奉納を終え、記念写真に納まる会員たち=京都市東山区で2026年7月26日午前11時51分、南陽子撮影 高さ20メートル、重さ10トンを誇る独自の鉾(ほこ)を持つ、女性だけの囃子(はやし)方「平成女鉾清音会(ぼこさやねかい)」が、1996年の結成から30年を迎える。目指すは祇園祭の山鉾巡行に加わり、祇園囃子を響かせること。目標は遠いままだが、へこたれない。「100年後になるか、1000年後になるか。私たちの歴史をつくっていきたい」。一期一会の最上の音色を求めて心を合わせる。八坂神社で祇園囃子を奉納した平成女鉾清音会。向かって右の太鼓が亀井正子さん、右端の笛が喜多素子さん=京都市東山区で2026年7月26日午前11時14分、南陽子撮影 26日、祇園祭の渡御を終えた神輿(みこし)が並ぶ八坂神社(京都市東山区)で祇園囃子を奉納した。白い浴衣に男帯の角帯を締めた会員は現在、二十歳の大学生から70代まで25人。うち3人が結成時からのメンバーで、他に子育てを終えて「復帰」した女性もいる。Advertisement 「やればやるほど難しいと分かってきた。技術よりも、皆の息が合わなければいい囃子にはならない。奥が深すぎる」と笑うのは、30年一貫して太鼓を担う亀井正子さん。太鼓は鉦(かね)と笛との合奏である祇園囃子のテンポや調子を決め、オーケストラの指揮者やコンサートマスターに似ている。太鼓と笛をそれぞれ率いる亀井正子さん(手前左)と喜多素子さん(右端)=京都市東山区で2026年7月26日午前11時10分、南陽子撮影 会員は年齢も家庭も職場も異なり、退く人がいれば加わる人もいる。亀井さんは「100点満点と喜べる囃子はない。二度同じ囃子もない。だから楽しいし飽きない」と続けた。 亀井さんたち1期生の稽古(けいこ)は96年8月に始まった。94年の平安建都1200年記念事業を機に、祇園祭や山鉾町に関わりが無くてもいつでも建てられ、誰でも携われる鉾をつくろうと財界人や文化人が呼びかけ「平成女鉾」が生まれた。 初巡行は96年10月の「京都まつり」での御池通パレード。函谷(かんこ)鉾保存会が全面協力して7月に囃子方を募集し、200人もの応募者から80人が選抜された。 当時は「35歳まで」と年齢条件があり、亀井さんは少し超えていた。函谷鉾町にある不動産会社に勤めて祇園祭を手伝っていたため「太鼓をやってみたい」との熱意で合格。全くの初心者で「たたくことがまず難しかった」と振り返る。24日にあった祇園祭の還幸祭で、神輿を迎える祇園囃子を奏でる喜多素子さん(右端)ら笛方=京都市中京区で2026年7月24日午後6時28分、南陽子撮影 同じく未経験で笛を吹くことになった喜多素子さん(58)も音を出すのに苦戦。「函谷鉾のベテランの笛方さんは『いつか出る』と優しくて」と笑う。 2カ月の猛特訓を経て臨んだ巡行の感激は想像を超えて大きかった。笛方は鉾上の欄縁(らんぶち)に腰掛ける。鉾は揺れて演奏どころではない。でも「動いている鉾を初めて体験し、御池通がずっと見渡せて開放感があった。曳(ひ)き手も女性ばかり、紫色の法被が本当にきれいだった」と喜多さん。 97、98、2000年の京都まつりでも巡行した。だが、京都まつりが市の財政難で打ち切りとなり、01年以降は京都駅ビル(下京区)、07年に商業施設の新風館(中京区)、16年にロームシアター京都(左京区)で鉾を建て、動かさずに祇園囃子を披露するにとどまっている。祇園祭の神輿の迎え囃子を奏でる鉦方。鉦からお囃子人生を始めるのは、祇園祭の山鉾の囃子方と同じだ=京都市中京区で2026年7月24日午後6時32分、南陽子撮影 結成当初は、66年に始まった祇園祭の花傘巡行に台車で参加することも目指していた。だが、運営組織に申し入れても「他の囃子方の賛成を得られない」と断られた。亀井さんは「函谷鉾の祇園囃子を指導いただいているのに、祇園囃子とは認められないということだった。『女囃子』『女鉾囃子』と名前を変えてまで出たくない。認められるまで練習を重ねるしかないと思った」と明かす。 以降、コロナ禍に中断したものの、昨年の27期生まで延べ300人超が会員となり、月2回の稽古を欠かさない。レパートリーは26日披露したオリジナルの新曲を含めて20曲。「最近やっと女囃子と言われなくなりました」と喜多さん。掛け声は大きく元気よく。平成女鉾清音会は「しなやかで伸びやかな祇園囃子」を目指している=京都市東山区で2026年7月26日午前11時29分、南陽子撮影 祇園祭の山鉾巡行は江戸後期までに巡行していて復帰した山鉾に限られている。国重要無形民俗文化財の歴史に関わる変更は難しいとの見方もある。でもどの山鉾にも「初参加」の年はあった。次代と歴史をつくっていけばいい。「死ぬまでにもう一度、動く鉾で奏でたい」と亀井さんは言い添えた。【南陽子】10年ぶり鉾披露 平成女鉾清音会は9月17日から京都市役所前広場(中京区)で鉾建てを予定している。鉾の披露は10年ぶり。会員25人のうち10人は見たことすらなく、30周年を記念した。同22日の解体まで祇園囃子も披露する。組み立てと撤収に計500万円かかり、クラウドファンディングを実施している。同10日まで。同会サイト(https://onnaboko.com/)。