消費者向けの冷凍アワビの出荷を再開した元正栄北日本水産の古川翔太さん=岩手県大船渡市で2026年10月30日午後2時9分、奥田伸一撮影写真一覧 2025年2月に岩手県大船渡市で発生した大規模山林火災で、養殖アワビ約250万個の大半が死滅した同市の「元正栄(げんしょうえい)北日本水産」が消費者向けの出荷を再開した。11年の東日本大震災でも被災したが「2度の災害に負けることなく、会社が成長する機会にしたい」と意気込む。 体長6・5センチ前後に育った成貝を冷凍し真空パックにしたアワビ。それを従業員が6個ずつまとめて袋に入れていく。「心が折れかけた時期もありましたが、出荷ができるまで復興しました」。添え状には従業員10人の率直な思いがつづられている。Advertisement延焼地域が拡大し、夜になっても炎を上げる山林火災=岩手県大船渡市三陸町の崎浜漁港で2025年3月1日午後6時2分、手塚耕一郎撮影写真一覧 大船渡市のふるさと納税で1万円以上寄付した人への返礼品として、10月30日に約600個を発送した。26年5月に養殖業者向けの稚貝出荷は再開したが、専務の古川翔太さん(30)は「消費者に直接届くものを出荷できるのは感慨深い」と笑みを浮かべた。 「元正栄北日本水産」は1982年創業。綾里(りょうり)湾のそばでアワビの稚貝や成貝を陸上養殖している。山林火災で社屋は無事だったが、養殖用の水槽に海水を供給する施設が焼損し、停電で水槽に酸素を送る装置も止まった。酸欠状態に陥ったアワビが死滅し、損害額は約5億円にのぼった。 一時は全滅も覚悟したが、火災の約半年前、24年10月に生育を始めた稚貝のごく一部が生き残っていた。2年ほどかけて成貝に育った3000個をふるさと納税の返礼品として出荷することにした。10月分に加え、11月末と12月下旬にも発送する予定だ。消費者向けの出荷を再開した元正栄北日本水産の冷凍アワビ=岩手県大船渡市で2026年10月30日午後1時48分、奥田伸一撮影写真一覧 同社は15年前の東日本大震災による津波で養殖施設が全壊し、アワビの販売再開までに6年を要した。経営が軌道に乗り始めた矢先の山林火災だったが、古川さんは取材に「来年は本格的に養殖を再開し、これまで以上に会社を大きく成長させたい」と力強く語った。【奥田伸一】Google検索で「毎日新聞」の記事を優先的に表示できます。