『あしたのお嬢 ~あしたのジョー 聖地巡り~』(漫画・山田一喜、講談社編、講談社) 漫画家のちばてつやさんが10月22日亡くなった。代表作の一つ『あしたのジョー』(高森朝雄原作)は、連載当時から多くの読者を熱狂させ社会現象にもなった名作だ。その連載開始55周年を記念し2023年に刊行された『あしたのお嬢 ~あしたのジョー聖地巡り~』(漫画・山田一喜、講談社編、講談社・1980円)を、吉村和真・京都精華大教授が24年に書評してくれた。(表記は当時のまま)令和の女子高生を主人公に マンガ史に燦然(さんぜん)と輝く、高森朝雄原作、ちばてつや漫画『あしたのジョー』。その連載開始55周年を記念して昨年刊行された、山田一喜漫画、講談社編『あしたのお嬢 ~あしたのジョー聖地巡り~』を取り上げたい。 主人公は急に家出した父が置いていった『ジョー』を全巻読破した令和の女子高生。少年鑑別所に入った矢吹丈へ丹下段平が送ったハガキよろしく、父のメモを手がかりにお嬢の聖地巡礼が始まる。 丈がボクシングを始めたジムのあった泪橋(なみだばし)、ライバル力石徹の葬儀が営まれた講談社社屋の講堂、真っ白な灰になるまで丈が戦った日本武道館。マンガ本編に実在の地図や周辺スポットの紹介コラムを挟みながら、お嬢と読者は原作ゆかりの地を巡る。 道中の妙味を引き出すのが『ジョー』に影響を受けた案内人たちだ。見た目から言動まで登場人物になりきった姿には腹を抱えた。そう書くとマニアックに映るかもしれないが心配無用。元ネタとなる原作の名場面が惜しみなく収録されていて、知らなくても十分楽しめる。昭和の人気作、半世紀経て文化財に 見逃せないのが、ちばの作風である「俯瞰(ふかん)の構図」と「所作を伴う会話」を見事に活用している点だ。前者は地理がわかりやすくなるため、聖地の特定…Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。関連記事