妻トヨ子さんが遺体で見つかった自宅脇の水路で、当時を振り返る尾村不二夫さん。親戚によって飲み物が供えられていた=熊本県八代市で2026年10月20日、玉城達郎撮影 妻との思い出が詰まった自宅や敷地を彩る花々はもうない。熊本地震で妻を亡くした熊本県八代市の男性が地震で倒壊した自宅を整理し、11月から古里を離れ、県外の家族と暮らすことを決めた。地震の発生から28日で3カ月。男性は愛着のある古里を離れ、新たな場所へ踏み出そうとしている。 「やっぱりさみしいし、悲しい」 10月中旬、八代市鏡町の尾村不二夫さん(80)は、自宅跡地の花壇があった場所で、妻トヨ子さん(当時79歳)との思い出を振り返り、つぶやいた。何度も妻を捜したがいない 7月28日夕方、自宅1階の居間にいた不二夫さんは「ガタガタ」と経験したことのない大きな揺れに襲われた。驚き、壁伝いにうずくまるほかなかったものの、落ちてきた柱と家具が支え合う形で隙間(すきま)ができ、何とか外に脱出できた。家は大きく崩れたが、日課の花壇の水やりで家の外にいた妻は大丈夫だろう。そう思っていた。 「奥さんはどうしましたか」。近所の人の言葉に、トヨ子さんが見当たらないことに気づいた。地震直後に「お父さん、助けて」というトヨ子さんの声を近所の人が聞いていた。 納屋や自宅周辺を何度も捜したがいない。夜になり、一緒に捜索していた警察官が自宅そばの用水路の水流でひらひらと動く衣服を見つけた。駆けつけた救助隊が崩れたブロックをどけると、トヨ子さんが用水路で倒れていた。死因は水死で、ブルーシートに包まれた顔や体に傷はなかった。揺れの勢いで水路に落ちて、体がすっぽりと挟まった状況がうかがえた。「私の妻で間違いないです」。そう伝えた途端、一気に力が抜けてしまった。次は何を植えようか…夫婦の会話…Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。関連記事【最新記事】