液体はすぐにゲル化(固化)し、複合材料を取り出すことができる=愛媛県四国中央市で2026年10月28日、松倉展人撮影 愛媛大学紙産業イノベーションセンター(愛媛県四国中央市)の潟岡陽(かたおかよう)特定研究員(機械工学)らの研究グループは、プラスチックの強度や弾力性を高める素材としてセルロースナノファイバー(CNF)を添加する際、攪拌(かくはん)と乾燥だけの簡単な工程で添加を可能にする技術を開発した。従来は凍結乾燥や化学処理といった高度な工程と施設を必要としており、同大学は一般企業にも簡単に取り入れられる技術として特許を出願した。「その場固化法」ポリプロピレンとセルロースナノファイバーの粒子が分散している液体を攪拌後、クエン酸の添加と乾燥によって複合材料ができることを示す図=愛媛大提供 植物を原料に、太さ数ナノメートル(ナノは10億分の1)まで繊維が解きほぐされ、新しい繊維素材として注目されるCNF。水になじみやすい特性がある。一方で石油を主原料とするプラスチックは水になじみにくい。CNFをプラスチックの機能添加材として使う場合、水分を取り除く工程が不可欠だった。今回の技術はセラミックスや地盤工学の分野で液状の材料を固める際に使う「その場固化(こか)」の手法にならい、「その場固化法」と名付けた。Advertisement この技術のポイントはクエン酸の添加。研究ではプラスチックの一種・ポリプロピレンと、CNFの粒子が分散している液体を混ぜ合わせて攪拌する際、クエン酸の水溶液を加えてみた。すると、分散した粒子を包んでいた膜はクエン酸によって破壊され、急激にゲル化(固化)した。ゲルの中にはポリプロピレンとCNFの粒子がそのまま残っており、乾燥によって新たな複合材料としての使用が可能となる。新技術で試作したCNF添加プラスチック製クリップを示す潟岡陽特定研究員。たわみに強く、何度折り曲げても元に戻る=愛媛県四国中央市で2026年10月28日、松倉展人撮影 潟岡さんによると、ポリプロピレン粒子を包んでいた膜は界面活性剤(洗剤)のように水になじみやすい部分(親水部)、油になじみやすい部分(疎水部)の双方を有した素材でできており、親水部が外を向いているため見かけ上は水に分散しているように見える。ところがクエン酸によりpH(水素イオン指数)が変化したことによって界面活性作用(混じり合わないものを仲介する作用)が保てなくなり、牛乳のように水中に微小な粒子が分散するコロイドの状態を保てなくなったと考えられるという。「多くの事業者に導入可能な技術」 従来、プラスチックとCNFの混合物をそのまま乾燥させた場合はCNFのみが固まる「凝集物」が残り、複合材料とはならなかった。だが、この技術では凝集を起こさず、容易にCNFの添加を可能にした。また、実際にCNFを添加したプラスチックの強度や靱性(じんせい)(たわみへの粘り強さ)を実験したところ、いずれも添加なしのプラスチックに比べ「高強度かつ高靱性」となり、CNFの利点を十分生かせることが分かったという。グループは高靱性を生かしたCNF添加プラスチック製クリップなどを既に試作している。 CNFは軽量、高強度などの特性を生かして自動車内装材、外装材、建材、透明フィルム、絶縁材料、電子材料など幅広い用途での使用が期待される。潟岡さんは「規模を問わず、多くの事業者にとって導入が可能な技術」と強調し、技術展示や体験セミナーを通じて各種企業に働きかけを続ける。【松倉展人】Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。関連記事