「世に出して」遺志つないだパパたちの絵本 命の大切さ訴え

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絵本を手に取る清水佳佑さん=本人提供 がんを患った父親3人が中心となり、病院や病気について学べる絵本を完成させた。 はぐれたパパを探しながら、子どもとママが病院内を探検するストーリー。 動物の医師や看護師が登場するなど楽しい仕掛けを盛り込んだ。 制作の途中で2人は亡くなったが、その遺志を受け継いだ絵本に込めた願いとは。楽しい仕掛けで学べる工夫 絵本のタイトルは「どこだ?パパ びょういんってどんなところ?」(ゆまに書房)。 患者家族の支援団体「キャンサーペアレンツ」のえほんプロジェクトで知り合った清水佳佑さん(44)ら3人が意気投合し、2021年2月に制作を始めた。 会議は月1回。仕事や育児に一段落つけた父親たちが午後8時、オンラインで集まった。 「治療中のパパは副作用で弱くなってしまう」「がんをユーモアを交えて伝えるにはどうしたらいいか」。さまざまなアイデアを出し合った。Advertisement ページいっぱいに描かれた院内でパパを探す仕掛けを盛り込んだ。病気の治療や医療関係者の存在を自然と学べることを狙った。 会議は絵本の話にとどまらない。 治療の副作用や仕事、子育ての悩み……。清水さんは「雑談している時間もとても楽しかった」と振り返る。古澤創さん=古澤さんの妻提供仲間が逝く コンセプトが固まってきた22年1月。胃がんを治療中だった古澤創さん(当時45歳)が亡くなった。 仲間との初めての別れだった。悲しみが押し寄せ、制作は足踏みした。 半年ほどして「そろそろ再開しようか」と声を掛け合った。イラストレーターや支援企業を探し、病院見学なども始めた。 出版社に何度も断られたが、今年2月にようやく版元が決まった。 その翌月、膵臓(すいぞう)がんを患っていた関直行さんも48歳で息を引き取った。関直行さん=清水佳佑さん提供 「もう痛すぎて、苦しくて、ツラくて、限界です。志し半ばでリタイアすることになりますが、なんとかえほんを世に出して下さい」(原文ママ) 亡くなる4日前、清水さんのもとにLINE(ライン)が届いた。 清水さんはがんの再発で入院中だった。 「悲しかった。でも、それどころではなかった。生きている自分が彼らの分まで届けなければという使命感の方が大きかった」。その思いで絵本を完成させた。子どもに病気をどう伝えるか 清水さんは中学生と小学生の2人のパパだ。 17年2月に肺腺がんと診断され、その後はがん性心膜炎が進行して心臓の周りに水がたまる状態となり、ステージ4となった。清水佳佑さん=本人提供 治験に参加するなど新しい医療技術や治療薬に支えられきた。現在は免疫療法で症状を抑えている。 「がん患者にとって病院は日常の一コマ」という。 だからこそ絵本では、子どもたちが病院にネガティブな印象を持たないようにと、動物が医師に扮(ふん)するなどファンタジー要素を入れた。支えてくれる医療従事者に対する敬意も欠かさない。 患者にとって、子どもに病気をどう伝えるかは難しい問題だ。古澤さんの妻も「当時はごまかすしかなかった」と打ち明ける。 だからこそ、伝えても、あえて伝えなくても、どちらでもいいと清水さんは考えている。 「『パパが通院している病院はこういうところ』と親子で会話したり、命の大切さについて知ったりするきっかけにしてほしい」と絵本に込めた思いを語る。 絵本の仕掛けにはあくまで楽しさを追求した。絵本「どこだ?パパ びょういんってどんなところ?」=ゆまに書房提供 「ママではなく、パパ目線で考えた。隠れキャラクターを探したり、登場する人や動物に別のストーリーを作ったりと、とにかく楽しみながら学んでもらえたら」とほほえむ。 ゆまに書房、税別2700円。刊行記念イベントが9月5日、京都市内で開かれる。清水さんらが登壇し、制作の裏側を語る。オンライン視聴もでき、参加費は無料。申し込みはサイト(https://dokodapapa.com/)から。【阿部絢美】