=幾島健太郎撮影 映画監督の岩井俊二さん(63)は、淡く郷愁を誘う映像美と夢うつつのような世界観の物語で数々の名作を残してきた。小説や作曲も手掛けるなど、多彩な顔を持つ表現者でもある。9月4日からは公開30周年を迎えた「スワロウテイル」(1996年)の「4Kリマスター版」が全国で上映され、時代を超えて多くの人々を夢中にさせている。 各界で確かな足跡を残してきた方々に、人生という旅について語っていただく新連載「InMyLife・旅の途中で」。第6回に登場いただくのは、映画監督の岩井俊二さんです。まさかこんな時代に見るとは… <「スワロウテイル」は、架空の都市“円都(イェンタウン)”を舞台に、そこで生きるさまざまな国籍の人間の生きざまを描く群衆劇。8月21日、リマスター版の先行上映会で登壇した岩井さんは当時を振り返りつつ、「自分の中の体感では、今もなお始まったばかりという感覚で、やりたいこともいっぱいある」と映画製作に対するみずみずしい思いを語った> 「むかしむかし、円が世界で一番強かった頃」というナレーションで始まるおとぎ話的な設定にしましたが、あの頃は実際、円が高かったですよね。まさか30年後、こんなに円が下落した時代にこれを見ることになるとは。当時、「移民問題をエンターテインメントにして不謹慎だ」なんて言われましたが、僕はこの映画で冒険者たちを撮りたかった。今でも何も間違っていなかったと思っています。 <「自分の人生を生きていることと映画を作っていることがシンクロしたときに、やめられないという気持ちになって、今日までやってきた」。先行上映会ではそんなふうに映画人生を語った岩井さん。映画を仕事として初めて意識したのは、少し変わったきっかけだった> 高校3年生の頃、映画館で「Keiko」(クロード・ガニオン監督)という映画を見た際、カメラの後ろ側にいる人の気配を感じてしまったんです。カメラマンの姿が見えたのか、妙な音が入ってしまっていたのか詳細は忘れましたが、映画に集中していたのに「あれっ、こっち側に人がいるぞ」って。作り手のミスといえばミスですよね。 でも、映画館からの帰り道に「そうか、映画って人が作っているのか」って、当たり前のことですが改めて気付くと、「自分でも撮れるものかもしれな…Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。【次の記事】「どうすっかな、これから」 岩井俊二監督が海辺でつぶやいた日【前の記事】「人間の魂の輝き届ける」 舞踊歴75年目、森下洋子さんの願い関連記事