「いなり寿し」復活を目前にし、作業工程を確認する従業員=静岡県伊東市の祇園本店で2026年10月26日、若井耕司撮影 静岡県伊東市民に長年親しまれてきた仕出し弁当店「祇園」が29日、約1年ぶりに復活する。昨年9月末に閉店したが、伊豆地域で旅館を展開する企業が「のれん」を継承。かつての従業員らが再結集し、伊東のソウルフードともいわれる「いなり寿(ず)し」の味をよみがえらせた。 祇園は1946年創業。JR伊東駅での弁当販売を通じて観光客にも知られ、地元住民から幅広く支持された。同市広野1の温泉街にある本店のほか、駅構内や道の駅にも店舗を展開したが、物価高が影響し、経営破綻した。Advertisement復活する「いなり寿し」(左)と「いなりのり巻詰合せ」。弁当のパッケージは以前のデザインを踏襲している=静岡県伊東市の祇園本店で2026年10月26日、若井耕司撮影 伝統の味を残そうと事業継承へ動き出したのがFJリゾートマネジメント(伊東市)だった。同社の肥田幸春社長(74)は伊東出身で、自身も祇園の味に親しんできた。復活では、長年受け継がれてきた味の忠実な再現にこだわった。 製造部門の従業員9人のうち4人は、旧祇園で働いていた顔ぶれだ。一新した厨房(ちゅうぼう)の調理設備に合わせて夏以降、試行錯誤を繰り返した。食材は従来の仕入れ業者から調達。コシヒカリをベースにした専用ブレンド米を使い、旧店を離れた元従業員の協力も得た。 再開のゴーサインは10月上旬。祇園本店に肥田社長、前経営者、元大おかみが集まり試食。甘酸っぱいジューシーな仕上がりに、前経営者から「この味だね」とお墨付きを得たという。 旧店で約10年働き、再び厨房に立つ渡辺博美さん(56)は「閉店した時は周りから残念がられた。私自身、昔から食べてきたから、(復活は)うれしい」と喜ぶ。 肥田社長は復活を前に「祇園の歴史を未来につなぎ、これからも長く愛される店となるよう、一つひとつ丁寧に取り組んでいく」とコメントしている。 本店は29日午前9時再オープン。「いなり寿し」(税込み950円)「いなりのり巻詰合せ」(同990円)を販売する。11月1日から12月31日まではJR伊東駅構内にも出店する。【若井耕司】Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。