人情時代劇の一場面。笑いあり、涙ありの展開に観客はくぎ付けに=岡山県真庭市で2026年10月11日午後8時50分、相原洋撮影 岡山県北部の中山間地。真庭市栗原地区の住民でつくる大衆演劇団「焼芝(やこうげ)一座」が旗揚げから半世紀を迎えた。プロに負けない情熱を持って挑む手作り公演に、毎年老若男女が熱狂する。「一座があるから栗原に残る」という若者も。世代を超えて人の心をつなぐ劇団の魅力とは。 10月11日夜、一座の50周年記念公演が催された。会場の焼芝コミュニティハウスは大入り。座布団席は埋まり、窓越しに外からのぞき込む人も多く見られた。集まった約230人は、地区人口約1000人の4分の1に迫る。住民の2・5人に1人が65歳以上で、子ども(14歳まで)の割合はほぼ1割。生産年齢人口(働く世代)が5割を切る超高齢・少子化が顕著な地区にあって、なくてはならない一大イベントだ。 一座は地域おこしグループ「焼芝クラブ」が母体で、1976年に生まれた。地元の神社の秋祭りを盛り上げようと、芝居と舞踊ショーの公演を続けてきた。現メンバーは40~50代中心の34人。発足世代の公演を見て育った世代が後を引き継ぎ、さらに次の世代が舞台に立つようになっている。手作りの花道 音響、照明も分担 開演。進行役が笑いを取りながら場内をほぐし、舞踊ショーの1番手として地元小学生たちによる「よさこいソーラン踊り」が披露された。恥ずかしがる子、緊張して顔がこわばる子……。大人たちからの拍手の後押しで無事踊り終えた。子どもたちのこの経験が大事なのだという。舞台に立ちたいと志願する子がこの中から現れるかもしれないからだ。 座長の西晴光さん(41)がソロで登場した。指先まで気持ちを込めた女形の踊り。決めのポーズの都度、「おひねり」が飛ぶ。届けられた酒の一升瓶を抱きしめる西さんの様子に、観客から爆笑が起きた。 正統派の踊りの間には道化の時間がはさまれ、会場を飽きさせない工夫がなされていた。音楽も、カクテルライトも本格的だ。スモークもたかれる。 メンバーの市村康大さん(50)が教えてくれた。出演はもちろんのこと、脚本や演出、舞台監督、音響、照明などもメンバーで分担している。衣装とカツラはプロの劇団から借りるが、設備や大道具などは自前で調達、製作する。住民に喜んでもらう無料公演。乏しい予算をカバーするため、電気工、配管工、大工など、さまざまな職種のメンバーが得意分野を生かすのだという。 驚くことに、舞台の壁から出演者が出入りし、花道まである。入り口には芝居小屋をイメージした門があり、一座の看板や出演者の名が和文字で掲げられている。どれもメンバーの手作りだった。「かけがえのない居場所」 芝居の時間だ。…Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。関連記事