作家の村上龍さん=東京都内のホテルで2005年4月15日、近藤卓資撮影 作家の村上龍さんが10月14日、74歳で亡くなった。 文芸評論家の田中和生さんに追悼文を寄稿してもらった。しどろもどろの原稿依頼 一九九〇年代の大学生だったわたしにとって、日本の現代文学と言ったら村上龍だった。書店に行くと『五分後の世界』『ヒュウガ・ウイルス』『イン ザ・ミソスープ』などが華々しく刊行されていて、文芸誌では批評家たちがそれらの作品について熱く議論していた。村上龍の小説がよくわかっていないと、現代文学について語れそうにない雰囲気だったから、デビュー作の『限りなく透明に近いブルー』まで遡(さかのぼ)って、『コインロッカー・ベイビーズ』『テニスボーイの憂鬱』『愛と幻想のファシズム』などの長篇(ちょうへん)を読んだ。ぜんぶびっくりするぐらい面白かった。こっそり愛読していたのは、短篇集の『走れ!タカハシ』だった。 通っていた大学構内にあった文芸誌『三田文学』の編集部に手伝いとして出入りしていたので、たしか二〇〇〇年ごろ、思いあまって特集の短い原稿を依頼したことがある。編集長の許可を取って依頼状を作成し、返信用の葉書(はがき)を入れて郵送した。しばらく待っても返事がなかったので、文芸年鑑に載っていた電話番号にかけてみた。…Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。関連記事