコース半年割がお得です。詳しくはこちらこの記事を書いた人川西めいこ仙台総局|事件・事故専門・関心分野ジェンダー、性暴力、選挙、若者の政治参加関連トピック・ジャンル関連ニュースこんな特集も注目ニュースが1分でわかるニュースの要点へ10月9日 (金)プルデンシャル生命 社長謝罪ユニクロ、アパレル世界2位へ阪神の佐藤輝明が三冠王10月8日 (木)ノーベル化学賞に硤合憲三氏ビール大手4社に強制調査TOPIX銘柄大幅入れ替え10月7日 (水)簗氏発言 国交省の調査結果ノーベル物理学賞 受賞者発表ランサム集団キリンの男拘束10月6日 (火)消費減税 成立へ意欲ノーベル賞ウィーク始まる予算カット発言 撤回し謝罪トップニューストップページへ簗氏が名指しの2市町、止まった工事 「投票しないと予算減は恫喝」5:00誰にいくら? 「支援金」の線引きが交渉材料 強気の政府・与党10:50わいせつ容疑で児相職員逮捕 電車で数十回被害か、高校生申告できず9:30死刑執行を「ライブ配信」、米政府が異例の公開へ 銃殺予定の元兵士10:37ブックオフのシステムに不正アクセス 643万件の情報漏洩の可能性9:58せめぎ合うトランプ政権とメディア 連帯して取材制限に抵抗の背景は6:00