キャンパる:気軽な対話と交流で目指す「民主主義」の進展 若者たちの集い

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東京で4回目の開催となった「民主主義ユースフェスティバル」。好天にも恵まれ、政党や市民・若者団体のブースは多くの来場者でにぎわった=東京都世田谷区で、小野将京撮影写真一覧 社会課題や政治について気軽に話したり、政治家との対話の場を作ったりすることで日本の民主主義を発展させることを掲げる「民主主義ユースフェスティバル」が5月16~17日の2日間、東京・下北沢で開催された。今年で東京での開催は4回目となるこのイベントにはどのような思いが込められているのか。会場を訪ねて取材した。【東京都立大学・小野将京(キャンパる編集部)】北欧諸国の視察から誕生 同フェスは、下北沢駅から歩いて5分ほどの、小田急線地下化工事に伴って生まれた線路跡の空き地で開催された。12の政党ブースと市民団体・若者団体の8ブースが配置され、芝生エリアにはパネルディスカッションなどを行うメインステージが設けられた。またキッチンカーや飲食エリア、音楽ライブのスペースも設けられた。Advertisement 主催したのは、若者の政治参加を促進することを目指す超党派団体の「日本若者協議会」。代表理事を務める室橋祐貴さんが、楽しみながら政治について語り合うイベントが根付いている北欧諸国の視察で得た知見をもとに、2023年から毎年、開催している。「選挙小屋」には各政党の青年組織に所属する若者世代の代表者らが常駐し、来場者と対話した=日本若者協議会提供写真一覧呉越同舟の「選挙小屋」 会場で特に目を引いたのは、政治家らがブースを拠点に来場者と対話したり、質問を受けたりする「選挙小屋」の存在だ。これはもともとスウェーデンで行われている催しで、名称も同じ。同協議会はすべての国政政党に参加を呼びかけており、今回は国政政党9党と、都議会に議席を持つ地域政党3党が出展した。参加を見送った政党はあるものの、考え方の異なる政党が一堂に会して来場者と交流する企画は日本初の試みであるという。 選挙小屋には全国的に知名度のある政治家らが次々に訪れ、来場者や他党との交流を思い思いに行っていた。16日午後に訪れた中道改革連合の小川淳也代表は、考え方の違う人たちとの対話の進め方について「伝えるためには聞かなきゃいけない。一つ伝えたいと思ったら二つ聞く。そういう心がけだ」と話した。考え方が違えど、輪になれる 政党ブースが軒を連ねるスペースには、戦没者の遺骨収集や気候変動問題、防災教育などに取り組む市民団体・若者団体のブースが同居。隣接するメインステージでは、政治をより身近に感じるための12のテーマで連日パネルディスカッションが開かれた。「毎年雨が降るから、今年こそは晴天で迎えられてよかった」と話す中村さん。第1回からフェスの運営に携わってきた=東京都世田谷区で、小野将京撮影写真一覧 フェスの運営を中心になって担うのは、同協議会が公募した社会人3人、大学生2人、高校生5人の計10人で構成する実行委員だ。「一般参加者として来てくれた人が、フェスに感銘し応募してくれることもある」。そう語るのは、実行委員の一人で同協議会唯一の常勤職員である中村真大(まさひろ)さん(23)だ。中村さんもまた、大学2年の夏にX(ツイッター)で第1回のフェス実行委員募集を見て「こんなに面白そうなことはない」と応募を決めたという。 高校3年生だった第2回から実行委員を務める大学2年生の秀島知永子さん(19)は、今回は「次の時代の女性政治家」のパネルディスカッションを企画した。秀島さんは「自由度が高く、自分がやりたいテーマを提案したり、呼びたい団体を呼べたりするのが楽しい」と語る。初開催時もボランティアスタッフとして参加しており、「いろんな考え方の人が輪になれる」雰囲気の良さを感じていたという。12のテーマで行われたパネルディスカッション。「政治家のリアル」では、著名な政治家も登壇した=日本若者協議会提供写真一覧「分断」解消の糸口に 今回初めて実行委員を務めた、もう一人の大学生実行委員の山岸輪清さん(19)も、前回はボランティア参加していた。その経験をもとに、機材周りの作業を取り仕切るスタッフの必要性を感じ、実行委員として役割を果たそうと考えたのだという。 2人は政治を取り巻く言論環境について、共通して「分断」への懸念を口にした。山岸さんは、ネット上で違う意見を袋だたきにする様子を目の当たりにし、対話できる環境ではないと感じたそうだ。また秀島さんは近所の人や友人が移民排斥論を口にすることが心配なのだという。 山岸さんは、党派色の鮮明な、特定の政治的テーマを掲げるイベントでは似たような考えをもつ人々が集まりやすいと指摘する。その点、「フェスでは意見の異なる人たちと面と向かって触れ合う機会を提供できる」と語った。また秀島さんは、来場者にフェスを通して「お互いが敵ではなく、同じ人間だと気づき、友達になるという体験をしてほしい」と話した。それぞれが、フェスに分断解消の糸口を見いだしているようだ。出展団体のブースに立ち寄る親子連れ。会場には家族で訪れる来場者の姿も見られた=東京都世田谷区で、小野将京撮影写真一覧多様な来場者であふれる活気 来場者がこのイベントを訪れた理由はさまざまだ。来場者の政治意識について気になり質問した。 環境問題に関心があるという女子学生(18)は、美術史を専攻する友人とともに来場した。「政治イベントでも、運営側が偏りなく政党を招き、中立を掲げるなら誘いやすい」とフェスの利点について話した。傍らの友人(18)は「政治にあまり興味はないけれど、アートに関連するパネルディスカッションがあったから来ようと思った」と語った。 2人は会場を回り、戦没者の遺骨収集に取り組む大学生主体の団体や、下北沢で居住型の教育施設(レジデンシャルカレッジ)を運営する団体のブースを見て、自分の知らない世界への目線が広がったという。 同じく友人連れの介護職の男性(22)の来場の主な理由は音楽ライブへの参加だったが、「政治家が訪れた人々と気軽に会話を交わしているのが印象的だった」と語った。政治に対する思いを友人とともに尋ねてみると、「重度障害を抱える人が行き場がなくなるかもという漠然とした不安がある」「政治への手がかりがない。政治家に悩み相談をしてみたい」とそれぞれ語ってくれた。飲食しながら気軽に政治について語り合うことを目指し、キッチンカーも配置した。会場には飲食スペースも用意された=東京都世田谷区で、小野将京撮影写真一覧 他にも、多くのキッチンカーが出ているのを見て立ち寄ったという子連れの夫婦や、「SNSと選挙のこれから」がテーマのパネルディスカッションだけを見に来た中年の男性、ゼミの教授の紹介で訪れた学生など、会場は属性も来場理由もさまざまな人たちであふれ、活気づいていた。 会場内の飲食ブースで出店した高橋理美さん(34)は、普段は「ソーシャルカフェバー」と銘打って、社会課題や政治について対話することを趣旨とした飲食店を経営している。「顔と顔を突き合わせてのおしゃべりが足りていない」と感じているといい、飲食ブースの存在が、社会課題や政治に興味がない人たちの来場のきっかけになればと思い、出店を決めたという。大学生実行委員の秀島さん(左)と山岸さん。パネルディスカッションの企画をはじめ、フェスの運営全般に携わった=東京都世田谷区で、小野将京撮影写真一覧手応えと今後の課題 実行委員の中村さんによると、今回のフェスには2日間で1万3600人が訪れ、生配信されたパネルディスカッションなどの視聴者数は4万人近くを数えた。来場者数は過去最多になったという。「政治との距離感をリアルで埋めるというテーマを達成できた」と山岸さんや中村さんは手応えを語った。 一方で、フェスの開催には構造的な問題がつきまとっている。来場者から参加料をとらないため毎年赤字が続いており、同協議会が補塡(ほてん)しているのが現状だ。運営費用は基本的に、アウトドア用品メーカーである「パタゴニア」からの助成金やクラウドファンディングで賄っているが、今回は政党や出展団体から出展料を徴収することで赤字幅を抑えることになった。「本当は若者団体からは出展料を取りたくない」と中村さんらは口をそろえる。 中村さんは「北欧などと比べて公的な部門、民間両面からの若者の政治参加への支援はまったく足りていない」と語った。例えばデンマークなどでは、ギャンブルの賭け金を若者団体への支援に充てる取り組みがなされているという。そのような海外の事例も踏まえながら、若者団体の存在価値と課題を訴え、支援策を提案していきたいとした。フェスの運営には、高校生や大学生を含む多くの若者たちがボランティアとして参加した=日本若者協議会提供写真一覧発展の可能性さらに そのような課題がありつつも、これからのフェスの展望について実行委員は前向きに語る。秀島さんは、「さまざまな地域の団体が、それぞれの地域で開催できるような形にしていきたい」と話した。また中村さんは「これまでも、各党の青年部などと調整を続けてきた。フェスの開催意義について理解してもらうよう努めつつ、先方にとっても負担の少ない方法を探っていき、全政党の選挙小屋をそろえたい」と語った。また、山岸さんは「選挙小屋がフェスだけでなく、有権者と対話をするために、政党が自主的に生活圏で開催するものになってほしい」と、フェスの枠を超えた対話の発展を望んだ。