インタビューに答える、俳優兼「虫プロデューサー」の片田陽依さん=東京都渋谷区で2026年5月26日、仲間礼撮影写真一覧 虫が増える季節だ。早くもゴキブリやゲジゲジと家の中で遭遇した人もいるかもしれない。ところで、ゴキブリやゲジゲジの「顔」を見たことがあるだろうか。「虫は、顔が可愛いんです」と話すのは、俳優の片田陽依さん(21)だ。「虫プロデューサー」として虫の魅力を伝えるYouTube動画を発信し、反響を呼んでいる。学術界からも注目される存在だ。どんな思いで活動しているのか。ゴキブリの魅力伝える動画 2025年6月、片田さんのあるSNS投稿が注目を集めた。 インスタグラムやTikTokでアップした複数のカイコガの動画が国内外でバズり、合計で1000万もの再生回数をたたき出したのだ。Advertisement <虫苦手だけど、このアカウントの虫は可愛く見えます> <虫のいとおしさを教えてくれて、ありがとう> コメント欄にも肯定的な声が相次いだ。片田陽依さんのインスタグラムアカウント。9万人のフォロワーがいる=スクリーンショットより写真一覧 翌7月には、虫の魅力を発信するYouTubeチャンネル「ひよりの虫日記」を始めた。 東京都内の公園を歩き、見つけた虫について特徴や魅力を語る動画をアップすると、いきなり注目を集め、公開1週間でチャンネル登録者数は1万人を突破した。 静岡県磐田市の市竜洋昆虫自然観察公園のゴキブリ展を訪れた動画では、カラフルに輝く個体など、世界中の多様なゴキブリの展示について紹介。70万回以上再生された。 「虫嫌い」の人々からも「ゴキブリがかわいく見えてきた」などとコメントが殺到。1年足らずでチャンネル登録者数は10万人を超えている。 今年1月には東京大学で開かれた日本蛾類学会の研究発表会で、虫の魅力をSNSで発信する意義について講演した。なぜ人々は「虫が苦手」? 幼少期から虫の魅力にハマり、飼育も楽しんでいたという片田さん。一時は虫好きへの偏見に苦しみ、芸能界に入ってからもしばらくは「虫好き」を隠していたという。手に乗せたカメムシと見つめ合う、俳優兼「虫プロデューサー」の片田陽依さん=東京都新宿区で2026年5月26日、仲間礼撮影写真一覧 それでも発信を始めた背景には、「虫嫌い」の風潮が広がることへの危機感があった。 東京大の曽我昌史准教授(生態学)によると、世界的に虫嫌いの傾向が強まっていることが研究者らの間で指摘されているという。 国内でも12年、ジャポニカ学習帳の表紙について「子どもが怖がる」という学校現場の声を受けて昆虫写真が使われなくなったことが話題になった。 しかし虫嫌いは子どもの自然体験の減少につながる、と曽我さんは警鐘を鳴らす。 近年の研究で、自然の乏しい環境にいることが人間の心身の健康にもたらす悪影響も明らかになってきたという。 片田さんは今、1000匹近くの虫と生活をともにしながら本や論文を読みあさり、虫や環境保護の重要性を発信している。日本蛾類学会でも講演し、学術界からも注目される。 「人間がさまざまな恩恵を受けている虫たちの生態系を、守りたいんです」公園で見つけた虫にカメラを向ける、俳優兼「虫プロデューサー」の片田陽依さん=東京都新宿区で2026年5月26日、仲間礼撮影写真一覧虫の魅力「顔を見てみて」 夏によく出るゴキブリやゲジゲジは、特に苦手意識を持つ人が多い虫だ。 しかし片田さんは嫌悪感を持ったことが一度もないという。 「単純な理由ですけど、顔が可愛いんです。ご飯を食べてる時の顔とか、キュンとするんですよね」 愛らしい仕草も魅力の一つだ。 「蚊だって、血を吸うときに硬い肌だと『刺せないなあ』みたいな仕草をする。動きが可愛くて」 もし虫に興味が湧いたら「顔を見てみて」と片田さんはおすすめする。指先から飛び立つテントウムシを見つめる、俳優兼「虫プロデューサー」の片田陽依さん=東京都新宿区で2026年5月26日、仲間礼撮影写真一覧 「本当に愛くるしい顔してる子もいるんです。顔をきっかけに、もっと知りたいと感じる可能性はあるんじゃないかと思います」【待鳥航志】