映画の推し事:81年の夏 新たな視点で戦争描く映画、ドラマ 「あの花」続編も

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「開戦前夜」©2026 ポニーキャニオン/東京テアトル/NHKエンタープライズ/RIKIプロジェクト 戦後81年、2026年夏もさまざまな戦争映画やドラマが作られた。戦争体験者が高齢化する一方で世界中で戦火は消えない。戦争体験をどのように語り継ぎ、現代の物語として伝えるか。いずれも戦争を知らない世代の作り手たちが、新たな視点から迫っている。夏から秋に公開、放送される7作を紹介する。「開戦前夜」“空気”の恐ろしさ 公開中の「開戦前夜」は、2025年8月にNHKで放送されたドラマ「シミュレーション 昭和16年夏の敗戦」の映画版。Advertisement 太平洋戦争開戦前の1941年、近衛文麿首相直属の「総力戦研究所」に集められた官民軍のエリートが日米の国力を詳細に分析し、米国相手に開戦すれば必敗との結論を出していた。猪瀬直樹のノンフィクションを原案に、石井裕也監督が映画化した。 総力戦研究所では、宇治田(池松壮亮)を首相とする模擬内閣が経済、軍事、思想などの観点で国力を比較。激しい議論の末、日本は負けると結論づけた。 しかし政府や軍の中枢は開戦へと突き進み、反米英感情をあおられた民衆も主戦論へと傾く中で、提言は退けられる。データや合理性よりも勢いや精神性が優先され、戦争へと導いた時代の“空気”を描き出す。問い直されるのは現代社会だ。 池松のほか仲野太賀、岩田剛典、中村蒼ら若手俳優陣が出演。大ヒット作の続編「あの星が降る丘で……」 8月7日公開の「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」(新城毅彦監督)は、2023年に公開され興行収入45億円と大ヒットした「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」の続編だ。共に原作は汐見夏衛の小説。「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」©2026「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」製作委員会 「あの花」では、高校3年生の百合(福原遥)が1945年にタイムスリップし、特攻隊員の彰(水上恒司)と恋に落ちて戦争の悲惨さを知った。「あの星」はその7年後。高校教師となった百合の前に彰の面影をたたえた涼(細田佳央太)が現れる。一方、「あの花」で出会った同年代の千代は、彰と同じ特攻隊員の恋人を失った後も生き延び、ホスピスに入所していた。 百合は彰を思い続け、涼にひかれながら思いに応えることができない。千代(倍賞千恵子)は百合に、恋人の思い出を秘めながら歩んだ人生を語り聞かせる。未来へ進もうとする百合のラブストーリーを、情感たっぷりに描き出す。 戦争を身をもって体験した百合が、特攻隊員の最後の手紙を生徒たちに朗読させる特別授業の場面は、戦争を今に伝える名場面だ。被爆者の思いを集める「八月の声を運ぶ男」 21日公開の「八月の声を運ぶ男」(柴田岳志監督)は、2025年8月、NHKで放送されたドラマの映画版。全国の被爆者の声を集めたジャーナリスト、伊藤明彦のノンフィクションが原案だ。「八月の声を運ぶ男」 1972年、被爆者を訪ね彼らの声を録音するジャーナリストの辻原(本木雅弘)は、長崎で被爆した九野(阿部サダヲ)と出会う。当時は被爆者が差別され、体験を語る者も少なかった。その中で九野は、姉の献身的な介護を受けながら15年も入院生活を送り、社会復帰したと語る。心を打たれた辻原は九野の元に通うものの、その証言にいくつもの疑問が生じてくる。 私財を投じて旅を続ける辻原を通して、被爆者の無念、肉親を失った家族の悲しみを切々と伝えている。 22日公開の「八月の杜」(岩本崇穂監督)も、戦争の記憶を今につなぐ物語。2019年、地方から上京した文(烏丸せつこ)は、言問橋周辺でメリヤス工場跡地を探している。1945年3月10日の東京大空襲で家族を失い戦災孤児として育った文は、わずかな手がかりから両親の面影を求めていたのだ。「八月の杜」©2026Hideko Takeshimaベトナム戦争と重ね加害者の目線から 塚本晋也監督が、ベトナム戦争の帰還兵の実話を映画化した大作「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」は、9月11日公開。「野火」(2014年)、「斬、」(18年)、「ほかげ」(23年)と戦争を描いてきた塚本監督が「戦争加害者の目線で描く」と挑んだ集大成的作品だ。ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に選出された。「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」©Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners 10代で海兵隊員としてベトナム戦争で戦い、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみながら世界各地で戦争体験を語ったアレン・ネルソンがモデル。 ネルソンは沖縄で訓練を受けて戦場に送られ、極限状況の中で兵士や民間人を数多く殺害する。帰国後は恐怖と不安から精神のバランスを崩し、社会生活になじめず苦しみ続ける。PTSDを研究する精神科医ダニエルズと出会い、ようやく回復への手がかりを得た。 ダニエルズはネルソンに繰り返し「なぜ殺したのか?」と尋ね、苦悩しながら答えを探すネルソンは、自分と深く向き合うことになる。人間性を奪う戦争の凶暴さを伝えつつ、「あなたならどうするか」と問いかけるのだ。アカデミー賞俳優のジェフリー・ラッシュがダニエルズ役で出演している。戦災孤児の姿「わたしの知らない子どもたち」 10月16日公開の「わたしの知らない子どもたち」では、西川美和監督が戦災孤児を描いた。「わたしの知らない子どもたち」©2026 K2 Pictures・AOI Pro. 終戦直後、家族をなくした12歳の琴子(小八重葵美)は、戦災孤児として路上に放り出される。琴子は髪を切って男のふりをし、浮浪児の一団に加わった。 一方、琴子の担任教師だった曽根(二階堂ふみ)は、戦死した恋人との子どもを抱え、生活のために売春婦に身を落とす。やがて一通の手紙を受け取り、闇市で琴子を捜し始める。 戦後の混乱期の東京を大がかりに映像化。ヤクザの手下となり進駐軍物資を強奪したり浮浪児を集めた施設からの脱走を図ったりと、戦災孤児の過酷な生活を生き生きと再現した。自らを頼りに混乱の中を生きる2人の女性を、ドラマチックに描き出す。カナダ・トロント国際映画祭に出品される。 昨年に続きNHKは、戦争を題材としたドラマを制作。8月8日、丸谷才一の小説が原作の「笹まくら」を放送する。 戦後20年、大学職員として平穏な生活を送る浜田は戦時中、徴兵を忌避し逃走した過去を持つ。ある時そのことが暴かれ、学内で微妙な立場に置かれることになる。 森山未來、川栄李奈、青木柚、堀田真由らが出演。演出は映画「まく子」「バカ塗りの娘」の鶴岡慧子監督。【勝田友巳】