AI故人について語る上智大大学院の佐藤啓介教授=上智大で2026年7月23日午後2時13分、千脇康平撮影 故人をしのぶ新しい選択肢として、定着していくのだろうか。生成人工知能(AI)の技術を使い、亡くなった人の姿や声などを再現するAI故人。賛否両論がある中、明確なルールがないまま社会実装が進む。死者倫理に詳しい上智大大学院の佐藤啓介教授(死生学)に、AI故人を巡る論点などを尋ねた。【聞き手・千脇康平】 <主な内容> 遺族だけのものではない 規制求める声 三つの理由 「忘れる」から「つながる」へ 死者の尊厳とは何か「故人」と「死者」 ――AI故人とは。 ◆明確に定義されているわけではありませんが、亡くなった人の映像や音声などのデジタルデータを基に、故人のビジュアルやテキスト(文章)、音声を生成することを指すことが多いと思います。 ――「死者AI」という表現も論文で使っていましたね。 ◆AI故人の名称が定着しつつありますが、「遺族が使うもの」というイメージが強くなり過ぎていると感じます。サービスとして展開する企業は主にご遺族を想定しているので、「故人」という表現がいいということは理解しています。一方、「死者」には社会全体から見た死者といったニュアンスがありますよね。私自身はもっと社会全体で死者AIの技術がどうあるべきかを考えるべきだというスタンスです。誤認、依存、期待外れ ――AI故人は喪失感を和らげたり、ありし日をしのんだりといった使い方があります。一方、「死者の尊厳に対する冒とくだ」「故人は同意していない」といった倫理や法的な面から批判があります。 ◆AI故人を規制しようとする主張は、大まかに①危害(利用者への心理的影響や社会全体に混乱をもたらす可能性)②真実性(死者の過去像や共有されたイメージが歪曲<わいきょく>される可能性)③尊厳・権利(死者に対する冒とくになる可能性)――の三つのモデルに大別できます。商業利用をする場合には「誰が利益を得ていいのか」という議論もあります。 ――心理的影響に関して、喪失を受け入れる過程への影響を懸念する見方があります。 ◆リスクは3点くらいに整理されています。一つは「誤認」で、死んでいる人を「まだ死んでいない」というふうに誤解してしまうこと。あとは「依存」と「期待外れ」です。期待外れとは、例えば「亡くなった夫と話せると思って利用したのに、期待と全然違うことを言われて傷ついた」みたいなケース。 ただ、誤認は自ら頼んでAI故人を作ったのなら起こりにくい。依存はAI故人特有というよりAI依存一般の問題として捉えるべきです。必要なことは、依存しすぎないような使い方や作り方といった対策です。記憶し、つながり続ける ――乗り越えたつもりが、引き戻されるということはないですか。 ◆大前提として、死を受け入れていくプロセスに対する考え方は、1980年代ごろまで「なるべくこだわらずに前を向きましょう」というのがグリーフケアの現場において主流でした。近年は、… AIを使って故人の姿や声などを再現する技術が国内外で広がっています。AI新世紀では、実際に再現した遺族の思いや課題を探ります AIで再会した父「似すぎなくてよかった」理由 オットGPTで見つけた亡夫の宝物 AI故人が新たな形の終活に=8日6時公開予定Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。【前の記事】能動的サイバー防御、GMO要請は「想定外」 対応手探りの政府関連記事【最新記事】