大阪大教授の三浦麻子さん(左)と作家の寒竹泉美さん=大阪府吹田市の大阪大感染症総合教育研究拠点(CiDER)で2026年7月7日、藤原理加撮影 「マスク警察」「感染者への非難」「陰謀論」――。世界を襲った新型コロナウイルス禍において、なぜ人は非難し、惑わされ、ときに支え合ったのか。パンデミックを物語と社会心理学で読み解いた一冊「コロナの物語×心の科学」が刊行された。インタビューをもとに5人のストーリーを描いた作家の寒竹泉美さんと、解説を担当した社会心理学者の三浦麻子・大阪大教授に、今、コロナ禍を見つめ直す意味を聞いた。登場人物の体験、リアルに描く ――なぜ本にしたいと思ったのですか。 三浦さん コロナ禍は世界中の人がほぼ同時に経験した極めて特殊な社会現象でした。社会の空気が一変し、人々の行動や価値観も大きく揺れ動いた。あれほど大規模で、多くの人が共通体験を持つ出来事はそうありません。 ところが、数年たつと「そういえば、あんなこともあった」と忘れられつつある。だからこそ今、当時を思い出しながら、私たちに何が起きていたのかを改めてたどり直したいと思ったのです。 ――物語形式にした意図は。 三浦さん 社会心理学には、人は統計よりも一人の物語に心を動かされることを示す研究があります。 社会心理学の知見は論文やデータとして蓄積されていますが、「日本人の何%がこう考えた」などと数字を示すだけでは、自分ごととして受け止めてもらいにくい。 そこで、コロナ禍の経験を思い出し、自分自身を振り返る一番の入り口として、物語という形を選びました。 ――物語ではどのような点を工夫しましたか。 寒竹さん 私は研究者ではなく作家なので、「その人が何を見て、どう感じたのか」をリアルに描くことを大切にしました。 医療従事者や保育士、大学生など、異なる立場からコロナ禍を描き、読者が登場人物とともに追体験できる物語を目指しました。コロナ禍を知識としてではなく、自分の経験として思い出してもらえたらと思ったからです。陰謀論に傾倒した会社員も ――登場人物は、どのように作っていきましたか。 …Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。【前の記事】中国が猛追する火星探査 日本の戦略はあえて「本体でなく衛星」関連記事