「地域自給率上げる仕組みを」 鈴木宣弘教授が大雨被災地で講演

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記録的大雨の被災地で講演した鈴木宣弘特任教授=石川県羽咋市で、2026年10月25日午後1時23分、鈴木鈴美香撮影 コメ問題や食料安全保障に詳しい東京大大学院の鈴木宣弘特任教授を招いた講演会がこのほど、石川県羽咋市であった。羽咋は8月の記録的大雨で約410ヘクタールの農地が冠水するなど大きな被害を受けたが、会場には被災した農家らも駆けつけた。鈴木教授は、食料安全保障の重要性が増す中、いち早く自然栽培に取り組んできた羽咋について、「地域の自給率を100%に上げる仕組みづくりを強化すれば未来は明るい」と期待を示した。地域で循環「ローカル自給圏」 鈴木教授は、近年増加する異常気象による災害が離農を加速させていると指摘する。地震や台風、水害などの被災地を視察すると、どこも復旧が遅れていたといい、「被災した農村に住むのはあきらめて、別の場所に移り住んだ方がいいと国が示しているように見える」と話す。Advertisement JAはくいでは、市と連携して10年前から農薬や化学肥料などを使わず、自然の力で作物を栽培する「はくい式自然栽培」に取り組む。昨年度からは減農薬などトキの生態系に配慮した「トキ認証米」の栽培も始まった。 鈴木教授は、トキは生態系が豊かな環境でしか定着しないとされ、安心・安全なコメ作りのバロメーターになると説明。「低農薬栽培で段階的に土壌が養分を取り戻していけば、資源循環型の永続可能な農業の実現につながる」と指摘する。 中東情勢の悪化などで食料安全保障の重要性が高まる中、鈴木教授が提案するのが、生産から消費まで農と食、エネルギーを地域で循環させる「ローカル自給圏」だ。農家が、消費者や農協、自治体などと協力し、地域で持続可能な農業生産を行う仕組みづくりで、「子供らの命や未来を守るには、地域の安心・安全な農作物を消費者が選び支えることが重要」とし、学校給食で地域の農産物を積極的に使うことを呼びかけた。コメ価格、下がればいいのか 一方、記憶に新しいコメ不足に伴い価格が高騰した2024年夏の「令和の米騒動」だが、騒動後も米価の暴落を放置していることが、食料自給率が低い日本に深刻な問題を投げかけていると、鈴木教授は指摘する。倉庫内に高く積み上げられた備蓄米=埼玉県内で2025年2月18日午後1時48分、北山夏帆撮影 騒動後、政府による備蓄米の放出や前年度から約100倍に増えた輸入米により民間の在庫が急増。その結果、集荷業者による買い叩きが起こり、25年に60キロで3万円を超えていた米価は今年、約1万円に暴落した品種もあるという。 消費者には恩恵のある米価下落だが、燃料や資材高騰で生産コスト高に苦しむ農家にとっては痛手となる。鈴木教授は「今回の米騒動の最大の教訓は、コメを生産調整することには限界があるということ。米価の乱高下で農家も消費者も疲弊する。コメの価格が下がればいいとだけ考えていたら、作り手はいなくなり米騒動がずっと続くことになる」と警鐘を鳴らした。「農協、存在意義見直しを」 日本の農政は近年、食料・農業・農村基本法の改正(24年)や農林中央金庫法の改正(26年)など大きく変化している。鈴木教授は、これまで日本の食料供給を支えてきた農家はますます厳しい局面に立たされているとした上で、重要になってくるのが農協だと指摘する。 日本の農協は、明治期に生糸や茶などの生産物が商品経済化していく過程で、個々の農家が商人の買い叩きに合うなどの不利な環境を改善するために誕生した。そして、明治期のデフレで資金の工面に苦労した農家が、高利貸などに苦しめられたことなどから、各地で設立、普及していった経緯がある。 「立場の弱い個々の農家が集まって、共同販売、共同購入を行い、金融・共済など作って資金を集めた。それを営農や農業振興に回すことで、地域の農業と食が守られる」と鈴木教授。「こういった循環によって地域全体を支えるのが協同組合の力だ。改めて農協の存在意義を見直し、発信していく必要がある」と訴えた。【鈴木鈴美香】Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。関連記事